継母調教

2000

『継母調教』は2000年にWIN用として、大熊猫から発売されました。

2000年頃のアダルトゲームの縮図というか、情勢が分る作品だったのかもしれませんね。

<概要>

ゲームジャンルは調教ADVになります。

あらすじ・・・
父親との再婚によって自分の母親となった、かつての初恋の小学校の先生。
突然突きつけられた残酷な事実を受け入れられず、断ち切れぬ思いに歪んで行く主人公。
そして主人公のためにその欲望の犠牲となっていく養母。
哀しみと欲望と…緩やかに破滅へと向かう二人の心の行き着く先は…。

<感想>

ユーザーの求めていたものと、声の大きなネット評論家の意見が合致するとは限らない、またユーザーの求めているもの自体も時代により変わるわけで、今振り返ってみると様々な点で考えさせられる作品だったのかもしれません。

まず本作は調教ゲームであり、人によってはSLGと分類するかもしれません。
しかし、調教SLGとしてはパラメーターなども少なく、かなり簡易的な構造でして。
少なくとも従来までの調教SLG好きが求めるゲームとしてのやり応えは、この作品には全くありません。
むしろ数値は進行度の目安程度の意味しかない、調教ADVと捉えてプレイした方が、すんなり楽しめるのでしょう。

ここで少し補足しておきますと、今は調教SLGがすっかりマイナーになってしまい、調教ADVの方が多くなっています。
まぁどっちも年間に発売される絶対数が少ないので五十歩百歩かもしれませんが、その中では調教ADVの方が数が多いということですね。
もっとも、この場合、どっちが多いかというのは重要ではなく、今では調教ADVも受け入れられているという状況ということの方が重要でして。

というのも、調教SLGは95年の『SEEK』から始まり、90年代後半は調教SLGが隆盛した時期でもありました。
同時に調教SLGの名作も大半は、この時期に固まっています。
ゲーム性に富んだ物もあれば凄く難易度の高い作品もあり、全体的にユーザーも歯応えのある作品を好んでいたものです。
調教と言えばSLGであり、ADV自体が非常に少なかった上に、仮に調教ADVがあったとしても、当時の調教ゲー好きには、調教ADVってゲーム性の乏しい、もの足りないジャンルでもあったんですよね。
今でこそ私も調教ADVで十分と考えるけれど、あの当時は調教ADVだと味気なく感じたものです。

その調教ADVが主になっていくのはゼロ年代になってからであり、2000年時の本作は、まだ調教SLG好きの多かった時期の作品となります。
したがって、『継母調教』なんてタイトルから調教SLGを期待したユーザー、時代的にはそうしたユーザーが大半を占めることになると思いますが、どうしても足りない作品に見えてしまうのです。
そういう意味では、当時より最近のユーザーの方が、違和感なく本作を楽しめるかもしれません。

さて、調教ゲームというと、ヒロインを調教し墜とす過程が重要になります。
もっとも、本作は調教というよりコスプレHみたいなものですし、そもそも墜とすというのではなく、ヒロインとの関係性、恋愛的なものが多くの比重を占めていまして。
また、ヒロインの継母も、継母というには外見的な部分だけでなく内面的にも若すぎるわけでして。
当時は萌え系の恋愛ゲームは主流にはなっていたけれど、まだ萌えに興味のない調教ゲーユーザーも多かったと思います。
萌え系の恋愛ゲーの亜種としての調教ADVとしてなら本作もありだと思うし、萌えゲーユーザーばかりなら本作はもっと支持されたのだろうけれど、現実として当時の一般的な調教SLGユーザーに受ける路線とも思えないわけで、その辺も少しミスマッチを感じたものです。

ところで、90年代後半からのアダルトゲームに対し、その頃のネット上の批評家などはシナリオ重視の時代へなどと言っていますが、私は激しく疑問があるというか、ぶっちゃけ葉鍵信者のでっち上げにしか思えないわけでして。
もちろん、その批評家自身はシナリオを重視して考えるのでしょうが、それを当時のユーザーの一般論として語ることが間違いだと思うのですよ。

