『いつか、どこかで ~あの雨音の記憶~』は2002年にWIN用として、BeFから発売されました。
この頃の厘京太朗さんの絵は、本当に最高でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
2002年春。
プログレスリサーチ社の面接を受け、入社と同時に取材に派遣される袖山直斗。
直斗に命じられた仕事は、旅行雑誌用に使われるリサーチ。
その行き先は逃げるようにして出てきた故郷───大槌村。
気乗りのしないまま戻った故郷で直斗を待っていたのは中学時代のクラスメイト、矢永杏子だった。
杏子に連れられ、狭い山村を巡っているうちに直斗は自分の過去に向きあっていく。
<感想>
BeFの作品ということで、最大の魅力は何と言っても厘京太郎さんの絵なのでしょう。
厘京太郎さんの絵は後期の作品も好きなのだけれど、本当の最盛期となると本作辺りまでなのかなと思うわけでして。
つまり本作の次のBeF作品である『PIANO FORTE』とか、他社の『FOLKLORE JAM』とかも良かったことは確かなのです。
ただ、野球で例えると、他所の原画が140キロの速球だとしたら、本作を含めた最盛期の絵が150キロ以上のしかもキレのある速球であり、その後の作品は145キロくらいの速球になるという感じでしょうか。
好きな原画であっても旬の時期があり、それが本作までということですね。
というわけで、本作に関しては、原画は非常に満足したのですが、それ以外は良くも悪くもいつものBeFって作品でもありました。
まずストーリーは主人公・ヒロインらの年齢が高めであり、その点は他のエロゲと比べた場合にプラス要素にはなりうるものの、如何せんストーリーが短いために物足りなく感じてしまいます。
まぁこのブランドのファンならば、この設定は歓迎するところでしょうし、短いという欠点もいつものことだし、むしろいつもよりは長く頑張った方かということで、十分及第点なのでしょうけどね。
他方で、多数を占めるエロゲオタがプレイすると、高校が舞台でなくヒロインが女子高生でないという点、及びボリュームが少ないという点だけでも叩かれかねないのかなと。
本作が発売されたのは2002年になりますが、炉利化とボリュームへの要求が増していた時期だけに、本作が当時の一般的なエロゲオタに受けないのは確かなのでしょう。
BeF作品は広い意味ではノベルゲーではあるものの、作品に応じてアレンジすることがあり、そのゲームデザイン部分も個人的には関心が高かったです。
面倒なので詳細は割愛しますが、本作では従来から用いていたシステムやPDAといった端末を利用しつつ、そこに新要素として行動力のような概念が加わっています。
過去作から継承した要素は良かったと思いますが、新しく加わった行動力の部分はほとんど意味がなく、ゲームとしてはプラスにはならないのかなと。
個人的には期待していただけに、ここはちょっと残念でした。
<評価>
単純なノベルゲーではなく、ゲームらしさを残したノベルゲーということで、その観点からもこの時期では貴重ではあるのでしょう。
ただ、あまり肝心の内容が伴っていなかったこともあり、結局はちょっと風変わりなイラスト集という位置付けに終わったと。
そのため、他人にすすめたいと思うタイプの作品でもないのだけれど、個人的には短いながらにもシナリオは普通に楽しめたし、絵だけでも存分に楽しめたので、それなりに満足はできたように思います。
したがって、総合でも佳作とします。
ファンであるならば、この辺の作品くらいまでは付き合いたいですしね。
当時は、もっとシナリオの長い作品で出して欲しいとか、そうすればその内凄い作品も出てくるだろうとか、現状への不満と次への期待ばかりが先走っていましたが、今となっては、この時までは良かったよなと、妙に懐かしくなってくるものです。
Last Updated on 2025-04-26 by katan
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