『恋愛0キロメートル』は2011年にWIN用として、ASa projectから発売されました。
ヒロインの多彩な顔芸や、メタ的なテキストなど、話題性の高いギャグゲーでした。
<概要>
ジャンルはノベル系のADVになります。
商品紹介によるあらすじ・・・
ある所に、無鉄砲な母親と5姉妹の女一家が暮らしていた。
その隣の家には、無鉄砲な父親と4兄弟の男一家が暮らしていた。
5姉妹の一家は男の子が欲しいと常々切望しており、逆に4兄弟の一家は女の子が欲しいと切望していた。
ある時、両一家の家長はとんでもない妙案を思い付く。
「そうだ、お隣さんと子供を一人交換しよう!」
酷い親である。しかし3ヵ月という期限付きで、その案は実行に移されてしまう。
かくして、4兄弟の代表として交換されることになった次男 (主人公) は女だらけの一家に、家族として迎えられることに……
<感想>
基本的にはドタバタ系のギャグゲーですね。
ギャグゲーは他の人がどれだけ褒めていようと、自分と笑いのツボが違う場合には全く楽しめないおそれもあります。
特に本作の場合、序盤で楽しめなかった人が終盤に楽しくなっていくことは、ほぼ有りえない作品だと思います。
それだけに序盤をどう感じるかが大事になってきすので、まず体験版をプレイしてみることをおすすめします。
本作の特徴の一つは、もう原型がないかのように崩れた、ヒロインの顔芸にあります。
これって恋愛ゲーのヒロインとしてはどうなん?って気もしますが、その分ギャグゲーとしては笑わせてもらいました。
それと、本作のテキストにはメタ要素が結構含まれています。
メタ要素そのものが苦手な人は、合わない可能性は高いでしょうね。
私は最近のメタ要素の含まれた作品を酷評することも多いですが、別にメタ要素だからと言って嫌っているわけではありません。
そもそも80年代の本来のADV自体が多分にメタ的な構造を有しているので、メタ要素が全くダメという古参のADVファンはいないはずです。
じゃあ何で私が最近の作品を酷評する場合が多いかというと、メタ要素が楽しませるための手段ではなく、それ自体が主目的になりつつ、物語内にテーマを織り込む作業を怠り短絡的にこちらに話しかけてきたり、ライターの俺凄いこと考え付いたぜアピールが鬱陶しいからです。
中にはプレイヤーを小馬鹿にしたような物もありますからね。
しかもその内容が、それは本来お前らが工夫すべきところだろうと思うだけに、余計に腹が立ってくるのです。
別にメタ要素があるからといって偉いわけでも凄いわけでもないのに、何か妙に自信過剰に見えてしまうところが鼻についてしまって。
それでもっと工夫できただろうと、駄目出しすることが多いんですよね。
それに対し本作には、そういう嫌味な部分がないのですよ。
あくまでもプレイヤーを笑わせ楽しませるための手段としてメタ要素も用いているので、単純にやっていて楽しいのです。
バックログ禁止~って言われて、その時だけバックログボタンが消えたりと、ちょっとした遊び心もありますしね。
こういうメタ要素の使い方なら楽しめます。
どうせならもっとメタとゲーム性の融合を追求してみても良かったと思うし、それが出来ていれば、その部分だけで名作認定できるほどに、大きな長所となりえたでしょう。
テキストが自分に合ったというのも当然ありますが、顔芸やプレイに影響を及ぼすメタ要素の小ネタやテキスト表示の強弱など、決してテキストの内容だけに頼るのではなく、それ以外の部分も活用して作品全体として楽しませようとする姿勢が感じられ、その点も好印象でしたね。
したがって、ゲーム序盤の共通ルートに限定するならば、文句なしの名作級の作品と言えるでしょう。
問題は個別ルートや後半に進むに従い失速していくことであり、次第に飽きてくることなのでしょうね。
つまり本作は、ピークが前半に来ている作品なのですよ。
これは単純にシリアス部分の出来が悪い、特に主人公の言動に共感できないというのもあるでしょう。
しかしもう一つ理由もありまして。
本作は展開とかキャラの属性とか、それら設定がエロゲのテンプレ構造というか、「エロゲあるある」みたいな要素を多く含んでおり、それを更に誇張しギャグに昇華させたような内容なのです。
例えばケーキが好きな人はケーキを出されたら喜ぶだろうけれど、甘さを増した異常に甘いケーキを出されたら、ここまで甘いのは駄目って感じる人も出てくるでしょう。
仮にその甘さが最初は大丈夫でも、大量に出されたら次第に量的に一杯になる人も出てくるでしょう。
もちろん甘ければ甘い程良い、量が多ければ多い方が良いというのであれば、パラダイスに感じられるのでしょうけどね。
本作は普段のエロゲが楽しめる人でも、その誇張されたキャラを見て、それで気になりだす場合もあるでしょう。
また最初は気にならなくても、ギャグが長く続くうちにお腹一杯に感じることもあるでしょう。
それぞれの限界ラインは人により異なるので一概には言えませんが、自分の中のラインを超えた時点で、それまで非常に楽しかったものが、急激に醒めていくということもありえる作品なのだと思います。
<評価>
以上のような構造の作品ですので、最初から合わない人だけでなく、途中から飽きる人なども出てくるだろうなと思いますが、個人的にも途中までは非常に楽しかったです。
特にテキストだけでなく他の部分も活用してこちらを楽しませようという姿勢は、好印象でしたからね。
ストーリーの弱さや終盤の失速もあるのでラストの方は楽しめなかったですが、何だかんだで全体としては楽しかったですし、良作と言えるのでしょう。
ゲームの中にはフルコンプしなければならない物もありますが、本作に関しては逆かもしれませんね。
無理に一気に終わらせようとしても時間と共に楽しさが失われるだけなので、「やべぇ~楽しい」と感じているうちに早めにその日のプレイはやめて、何か重い作品とかの合間に少しずつ進めると、より楽しさが長続きするのかなと思った作品でした。
Last Updated on 2024-12-21 by katan
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