まぁ最近はストーリーとシナリオの区別ができず、ストーリーの良いもの全般に対してもシナリオ重視って言われがちですが、90年代後半の頃のシナリオ重視するという人の褒める作品を見てみると、ストーリーが平凡でもテキストの良い作品を好んでいたと思います。
だから、そのような人はストーリー重視なのではなく、テキストを重視する人だったのでしょう。
それ自体は一個人の考えなので全く問題ありませんし、参考にもなります。

そしてテキストを重視する人の中では、本作は評判が良かったんですよね。
確かに、本作のストーリー自体は平凡なのだけれど、そのテキストには表現方法など他の作品と異なる傾向があるわけで、本当にテキストを重視しますという人が本作を絶賛するのならば、それは至極当然の成り行きとも言えるのでしょう。

だからもし時代がテキスト重視で動いていたのならば、本作の支持はもっと増えていたのでしょうが、現実には違っていたわけでして。
某シナリオ重視な人が、本作のライターの人気が伸びない点を理解できないと不思議がっていたけれど、そりゃ世の中が自分と同じくシナリオ(≒テキスト)重視ばかりと考えていたら、本作のライターが埋もれるのは理解できないだろうな~
でも答えは単純で、ユーザーの多くはテキストの細かい機微なんて分らないか、分っていても興味がなかったのでしょう。

そもそも、このライターの表現は特徴的だなと思う経験は他のライターも含め何度かあったけれど、そういうライターの作品が次作品で売れることは極めて稀でした。
ネットが普及するほどに、ライターが誰かという情報も得やすくなるなるので、テキスト重視・主導の時代が来ていれば、それが売上にも反映されると思うのですけどね。
そうならなかったということは、多くのユーザーにとっては、テキスト重視の時代なんてなかったと考えるのが自然だと思います。
少なくとも、調教ゲーでエロい展開を求める本作の主なユーザー層には、本作の様な路線は受なかったということではあるのでしょうね。

<評価>

2000年ということで振り返るならば、他にもあるわけでして。
例えば本作はミドルプライスの作品なのですが、低価格商品ないしミドルプライスの作品がヒットしうるのは、2002年の『妻みぐい』からの話でして。
もちろん、もっと前から低価格路線の試みはあったけれど、安かろう悪かろうとでもいいましょうか、『妻みぐい』の大ヒットがあるまでは、低価格商品はフルプライス作品より下に見られる印象もあり、今よりは受け入れられにくかったのかなと。

また今と異なり、某批評空間もなかった時代ですので、そこで自演なんて方法もできませんでした。
ネット上での話題作りにはレビューサイトで紹介されるのが早道であり、レビューサイトに無料でゲームを提供するブランドもあったんですよね。
本作も、そうだったみたいですし。

本作はビジュアルアーツ系のブランドで、ビジュアルアーツは2000年の年間トップとなったkeyを筆頭に、次々に関連ブランドが増えていまして、本作の存在自体もビジュアルアーツの隆盛を物語っています。
ビジュアルアーツ自身は、サイト・ブログを通じた口コミを評価し、長く支援していたんですよね。
もっとも、ビジュアルアーツの作品を褒めろとか、何らの強制も行わないところでしたので、ゲームを提供されたサイトも自由に意見を書ける環境にはあったはずです。
とは言え、仮に管理人が自由に書けると言っても、読み手が疑うようになってしまうと、こういう宣伝方法は成り立たなくなりますし、ゲームを配って記事を書いてもらうなんて方法が採れたのも、この時期だからこそなのかもしれませんね。

何か今回は余計な話が多くなってしまったのだけれど、本作は作品だけを見ると平凡な調教ADVのようで、あまり書くことはないわけでして。
でも、当時の情勢を考えると、様々な問題点・特徴が含まれていたわけで、ある意味2000年らしい作品だったのかもしれませんね。

ランク:C-(佳作)


継母調教

Last Updated on 2025-01-27 by katan

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