『大江戸探偵 神谷右京2』は1993年にPC98用として、アルテシアから発売されました。
TAKERU版の2作目であり、シリーズの方向性を更に際立たせた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
あらすじとしては、本作はまず、主人公である右京と、右京の昔からの友人で弁護士でもある宗方が一緒に飲んでいる所から始まり、右京が宗方から依頼者を紹介されます。
その後、右京が宗方から紹介された依頼者の下を訪れると、その依頼者は首を吊って死亡しており、更に右京は何者かに襲われてしまいます。
何とか一命をとりとめた右京は、事件の真相を追うことになります。
なお、本作には裸っぽいものは出てきますが、基本的には一般向けの作品になります。
<感想>
神谷右京シリーズに関しては、前回に全体の紹介をしていますので、詳しくはそちらを読んでください(「大江戸探偵 神谷右京」)。
本作は商業で発売された「真説神谷右京シリーズ」の前に発売された、TAKERU版神谷右京シリーズの2作目になります。
なお、TAKERU版は前作と本作の2作だけになります。
前回はあまり画像を載せなかったのですが、本作はキャラ紹介からゲームが始まりますので、一応載せておきます。
ちなみに、右京はハンコ寄りなんだけれど、個人的には美奈子ちゃんの方が好きでしたw
さて、ストーリーとしては殺人事件の真相を追うというものなのですが、その動機が怨恨の類ではなく、債務者の債務整理にかかわる話という点で、本作は他の推理ものと大きく雰囲気を異にするのでしょう。
以前の紹介の時にも書いたのですが、本作のシナリオ・原作は、当時現役の弁護士だった藤堂信昭氏が担当しています。
ノンフィクション要素の高まる後の真説シリーズとは違って、本作自体はまだフィクション要素が大半ではあるものの、それでもその実体験や知識を元に描かれているのでしょう。
そのためか、他の推理ゲームでは見かけないような、かなり専門的用語が出てきたりもしますし、それにより他作品とは異なる雰囲気のストーリーとなるのでしょう。
前作でも少しは専門的な雰囲気を漂わせてはいましたが、それはアクセントのようなものでもあり、まだ本格的に違うというまでのものではありませんでした。
しかし本作が登場することで、より専門的な方向性に至り、以後に続くシリーズの方向性が決定されたと言えるように思います。
したがって、通常は1作目を評価する傾向のある私としても、実質的に他と異なる推理ものを生み出したのは本作であるということで、1作目よりも本作の方を高く評価しています。
<ゲームシステム>
基本的にストーリー重視の作品ということもあり、システム自体には大きな特徴はありません。
もっとも、後の真説神谷右京の1作目が、ハードなコマンド選択式で、それ以後の作品がノベルゲーであることに比べ、本作は緩めのコマンド選択式である点で、後のシリーズ他作品と比べると形式が異なるとは言えるのでしょう。
そもそも神谷右京シリーズは、ストーリー重視のシリーズではあるのですが、シリーズ各作品を見てみると、実はかなり難易度の高い作品もあり、中には自力クリアの困難な作品すらありますからね。
本作を含めたTAKERU版はサクサク進み、簡単にクリアできるので、歯応えのある作品を求める人にはものたりないかもしれませんが、ストーリーを堪能するという観点からは、これくらいの難易度で良いと思います。
だから決してプラスの評価にはならないにしても、後のシリーズ作品のように、ゲーム部分がマイナスになることもないと言えるでしょう。
<グラフィック>
これも前回書いたのですが、真説以降は実写を加工した背景にキャラ絵で、演出等も控えめになっています。
それに比べTAKERU版は、背景もキャラも普通に描かれています。
そしてエルフのADVのように、目パチ口パクがあり、更に背景やオブジェなどが細かく動いたりして、演出にも凝っているのです。
何で真説以降で、これらの演出を止めちゃったのでしょうね。
1つのゲームとしては、こういう見た目で楽しませる要素は大事だと思いますけどね。
まぁ真説以降は、よりノンフィクションに近付き、リアル志向になっていきますからね。
オッサンのハゲ頭が光る演出とか、シリアスな内容に合わないだろって言われてしまえば、それもそうだよなと思ってしまいます。
変化した作品の内容に合わせて絵や演出も変わったのだとすれば、作品の統一性という観点からは正しいのでしょう。
だから一概には否定しないのだけれど、他方で本作のような少し軽めでありつつ、細かい演出を加えるというのも方向性としてありだと思うのです。
神谷右京シリーズについては、次から真説として仕切り直して続きますが、真説シリーズが何本発売されたとしても、本作と方向性は少し異なるのであり、本作の持つ魅力は色あせずに残るように思います。
<評価>
神谷右京シリーズはオンリーワンなシリーズと何度も書いていますが、そのシリーズの方向性を決定付けたのは本作であり、その点で大きな意義を有すると言えるでしょう。
またその一方で、真説以降は更に方向性を変えることから、純粋に本作と同じ方向性の作品もないわけでして。
よって本作は、オンリーワンの中の更にオンリーワンみたいな、特殊な作品と言えるように思うのです。
そのため、総合でも名作とします。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-09-20 by katan
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