『とも鳴りの舟 ~Empty room We onry satisfy~』は、2019年にWIN用として、succulentから発売されました。
同人ブランドの「ゆにっとちーず」等でシナリオを手掛けてきた、山野詠子さんによる女性向けの作品になります。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
──ダメダメな私と、すかすかのあなた。
独り暮らしで売れない風俗嬢をやっている美倉たがね。
仕事帰りに家のベランダに出ると、向かいのアパートのベランダで、男女が裸でセックスしているのを見てしまう。
男と目が合い、まずいと思って部屋に引っ込んでカーテンを閉めるが、しばらくすると玄関からチャイムの音。
嫌な予感がしつつ応対するとさっきの男がいた。
そのまま部屋に押し入られてレイプされてしまうたがね。
そのうえ男は、部屋にあがって冷蔵庫の中身を漁る、たがねのベッドですやすや寝るなどやりたい放題。
親に連絡されるのを恐れて警察に言い出せないたがねは、仕事の疲れもあってその場で気絶するように眠ってしまう。
その日から男とたがねの奇妙な関係が始まった……。
概要・・・
最悪の出会いをした男女・たがねと牧人が、どのようにして互いを許し合い、歩んでいくのかを描写します。
人ごみのなかで感じる孤独とか、傷つけあうことで大切になれる男女とか、あとはややマニアックなセックスとか、そういったものが好きな方におすすめです。
<感想>
山野詠子さんの作品には、一定の固定ファンがおり、そのテキストには定評があります。
私も注目はしているのですが、これまでの作品の場合、何かいろいろ気になってしまう部分もあり、結論としてはあまり高く評価できていなかったと思います。
本作は女性向けの作品になります。
なお、女性向けとは言っても、BL要素とかは皆無です。
単に本作の主人公が女性というだけで、その女性主人公と男性キャラとの恋愛やHが描かれているので、男性プレイヤーでも何ら支障なく楽しめる内容になっています。
たとえば、一定のファンのいる、あるライターの作品について、いざプレイしてみると何かもの足りないと感じる場合に、そのライターが女性向けに移って作品を作り出したところ、凄く良い作品を作るようになったと感じたケースがいくつかあります。
そのライターが女性向けの方が性に合っていた場合はもちろんのこと、それ以外にも、単にそのライターの脂ののった時にたまたま女性向けに移ったとか、或いはその両方であるとか、細かい理由はケースバイケースではあるのでしょう。
ただ、結論として、女性向けを作るようになり、過去の男性向け作品より良い作品が生まれるケースというのを何回か目にしているだけに、本作へも同じ期待をしたのでした。
本作は、シナリオのボリューム自体は、同人の価格相当量であり、それほど多くありません。
また、内容も、自己肯定感に低い女性とクズな男性とが、マニアックなプレイを重ねながら、少しずつ精神的に成長していくという、ある意味シンプルなものではあります。
しかし、その決して多いとはいえない分量の中に、このライターの良さが全て凝縮されていると私は感じました。
これまでライターが表現したかったもの、ずっと自身の中で抱えていたものが、女性向け作品という舞台にかわることで、表現が洗練され、作品としてようやく昇華されたように思います。
これまでの作品のように、どこか引っかかるところもなく、す~っとこちらにも入ってきましたし、とても良かったです。
<評価>
女性向けに舞台を移したことで、また素晴らしいライターが一人誕生しました。
ストーリー自体はシンプルであること、他に特徴があるわけでもないこと、ボリュームが多いわけでもないこと等から、私の基準では名作とはしにくい作品なので、総合では良作としておきます。
もっとも、これは次につながる良作であり、今後の作品にも期待ができますし、注目していきたいと思います。
山野さんの作品を未プレイの方で、テキストを重視していますという方であれば、まず楽しめる作品といえますので、ぜひともプレイしてみてもらいたいと思いますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-08-09 by katan
コメント
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山野作品ということで覚悟してプレイしましたが、後味良く爽やかな読後感でした。
現実に立ち向かう強さを得てのラストは感動しましたね。
まさに最高傑作でした。
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>yukimuraさん
開始直後は、これ一体どういう方向に向かうのだと思いましたが、
後味の良い、プレイして良かったと思える作品でしたね。