『鏖呪ノ嶼(おうじゅのしま)』は2024年にWIN用として、CLOCKUPから発売されました。
二人の主人公の視点から描かれたストーリー重視作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
二ツ栗の家に火を放つと脅された珠夜は、仕方なく自らの身を差し出す。
乳を好き勝手にいじられ、痛みと羞恥、そしてあろうことか我慢できぬほどの快感にも苛まれてしまう。
自らの淫らな肉体に困惑する珠夜は強●パイズリを受け、さらなる恥辱と溢れる快楽に翻弄されていく。
2019年――二つの元号が交わる年。瀬戸内海の離島「申仏島」。
その島は戦後まもなくより売春島として密かに隆盛を極めてきた。
片や昭和の昔から島の売春業を管理する、地元の有力者一族「二ツ栗家」。
片やある目的をもって島に渡ろうとする、裏街道から集められた一癖ある4人の男女。
双方の勢力には、それぞれ現代における完全犯罪である「呪殺」を生業とした呪術師たちがいた。
悪徳の島で、人間たちの思惑が交錯する。
だがその背後には、戦後およそ70年にわたり受け継がれてきた忌まわしい呪いが存在していた。
<感想>
本作は島を舞台にした伝奇作品になります。
そこにクロックアップらしく、グロやリョナといった要素を入れてきたものになります。
グロリョナのようなニッチなジャンルについては、そのHシーンだけに力が入り、ストーリーを楽しめない作品も多いのですが、しっかりと読ませる作品に仕上げてくるのは、クロックアップだからこそと言えるかもしれませんね。
本作には主人公が2人います。
本作は、このおっさん2人の物語であり、端的に言えば、それに尽きるのでしょう。
本作をプレイしていて、私は、PC98時代を思い出しました。
PC98時代までは、おっさん主人公の作品も少なからずありましたし、その主人公の物語が描かれた作品も多かったです。
それがWIN時代に入ると、いわゆるシナリオゲーと呼ばれるような物語重視の恋愛ゲーが増えていきました。
気になったのは、それらの作品の多くは、主人公の物語ではなく、ヒロインの物語を主人公をとおしてみるという構造になっていたことです。
主人公の生き様や体験を楽しむのではなく、個々のヒロインに用意されたシナリオを楽しむというものであり、物語がヒロインに従属した構造になっているのです。
PC98時代までのストーリー重視作品は、ヒロインごとの個別ENDなんてないですし、あくまでも主人公の物語が描かれたうえで、その物語にヒロインが従属していたわけで、根本的に構造が異なるのです。
そのため、WIN以降の作品は、ヒロインごとの個別シナリオとしては良い作品が多数あるものの、主人公の言動をとおしたストーリーという観点から良いと思える作品は、数えるほどしかなかったように思います。
WIN時代に入ってからの90年代後半からゼロ年代にかけての、いわゆるシナリオゲーと呼ばれる作品の多くは、一見するとストーリーを重視しているかのようでいながら、実質的にはストーリーがヒロインに従属しているという奇妙な構造をしていることから、何ともいえないむず痒さを感じていたものです。
あまりピンとこない人向けに例えますと、漫才とコントって、本来は別物ですよね。
でも、他方でコント漫才という混ざったものもあり、M1なんかを見ても、今はむしろコント漫才の方が主流のようになってきています。
面白ければなんだっていいじゃん、細けぇことはいいんだよというのも、一つの真理なのでしょう。
しかし、純粋な漫才が好きな人からすると、その漫才のチャンピオンを決める大会で、実質的にコントではと思わせるようなコント漫才をやられると、そこに違和感を覚えても不思議ではないでしょう。
当時はまだ言葉がなかったですが、ストーリーがヒロインに従属した構造の作品を端的に表現できるのはキャラゲーなのでしょう。
ストーリー重視ゲーとキャラゲーは構造が全然異なるのであり、それらを混同して語るべきではないと思います。
しかし、ゼロ年代までは、両者を混同して語ろうとしていたことから、余計な誤解等を与えやすかったのだと思います。
余談が多くなりましたが、本作には、ヒロインに従属したストーリーはありません。
そこに描かれているのは、あくまでもおっさん2人の生き様です。
これは紛れもなくストーリー重視の作品といえるでしょう。
このような作品は非常に珍しくなってしまったし、今の時代に、商業ブランドからこうした作品が出てくるとは思いもしなかっただけに、本当に嬉しいですね。
本作のシナリオは昏式龍也さんですが、昏式さんの作品は、これまでにも気になってプレイしたものはあるものの、いまいち楽しめませんでした。
しかし、本作は良い意味で裏切られた形となり、何も引っかかることなく、楽しむことができました。
もし、昏式さんの過去作が合わなくて本作も躊躇っているという方がいましたら、過去作にとらわれずにプレイしてみてもらいたいです。
グラフィックは、キャラデザがはましま薫夫さんで、原画がのりざねさんですね。
こういう場合、時として、二人の良さが相殺され、魅力のない絵になってしまう場合があります。
その点が心配でしたが、全くの杞憂でしたね。
塗りの関係なのか、よくわかりませんが、私には妙にエロく感じられて、個人的には良かったです。
総じて満足度の高い作品ではありますが、不満があるとすれば演出でしょうか。
エフェクト等も乏しいですし、立ち絵とかも全然動きませんしね。
これ、5年以上前の作品ですと言われても、何も違和感は抱かなかったでしょう。
どうにも古臭い作品のように感じてしまい、そこがちょっと残念でした。
<評価>
またこのような作品が楽しめたという意味では、満足できました。
ただ、突き抜けた何かがあるわけでもないですし、現在の作品らしい目新しさのようなものが欠けており、その点が一番ひっかかってしまいました。
そのため、総合でも良作とします。
他のブランドでは、こういう作品はなかなか期待できないですからね、クロックアップには、今後もこういう作品を作ってもらいたいですね。
ランク:B-(良作)

Last Updated on 2024-12-14 by katan
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