『無限煉姦 恥辱にまみれし不死姫の輪舞』は、2011年にWIN用として、Liquidから発売されました。
和泉万夜さん完全復活と言える会心作でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
選択肢は少なめで、攻略も簡単です。
間違えれば陵辱展開という長めのBADになっていきますし、正解であればそのまま進行しますので、何ら問題はなくフルコンプできるでしょう。
あらすじ・・・
かつて、現実世界から異世界へと落ちた主人公は、そこで奴隷のような生活を送っていた。
飼い主である下劣な主人によって、肉体的、精神的な凌辱暴行を繰り返される日々。
しかし、あるとき王と共鳴したことで主人公は不老不死の肉体を授かり、同時に一切の権利を剥奪されることとなった。
住人達からは散々な凌辱を受ける主人公だが、不老不死のため自殺することもできず、ついには、殺せないと分かっていながら王に刃を向け、追われる身となって異世界から脱出することとなる。
それから幾つもの出会いと別れを経て……
時には異世界からの追っ手に脅かされたりしながら、主人公は無限のように続く時間を過ごすことになる。
果たして、永遠の命を持つ者の未来とはどんなものなのか。
過酷な運命を強いられた少女の物語が始まる――
<感想>
ストーリーはファンタジー、タイムリープ、輪姦、あとはネタバレ回避で伏せますが、それらの要素が含まれたものって感じですね。
開始時の主人公は記憶喪失で名のない奴隷という設定なのですが、序盤で不老不死になります。
そのため、ゲーム内の期間は非常に長期になり、幾つもの時代が登場します。
悠久の時間の中で主人公がどのように生き抜くのか、その生き様・人生を堪能するゲームといえるのでしょう。
具体的には、最初に主人公がいる世界は、化物たちが暮らす異界であり、ここは不死なる王が統べる階級社会になっています。
異世界を舞台とした作品であることから、まずはハイファンタジー的な楽しみ方ができます。
また、主人公は奴隷として犯され虐げられる立場にあることから、陵辱色やエログロといった要素もここが一番強いです。
2番目に登場する世界は、魔女狩りが行われている中世ヨーロッパで、そこでの主人公は、ヴァンパイアの姫(眷属)として、庇護されることになります。
きらびやかなお城に住む大男と、ドレスで着飾った多くの美女たち。
主人公もそこで、前の時代とは対照的で正反対の、幸せな一時をすごします。
姫同士のHという女性同士の絡みもありますし、耽美な雰囲気を醸し出していることから、個人的にはこの時代が一番好きでしたね。
もっとも、その幸せな生活も長くは続きません。
3番目は近世アメリカ、すなわち、白人たちが先住民族を侵略していく時代になります。
前の2つの時代は閉鎖的な空気が漂っていたのですが、うってかわってここでは開放的な雰囲気になっています。
前の2つの時代までは弱く虐げられ、或いは守られる立場だった主人公も、大きく成長して自ら戦えるようになっていきます。
4番目の世界は明治時代の日本、そして5番目は現代になります。
ここまでくると主人公への追っ手も減りますし、これまでと変わって和やかな雰囲気となっていきますが、謎も明らかにされていくことで物語が終結に向かっていきます。
全く雰囲気の異なる世界観を幾つも堪能できましたし、それだけでも満足度が高かったですね。
主人公も時が経つごとに少しずつ強く成長していきますし、舞台となる時代の変化とセットになることで、より分かりやすい形で伝わってきたのは良かったです。
最後の結末は、主人公の精神的成長がなければありえなかったわけで、成長物語ともしても満足できたように思います。
最近は読んでいる最中にそこはおかしいだろとか、説明や行動に納得できないものが増えています。
いや、自分の価値観と合わないとかは別に関係ないんですけどね。
むしろ自分の視野を広げる異なった価値観の登場を望むくらいで、昔はそんな世界もあるのかとか、そんな考え方もあるのかとか、新たな世界を広げるためにアダルトゲームをプレイしたものですし。
まぁ、ゼロ年代以降の属性分離化によって、そういう楽しみ方は壊滅的になっていったのですが、いずれにしろ嗜好が異なること自体は大歓迎なのです。
しかし、物語の中枢部分であるべき説明がなされていなかったり、イディオット・プロットのような、物語を進めたいがための無理な展開や、子供時代はともかく大人であれば考えないであろう思想であるとか、そういうのはマイナスに判断しがちです。
最近の話題作はとかくそういうマイナスが非常に多いのですが、この作品ではそれがほとんどなかったわけでして。
細かく粗を探せば幾つかあるのかもしれませんが、気になった数が他と比べて圧倒的に少なかったです。
とにかくこちらがツッコミたくなりそうな部分で、きちんとフォローがなされていることが多かったので、安心して読めたんですよね。
