『エントフューラー 妖精誘拐事件』は1989年にPC88用として、全流通から発売されました。
このブランドにしては、珍しいタイプの作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
クラスメイトである女子高生のひろみが突然行方不明になったことから、その捜索を行うというストーリーになります。
<感想>
世の中の流れに逆行するかのようなブランドというものがあり、その一つが全流通なのでしょう。
一般的なADVの流れは、難易度の高いコマンド選択式から、難易度の低いコマンド選択式や、コマンド選択式とノベルの中間形式を経て、ノベルへと変遷していきます。
しかし、全流通は逆なんですよね。
家庭用ゲーム機ではまだノベルゲーの存在していなかった86年には、既にノベルゲーを製作していましたから。
(だからそもそも、ノベルゲーはエロゲ発祥なのです。)
そして最初はほとんどゲーム性のない難易度の低いノベルゲーでしたが、次第に難易度が上がっていきます。
そして家庭用ゲーム機のADVなどが、難易度の低いコマンド選択式の時代になる頃、今度は難易度の高いコマンド選択式を作りだすわけでして。
そして本作が、その難易度の高いコマンド選択式に該当するのです。
世の主流に反するわけですから、当時の主流ユーザーの好みに合っていないということでもあり、それで叩かれることもあったのでしょうが、個人的には結構好きなブランドだったんですよね。
なにせ、他所にはない作品を作ってくれるのですから。
そういう意味では本作は、ひろみを探すために校内をはじめ、あちこち移動し、出会った女の子とは強引に関係を持ってしまうことから、他所でもあるような内容的にありふれた作品のように見え、だからこそ全流通的には異端なようにも見える作品だったのです。
ところで、先程から本作の難易度が高いと述べていますが、難易度の高いコマンド選択式には大きく2種類が存在します。
一つは同じコマンドを何度も何度も繰り返し選択する必要のあるタイプになります。
このタイプの場合、最悪、コマンドを総当たりすれば、クリアはできます。
そのため、時にコマンド総当たりと揶揄されてしまうわけですね。
本作は、もう一つのタイプになります。
具体的には、コマンドの選択回数に限りがあり、正解を選ばないとゲームオーバーになるタイプです。
しかも本作の場合、普通のコマンド選択式っぽく進みつつ、それで途中でゲームオーバーになるから、余計に難しいのです。
こういうタイプは当然ながら総当たりなんかできませんし、こういうタイプを知っている人なら、コマンド総当たり式なんて言葉は使わないはずなんですよね。
あの言葉を使う人って、そもそもコマンド選択式を知らないか、知っていても90年代以降の一部の作品しか知らないんでしょうね。
いずれにしろ、全流通的には新しい試みだったのかもしれませんが、全体で見れば数年前の流行作に似ただけのようでもあり、個人的には少し物足りない作品でした。
<評価>
発売時の数年前の主流を全流通風に仕上げた作品であり、いつもの全流通と異なる作品でした。
まぁ単独でプレイすると個性を感じられないので、むしろ普通にプレイするよりも、同ブランドの他作品をプレイした上で、あぁこういうのも作っていたんだと思ってプレイした方が、おそらく楽しめるかもしれませんね。
Last Updated on 2025-05-18 by katan
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