雪色のカルテ

1998

『雪色のカルテ』は1998年にWIN用として、Peachから発売されました。

製作はTOPCATなので、TOPCATによる患者治療育成SLGとなるのでしょう。

<感想>

主人公は医者であり、ヒロインたちの肉体的な、或いは精神的な部分に対し治療することになります。

上手くいけばハッピーエンドとなるのですが、失敗すると死につながりますので、かなり凹みます。
病弱なヒロインが登場する作品はそれまでにも幾つかあり、特に『同級生2』(1995)の桜子以降、一時期は絶大な人気も集めた属性ですから、好きな人も結構いたのではないでしょうか。
私は世間程には病弱ヒロインにはまらなかったものの、従来の病弱ヒロインが、こちらは見ているだけかサポートするだけだったのに対し、本作は自分が直接助ける立場にいるわけですからね。
少しずつ交流も増えていったのに、結局助けられなかったとなると、これは凹むのですよ。
泣きゲーというと、あざといぐらいの描写がないともの足りないと言われるし、泣けないと言われかねないので、本作を泣きゲーとは言いません。
でも、いわゆる泣きゲーの泣きではなく、こういうしんみりした重みの方が泣けてくる人もいると思うし、かなりずしりと堪える人もいるんじゃないかなと。

ライターは鷹取兵馬さんで、当時は『メッセンジャーフロムダークナイト』の人という印象でしたが、本作より後の2000年には『果てしなく青い、この空の下で・・・。』を出しており、世間では今はそのイメージが強いでしょうか。
何かプレイしていれば作風は分ると思うのですけどね。

本作はヒロインらの心身を治療することを目的とするものの、他方で道を誤ることもできます。
薬を投与して、エロイ悪戯をしてしまうわけですね。
もちろん、悪戯すると患者の容態は悪くなります。
まぁ医者としては最悪なのでしょうが、そこはアダルトゲームですからw
助けてハッピーになるもよし、助けられず鬱になるもよし、治療そっちのけでエロ・鬼畜に進むもよし。
自分の選んだ選択で未来がいかようにも変わるというのは、ゲームとしては良いことだと思います。

というわけで、本作はシナリオも良いし、展開の幅があることも良いです。
加えて、患者を治療するという物語上の内容と、育成SLGというゲームシステムが上手くマッチしつつ、育成SLGでこういう方向性はなかったなという新鮮さもあります。
長所となりうるポイントも多いだけに、人によっては名作となりうるのでしょう。

その割には、どうもマイナーな作品でもあるのですが、賛否分かれうるだけの欠点もあるわけでして。
治療がメインであるので起伏に乏しく飽きやすい上に、異常に難しかったんですよね。
コンセプトには同意できる部分は多いものの、いざやってみると、なかなか繰り返して遊ぶ気になれない作品でもありまして。
その点で、どうしても合わない人は出てくるのかなと。

<グラフィック>

原画は緒方剛志さんで、この人の絵は絶賛したくなる時もあれば、平均をかなり下回って見える時もあります。
塗りに左右されやすい、そしてアニメ塗りに向かないのですかね。

いずれにしろ作品により感想が極端に変わりうるのですが、本作に関しては雰囲気を上手く醸し出していて良かったと思います。

<評価>

長所だけなら文句なしに名作級なのですが、プレイ中のストレスもそれなりということで相殺し、総合では良作としておきます。
もう少し遊びやすければ良かったのですけれどね。

絵もシナリオもゲーム性も癖があるので、決して万人向けではないのでしょうが、これははまる人はかなりはまる可能性があると思います。
そのため、ライターの後の作品のファンであるとか、ストーリーとシステムの一体感を重視するような人には、オススメしたい作品ですね。

ランク:B(良作)


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Last Updated on 2024-12-29 by katan

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