『アソコの幸福 山本さん家の場合に於けるアソコの不幸に就て』は1989年にPC98用として、Zeit(ツァイト)から発売されました。
「名作浪曼文庫」シリーズの第2弾になります。
<概要>
ツァイトと言えば『ねじ式』なんかも有名なのですが、『ねじ式』が「名作浪曼文庫」シリーズの第1弾であり、『アソコの幸福』がシリーズの第2弾になります。
本作は「ひさうちみちお」さんの漫画を元にゲーム化したものなのですが、とにかく内容がぶっ飛んでいます。
ゲームという枠組の中に限って言うならば、当時ここまでぶっ飛んだゲームはなかったのではないでしょうか。
それでいて原作者は、今では大学の教授みたいですからね、エロスも突き詰めれば芸術なんだよなって改めて思ってしまいます。
<感想>
さて、肝心の中身なのですが、テーマはずばり変態です。
様々な変態を真面目に扱っているのです。
いやはや世の中って本当に広いなと、しみじみ思ったものです。
具体的には何本かのショートシナリオがあり、シナリオにより主人公も変更するのですが、それらを幕間でつないでいますので、全体的な雰囲気としては1本のストーリーって感じになります。
個々のシナリオは様々な角度で変態を扱っていて、どれもフェチ的な要素が含まれています。
例えば森林浴を好む主人公に対し、「浴」とは何なのか、その魅力は何なのかという話から始まり、究極の「浴」たる「ギャル浴」の良さを説くものがあります。
他にも、ギャルの体温を楽しむことから始まり、ギャルの入ったプールの水を食するものとかですね。
いや、ゲームをやってる内に、若い女性の食べ残しが最高のご馳走に見えてくるわけで、思わず洗脳されてしまいそうですよ。
また、男色に走る吸血鬼であるとか、変態だらけの会社を舞台にしたOLであるとか、活字の世界から飛び出た「アソコ」であるとか、各シナリオの主人公や舞台も多岐に渡っていました。
もちろん、主人公だけでなく、サブキャラも非常に個性的でした。
この多彩なキャラたちのおかげで、変態の世界が更に広がっていったと言えるでしょう。
まぁ、何て言いますか、フェチなんかにしても非常に強いこだわりがあるわけで、ある種の哲学や芸術にも近いものがあるわけです。
前述の「アソコ」なんかは、偏見からの脱却と自立を求めて旅立つわけで、偏見のない世界はあるのだろうか、自立とはどういうことなのだろうかと、そこには文学めいた側面すら見受けられます。
変態と言ってもその中身は様々で、近年のゲームの大半は馬鹿ゲーっぽいのばかりで、そこに「深さ」を感じることはできません。
本作は非常に真面目に深く変態に切り込んでいるので、他のゲームにはない独特の雰囲気が漂っていますし、下手なストーリー重視の作品よりよっぽど考えさせられるのです。
私はゲームに文学性は求めませんし、ゲームをエンタメとして楽しむ方かと思います。
そういう意味では私なんかよりもむしろ、変態とは何なのかを本気で突き詰めたいような人や、この作品のテーマは~でって語りだしたくなる人、作品を文学的視点で見る人の方が向いている作品なのであり、そういう人への入門作として相応しい作品なのかもしれませんね。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはコマンド選択式のADVになります。
ゲームとしてはプラス要素とマイナス要素があって、トータルでは普通ってところでしょうか。
マイナス要素は、とにかく動作が遅いってことですね。
他方で、正解のコマンドを選択していけば、すぐに次の展開に進みますし、ヒント機能もありますので、次に何をすべきか詰まった場合もフォローしてもらえます。
コマンド選択式としては、バランス良く作られていたと言えるでしょう。
そのため、動作がとろくても、同じコマンドの繰り返しみたいな煩わしさはありませんので、トータルでは普通かなって感じられるわけです。
<グラフィック・サウンド>
グラフィックは、キャラとかは今の流行とはかなりかけ離れていますが、変態じみた絵はしっかりと描かれていますし、それがまた部分アニメーションで動いたりします。
これならゲーム化した価値があるよなって思えるわけで、見ているだけでも楽しめましたね。
そもそも、テキストだけでもかなり変なゲームなのですが、やっぱりこのグラフィックがあってこその作品といえるでしょうから、グラフィックもまた十分に長所と言えるかと思います。
サウンドも良かったですね。
独特で奇妙なのですが、これが絵とテキストに非常にマッチしていて、ゲームを更に盛り上げてくれたものです。
<評価>
総合でも十分に名作でしょうね。
動作の鈍さや原作付きの点は気になるのですが、その分をマイナスしても余りあるほど長所がありますから。
『アソコの幸福』は、決して完璧な作品ではないのでしょう。
しかし一つ言えることは、これこそがアダルトゲームなのです。
もっと言うなら、これこそが大人のためのゲームであり、大人を変態の世界に誘う為の入門書なのです。
今のアダルトゲーム市場は厳しい言い方をすれば、お子様向けゲームとヌキ目的の実用性のためのゲームに分かれます。
本当に大人がじっくり嗜むゲームがないだけに、今こそこういうゲームが復活してもらいたいように思うのです。
Last Updated on 2025-05-13 by katan
コメント
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ねじ式の次に出したんでしたっけ、笑
そうそう、これこれ
めちゃめちゃいやらしいって言葉が似合うゲームですよね。
あるいみ芸術的というか… 悪くないというか。
強烈な個性があるゲームですね。
>しかし一つ言えることは、これこそがアダルトゲームなのです。
そのとおり! 自分も同感です!
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こちらも個性の強い作品でした。
ねじ式が1弾で、これが2弾で、本当は3作目も予定されていて、タイトルも発表されていたんですよね。
でも、発売されたと聞いてないので、お蔵入りになったんでしょう。
できれば、やってみたかったものです。
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久々に思い出して、現在98からロムとイメージを取り出して模擬器で遊んでいます。
ところでこのゲームの途中にあるタイル捲り(修道女の絵)がなかなかクリアできないのですが、捲られました?
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> ところでこのゲームの途中にあるタイル捲り(修道女の絵)
それって、ミニゲームのやつですよね。
あと1枚だか2枚のところまでいったはずですが、無理でした。
とりあえず後でやろうと思ったまま、結局そのままって感じですね。