『Dear My Abyss』は2017年にWIN用として、ベリアルから発売されました。
『モミジは紅く其の身を染めて』から7年の歳月を経て発売された、長編ノベルになります。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
商品紹介・・・
使用画像1000枚以上。プレイ時間約25時間。
破滅の書を手にした少女たちを待ち受けるのは混沌なる世界の幕開けか、虚偽たる安寧への導きか。
裏切りの結末か…。
あらすじ・・・
ある日、平凡な女子高生・朝戸昴のもとに、差出人不明の荷物が届く。
荷物の中には、表題のない本が一冊収められており、同封された手紙には「その本は、切り刻むことも燃やすことも出来ない」と記されていた。
昴は二人の友達を誘い、本を燃やそうと試みるが…。
<7年ぶり>
まずは7年ぶりの新作ということで、ファンには嬉しい待望の作品といえるでしょうね。
まぁ、7年ぶりという表現には、人によって思うところは変わってくるのでしょうが。
自分が10代くらいだったら、何か凄そうとか思っただろうし。
でも、ストーリー重視の作品ってのは、製作期間と比例しないですからね。
しかも本作は商業ではなく同人、つまり本業ではないわけで、今の自分からすれば、7年の製作期間というのは、時間のあるときにのんびり作ったのかなくらいにしか思えないですし。
<ゲームデザイン>
さて、本作は、一番分かりやすい表現でいうならば、サウンドノベルになるのでしょう。
つまり、画面全体をテキストで覆い、キャラはシルエットで表示され、たまに出てくる選択肢を選ぶことで進む作品になります。
ちなみに、音声もありません。
ぶっちゃけて言えば、20年以上前のゲームのような、古臭いデザインなのです。
ただこれ、分かりやすくという観点からサンドノベルと言ったけれど、サウンドノベルと表現して良いのかなとも思うわけでして。
そもそもサウンドノベルって、ドラクエをRPGの元祖と思い込むのと同じような感じで、当時の小中学生とか、SFCで初めてノベルゲームに触れた人が、勝手にノベルゲームの元祖だとか思い込んでいるだけにすぎません。
ノベルゲーム自体はそれ以前からPCで存在したわけですね。
ただ、ノベルゲームは存在するけれど、その中でも特にサウンドにこだわった点で従前の作品とは異なるとし、それで「サウンド(にこだわった)ノベル(ゲーム)」として、チュンソフトが発売したんですよね。
キャラがシルエットなのは単にSFCの性能がしょぼかっただけで、別にそこにこだわりはなく、だから『街』以降はキャラが表示されているわけです。
つまり、サウンドにこだわりがあるかがサウンドノベルの条件であり、キャラがシルエットであるかは、本当は関係ないはずなんですよね。
分かりやすさという観点から、便宜上、本作もサウンドノベルと書きましたが、上記の観点からは、特にサウンドへのこだわりを感じない本作は、キャラがシルエットのノベルゲームであるとしか、本来は書けないようにも思います。
ところで、SFCのサウンドノベルは、絵こそしょぼかったですが、その代わりに効果音を上手く使ったり、ストーリーも序盤から引き込むような内容だったり、序盤から選択による分岐で悩ませるなどして、何だかんだでプレイヤーを引き込む掴みは上手かったと思います。
しかし本作には、そうした要素がありません。
上記の要素がなかったとしても、他のノベルゲーであればインパクトのある絵を示すことで、ユーザーの心を掴むケースもあります。
しかし、絵の弱い本作には、それもありません。
つまり、初期のサウンドノベルよりも掴みが弱いわけで、何で今更このシステムにしたのか、少し疑問に思ってしまいます。
<感想>
以上の様な構造であることから、評価できるポイントがあるとすれば、それはストーリー・テキストしか残されていません。
そしてそのテキストに関しては、以前から評価されているように、上手いと思わせる描写もあるわけでして。
だからノベルゲーはテキストしか興味がないという人であれば、本作は十分に楽しめる可能性はあるのでしょう。
ただ、テキストは良いとしても、じっくり読ませるストーリーかとなると、これまた少し疑問に思うわけでして。
本作はクトゥルーに寄りかかった作品であることから、筋の通ったストーリーというよりも、雰囲気型なんですよね。
個人的な好みかもしれませんが、クトゥルーは雰囲気重視作品になりやすいことから、ゲームにするならば絵や音の力もフルに活用した方が良いと思います。
例えば、単純なテキストだけなら本作より劣っていても、絵や音なども含めた一つの作品としてならば、本作を超えるクトゥルーものは幾らでもでてくるんじゃないかと、個人的には思ってしまいます。
<評価>
作品全体という観点から、総合では凡作としておきます。
ただ、同人で価格は安いですからね。
小説一冊分でしかないですし。
そう考えると、文庫本感覚でテキストだけを目当てに読んでみても、十分に元は取れるようにも思います。
ノベルゲームに何を求めるかにもよりますが、もしテキストさえ良ければ良いのだという考えであるならば、本作はプレイする価値はあるようにも思いますね。
ランク:D(凡作)
Last Updated on 2024-08-14 by katan
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