『Maggot baits』は2015年にWIN用として、CLOCKUPから発売されました。
フルプライスで、こういう作品は久しぶりでしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・関東邪法街――
かつて「架上市」と呼ばれていた関東地方の一中核都市は、数年前一夜にして混沌の魔力が渦巻く〈深淵〉と接続、超常現象が跋扈する魔界都市と化した。
正体不明の不死身の『魔女』たちの出現に対し、政府は当該都市圏を外部から隔離封鎖、遺棄地域として国土上から抹消。
一度はゴーストタウン化した旧架上市だったが、犯罪者や不法滞在の外国人、娑婆では生きていけなくなった多重債務者などが逃げこんで住みつき、更にそれらを食い物とするヤクザやイリーガルな商売人、売春婦なども流入。
数年をかけて15万人ほどが非公式に存在する治外法権都市となった「邪法街」で、ある男と一人の『魔女』が出会った時、物語は幕を開ける。
あらゆる法の及ばない邪悪で危険な都市で、一人の男と『魔女』たちの過酷な運命が動き始める。
<感想>
本作は画面下部にテキスト欄のある通常のADVモードと、画面全体をテキストが覆うVNモードが併用されています。
これは場面に応じて使い分けているのであり、VN部分では地の文が多めになっているので、シナリオ重視の読ませる作品になっています。
他方で、序盤からグロやリョナが混ざったHシーンが頻繁に登場し、人によっては抜きゲーとの印象を抱くのでしょう。
なお、バトルシーンはあるものの、いわゆる厨二ゲーとも異なります。
以上のような内容を有する作品、即ちフルプライスで、萌えでも恋愛でもなく、かと言って厨ニでもないシナリオゲーで、それでいてエロも充実しつつ、なおかつシナリオと一体化している作品、そういう物がはたして現在、どれだけあるのか。
本作の価値は、まずはその部分にあるのでしょう。
そういう作品が好きでも、選べるほどに作品が発売されませんので、本当に久しぶりのように思います。
今年、本作のような路線で本作を上回る作品がどれだけあるのかと考えると、相対的に浮かんでくるのでしょうね。
もっとも、個別に見ていった場合には、幾つか問題もありまして。
まず特徴の一つであるグロなのですが、確かに映像的には結構過激です。
ただ、エロと分離したグロも多い作品ですので、つまりグロではあるけれどエログロではないのです。
個人的にはエロさの伴うグロなら、どれだけ過激でも興奮できるのですが、エロさの伴わない単なるグロは、全然興奮できませんし、作り物っぽさの方が前面に出てくるように感じてしまいます。
エロに関してはスカこそないものの、グロやリョナだけでなく、陵辱も触手も獣もといった感じで、様々なものが含まれています。
したがって、多くの属性に対応していると言えるのですが、それだけに逆に一つ一つの掘り下げが薄くなっています。
抜きゲーという観点からも、最近はアニメーションとか進化していますし、特定のジャンルを極めたわけでもなく、アニメ等の演出が秀でているわけでもない本作は、どうにもイマイチ足りないと言えるのでしょう。
余談ですが、本作はフタナリも登場するところ、その他の男性にしても、Hシーンで男性器が妙に目立つような気が。
これ、一体誰をターゲットにして作ったのだろうと、プレイしていて気になってしまいました。
というのも、Hシーンの構図とかが、女性向けゲームのそれに近いのですよ。
だからなのか、女性よりも男性の方に目がいってしまい、その性もあってあまりエロく感じられませんでした。
女性ユーザーはエログロ好きだしなぁ・・・
原画は、はましまさんだし・・・
少年ジャンプが表向きは少年向けでありつつも、実質的には腐女子をターゲットにした作品が増えているようなもので、どうも本作をプレイしていると、表向きは男性ユーザー向けとしつつも、実質的にはかなり女性ユーザーを視野に入れて作っているんじゃないかと、本作を気に入りそうなのは女性ユーザーじゃないのかと、私は思うのですけどね。
まぁとりあえず、男性ユーザーにしても、女性向けゲームと相性の良い人の方が本作はいけるように思います。
上記のように本作は様々な属性が少しずつ入っており、個々の要素は特化作品より薄くなるとしても、それ自体は決して悪いことではないと考えます。
私は常々、様々な要素が含まれるべきであると主張していますし、様々な要素の化学反応により生じる意外性や、カオスな雰囲気というものを好みますからね。
ただ、ここが難しいところでもあるのですが、メインのストーリーがしっかりしているからこそ、カオスと言いつつも纏まりを感じられたり、軸がぶれないからこそ、本筋からずれてもそこに意外性を感じられるのです。
でも逆に、メインのストーリーがしっかりしていない場合には、寄せ集めの中途半端な作品にしか見えないのでしょう。
そして本作はプロットが固まっていないから、軸となるストーリーがハッキリとせず、残念ながら過激っぽい要素をかき集めただけの、中途半端な作品にも見えてくるのでしょうね。
グラフィックに関しては、はましまさんの一枚絵に関しては、相変わらずとても良いです。
もっとも、上記のように少し違和感があったのも確かですし、他にも本作にはバトルの描写があるのですが、その演出が数年前のままだったりするため、グラフィック全体での満足度は決して高くありませんでした。
<評価>
エロゲに必要な要素がほぼ揃えられており、バランスの良い作品ではあるのでしょう。
しかしながら、多くの要素が含まれていることは良いものの、それぞれの要素には目立つものはなく、各要素の相乗効果といったものもないことから、思ったよりも印象の薄い平凡な作品となってしまいました。
したがって、総合でも凡作としておきます。
もっとも今年、同じ路線の作品で、これより明らかに上の作品があるのかと、そういう相対的な視点を重視するのであれば、佳作扱いでも良いのかもしれませんね。
正直なところ、上記に様に本作は女性向けっぽく感じた一方で、ニトロの作品を薄めたような印象も抱いたんですよね。
まぁニトロ自身もキラルとして女性向けゲームを作っていますので、本作はキラル路線の作品となるのでしょうか。
私はキラル作品とあまり相性が良いとは言えないのだけれど、キラル路線が好きな人なら本作を楽しめるように思います。
もっとも、キラル路線が好きなら楽しめるとしても、それでも本作が過去のキラル作品より上とは思えない辺りが、本作を微妙に感じた理由なのかもしれませんね。
ランク:D(凡作)
Last Updated on 2024-09-27 by katan