まぁ最初の不死という誰しも気付く部分において、若干説明不足な感もありますが、これも十分に説明可能な範囲でしょう。
ちょっとネタバレっぽくなるので、未プレイの人は次の一段落は飛ばしてください。
主人公の最初の不死は何故起きたのか。
平行世界・ある種のパラレルワールドを考えるか、或いは別の要因でなったと考えるのが素直なのでしょう。
ただ、あの世界は最初にはなかったから行けないとすれば、最初のリープだけは別の時点に跳んだことになります。
跳ぶ先がどこであれ自分のいる近くになる傾向があるとするならば、そこで最初の不死になりうると。
そして、一度不死が確定すれば、それ以後はあの世界が作られ、そこからループ構造になり流れが書き換えられ、書き換えられた内容ではいつもあの世界に跳んでしまうと。
細かい部分は考察好きの人にまかせますが、個人的には興味があまりないというか、ぶっちゃけどうでも良いのではないかと思うわけで。
何故なら、ここは作品のメインの部分ではないですからね。
例えば怪我で選手生命を断たれた人の再起の物語があった場合、その人がいかに苦しみいかに努力して再起を果たしたのか、その過程や心身の成長の変遷こそが大事なのでしょう。
この過程や変遷が駄目なら作品として駄目なのでしょうが、何でその怪我が起きたのかとか、その原因が納得できないとか言い出すことに、あまり意味はないと思うのですよ。
まぁ、自分の行動が原因なら原因探求は大事になりますが、トラックにはねられたとかって専ら外的要因の場合、トラックの運転手はよそ見なのか飲酒なのか、それとも違う理由なのかなんてのは、再起の物語には直接関係ないでしょう。
そこをはっきり書いていないからといって、それが再起物語の内容に何ら影響しないと思うのです。
大事なのは、意図せず生じた状況から、如何に脱却するかなのですから。
つまり自分ではどうしようもない原因からある状況に陥った人が、その状況から脱却を図る物語で、その原因につきとやかく言ったって意味がないと思うんですよね。
だから私は、本作でもあまり気にならないのです。
でも、運転手は何を考えていたのかとか、運転手はどうすれば事故を回避できたのかとか、そんなことを語りだす人だと、本作は合わない可能性もあるかもしれません。
それと『無限煉姦』には無駄に長い共通パートもありませんし、同じ展開を何度も見るはめになるような、この手の作品にありがちな問題もありません。
そういうこともあってか、最初から最後までだれることなく一気に楽しめました。
この最初から最後までというのは、個人的には非常に大きいです。
私はテキストが楽しめましたと書くゲームも幾つかありますが、そういうゲームでさえも最近のは実は途中で少しだれているんです。
読んでいて途中で飽きることがあっても、少しであればそれは自分がノベルに飽きてきた故の現象であると考え、自分の主観より上乗せして判断することがほとんどです。
それが本作では全くだれずに読みきったわけで、決して斬新とか奇抜というストーリーではないはずなのですが、自分でも少々驚きました。
この水準で楽しめた作品となると、一体何年遡らなければならないことやら。
詳しくは後述しますが、他の要素の関係でブサイク時代の作品には及ばないとしても、それはゲーム全体の話であって、純粋なテキスト・ストーリー面に関しては、和泉さんの作品の中では随一ではないでしょうか。
私はブサイクの『MDB』や『EXTRAVAGANZA』を非常に高く評価していますが、それらは絵やゲーム性や音の占める割合も非常に高かったわけで、全てがライターの和泉さんの功績だとは思っていません。
しかし今回は、素直に凄いなと思いましたね。
キャラも主人公をはじめ同姓のマリーや、異性のゾワボやギュスターヴなど、男女問わず魅力的だったのが良かったですね。
良い作品ってのは、男女ともに魅力的に描かれているものですから。
アダルトゲームの場合は魅力的な女性は多いものの、男性は極端に減りますからね。
ギュスターヴの紳士っぷりや男らしさ、ゾワボの一途さなんかは、見ていてとても好印象でした。
サブキャラ視点での物語があるのも、キャラの個性を引き出す観点からは良かったですね。
テキスト及びキャラは私は同一項目で判断しますが、久しぶりにフルマークを付けて良い作品だと思いました。
かようにストーリー・キャラ・テキストはかなり楽しめたのですが、若干注意点も書いておきます。
まず不死の説明などもそうなのですが、他にも吸血鬼で主が死んでも眷族は生き残るとか、FT・SF的に一般的な見解とはやや解釈を異にする部分があります。
一般的な見解とは言え結局は妄想の産物で、必ずしも科学的根拠はないわけですし、そもそもSFなんてのも仮定の上に成り立っている分野ですので、個人的には別の解釈だって十分にありだと思い、特に気にならないんですけどね。
一般論と少しでもずれれば認められないって人だと、ちょっと理解に苦しむかもしれません。
