『ルート246殺人案内』は1991年にPC98用として、花王から発売されました。
制作はフェアリーテールで、花王のフロッピー10枚パックに、オマケとして付属していた作品でした。
<概要>
当時、花王はフロッピーディスクも販売しておりまして、「花王リアルソフトパック」には、10枚パックにもう一枚、オマケのディスクが付属していました。
最初は体験版とかそんな感じだったのですが、次第に新作のゲームがまるごと一本付属するようになります。
その「花王リアルソフトパック」のNO9として、今回扱う『ルート246殺人案内』があり、これはフェアリーテールが制作した作品だったのです。
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
内容としては、タイトルから推察できるように、推理ものでした。
<感想>
さて、フロッピーディスクのオマケと言われると、何だか大したことなさそうに思うかもしれませんが、これが意外にもしっかりした作品でして。
ストーリーは推理ものであり、簡単にあらすじを書きますと、主人公の芝浦涼は女子短大の考古学の講師であり、ある日、元教え子で現OL、また主人公の恋人でもある靖子に起こされます。
そして、靖子に見せられた新聞により、靖子の親友で涼の元教え子である白井果穂が、自宅で首をつって死亡したと知ります。
二日前にも果穂に会っている靖子は自殺に納得がいかず、探偵のように私たちで調べようと涼を半ば脅し、事件の真相を追うことになります。
プレイして真っ先に思ったことは、まずもって靖子が良いですね。
いつも元気で、涼をぐいぐいと引っ張る感じで、とても魅力的です。
フェアリーテールが作っただけあって絵も可愛いですし。
もっとも、残念ながらHシーンはありません。
涼も靖子も大人ですし、ベッドシーンを匂わせる会話もあるのですが、花王製品のオマケですからね。
仕方ないと言えば仕方ないのだけれど、ちょっと惜しかったですね。
いずれにしろ、主人公以上の存在感を持った相棒としてのヒロインとなると、これは80年代末から生じ始めた流れでもありますので、
そういう意味では当時の先端の動きに沿っているとなるのでしょう。
さて、わざわざそういう風に書くことには意味がありまして。
ここからはゲームシステムとも関連するのですが、本作は地道に足を使うタイプの作品になります。
例えば80年代末以降のゲーム機のADVなんかを見れば顕著なんだけれど、80年代中盤のADVと異なり、不要なコマンドをなくすようにし、プレイしているとコマンドが減っていくという傾向がありました。
本作はその逆であり、調査を続けることで新たな関係者や関係個所が増え、それに伴いコマンドが増えていくのです。
これは80年代中盤までの傾向と言えます。
どっちが良いとは一概に言えないのだけれど、時代の流れとして無駄を省く縮小傾向の作品が増え、逆に本作のような拡大方向の作品は減っていった時期だっただけに、80年代中盤的なADVが好きな人ほど本作が楽しく感じただろうし、80年代中盤的なゲームシステム上の構造と、80年代末以降の当時の現代的ヒロイン像の組み合わせを望んだ人ならば、より一層楽しく感じられたかと思います。
本作は、他にも特徴がありまして。
具体的には涼はいつでも警察を訪れることができ、そこでなされる多くの質問に全て正解することで、クリアすることができるのです。
つまり本作は、ストーリーを追っていれば主人公が勝手に解決という、ストーリー主導の作品ではなく、プレイヤーが自ら推理し解決する必要があったのです。
こういう自分で考えなければならない推理ADVって、今でも多くはないですからね。
自分で推理したいよというユーザーには良い作品でした。
グラフィックは、上記の様にキャラは非常に可愛かったです。
それだけでなく、目パチ口パクもありましたからね。
オマケだからといって、全く手抜きはありませんでした。
ただまぁ、本作はPC98用なんだけれど、200ラインだったようで、少し画像が荒かったのかなと。
もっとも時期的にPC88からPC98への移行期でもあり、両方に対応した作品とかいろいろあった時期でもありましたからね。
例えば、本作と同じ91年の作品をみてみた場合、カクテルソフトの『NIKE』は400ラインだったけれど、名作として名高い『コズミックサイコ』は200ラインだったりしますからね。
その辺の事情も考慮すれば、特に気にならないって人の方が大半だったかと思います。
<評価>
小粒な作品ということもあり、総合でも良作としてありますが、作品としても十分に遊び応えがありましたし、コスパという観点からは非常に満足度の高い作品でした。
それ以外にも、フロッピーのパックのオマケという位置付けであったり、PC88時代の伝統的なコマンド選択式の方向性に、新時代のヒロイン観を盛り込みつつ、そこに自分で推理する要素が混ざるなど、実に見所の多い意義のある作品でしたね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-08-21 by katan
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