まぁ異なる解釈があるとは言え、それを更に自分でひっくり返すようなどんでん返しはありません。
ライターが書いたものを自ら後でひっくり返してしまうと、何でもありって感じで興醒めしてしまうものですが、そういうことはありませんので、物語としては十分説得力があると思います。
次に、この作品にはご都合主義なハッピーEDはありません。
各自が努力し、そしてなるべくしてなったEDですので、個人的にはラストも非常に満足しています。
しかし、人によってはBADにも思われるような終わり方であり、万人が幸せに思うような展開ではありません。
そのため、ハッピー至上主義であるとか、ご都合でも良いからそういうのが欲しいって人だと、若干不満は残ってしまうかもしれませんね。
<グラフィック>
グラフィックは基本CGは95枚とそれなりにありますが、立ち絵はあまり動いたりしません。
そういう意味での演出面はあまり強くないのですが、ここは学園物とかと同列には判断できないようにも思います。
本作には幾つもの時代があり、プレイして数時間後には別の時代に移ることになりますし、そのため時代ごとに背景やキャラの立ち絵も全部変わりますからね。
学園物とかだと背景も似たようなものが多いし、同じものがずっと使われるわけですから、立ち絵くらい動いてくれないと見ていて飽きてきます。
本作では背景やキャラの服装がガラっと変わるので、あまり動かなくても十分に満足できたんですね。
どこに労力を割くかの問題でもあり、どこに基準を置くかでも変わってくるのでしょうが、私は一応は長所と考えても良いように思いますね。
ただ、長所であるとしても、大幅なプラスとまでは言えないのでしょう。
というのも、これは規制の関係もあるのでしょうが、ブサイク時代のようなハードなCGはありません。
テキストベースでは人体改造とかカンニバとか、かなりグロくなる要素はあったんですけどね。
マリーのドレス姿での立ち脱糞とかも絵で見てみたかったですし。
これらを全部絵で表現すれば伝説級にもなれたのでしょうが、それらがないためにMDBとかよりは大人しく見えてしまいました。
MDBらブサイク作品レベルを期待する人には物足りないでしょうし、また、エログロでも特にエロ方面が抑え目になっていますので、抜きだけを求めると少し物足りなく感じるのではないでしょうか。
まぁ、このエロが抑え目というのもややこしいんですけどね。
何気に和姦部分は良かったように思うのですが、ほとんどが輪姦なので、輪姦属性がないと楽しめる部分が減ってしまいます。
加えてキャラが大きめなので、構図が伝わりにくく、それで私にはエロさが控えめに見えてしまったのかもしれませんね。
もっとも、こういう意見は他所でも結構出るとは思いますが、和泉さんの作品ということで、以前のブサイク作品経験者が多いであろう点は考慮すべきでしょう。
輪姦シーンは多いですし、ヒロインが暴力的に扱われることも多いので、そういう方面にあまり耐性のない人だと、やっぱり主にグロ方面できついと感じるでしょうから。
ここはプレイヤーのこれまでの経験次第で、印象は大きく変わるように思います。
最近はアニメとかでもちょっとグロがあると騒がれますが、ブサイク作品経験者はそういうのではもはや何も感じない人が多く、私もあの程度でグロとか言うなと思ってしまう口ですので、そういう人が物足りないって言っているのだと、慣れていない人にはそれを前提に考えてもらった方が良いでしょうね。
逆にブサイク作品の評判は聞くけれど、ちょっときつすぎてついていけないよって人ならば、今回はいけるように思います。
ボイスについては、主人公の声が、いかにも今うけるような声とは異なります。
ちょっと最初は違和感もあったのですが、次第に慣れますし、その時々で上手く感情の変化などが使い分けられており、実はかなり上手かったんじゃないかなって思います。
他にはマリーとかも歳に応じた変化が見て取れて良かったですね。
男性陣に声がないのは残念でしたが、そのマイナス分は女性陣の声のプラスでしっかり補った感じです。
<評価>
総合では、文句なしに名作といえるでしょう。
以前の和泉さんのブサイク作品よりテキスト面は上昇し、絵によるエログロさやゲーム性が減少したって感じでしょうか。
私は、『MDB』や『EXTRAVAGANZA』に対しAAとの評価していますが、プラスよりマイナスの方があるということで、それらよりは若干劣るように思います。
ただ、それでも傑作相当の面白さは有していたように思うわけで、1ランクの微減ってところでしょうね。
まぁいろいろ書いてきましたが、久しぶりに心底楽しめました。
こういう作品が出てきてこのレベルのものが楽しめるなら、まだまだアダルトゲームを続けられると、そう再認識させてくれた作品でした。
ランク:AA-(名作)
Last Updated on 2024-12-16 by katan
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