夜の天使たち ~私鉄沿線殺人事件~

1989

『夜の天使たち ~私鉄沿線殺人事件~』は1989年にPC88用として、ジャストから発売されました。

『デリンジャー』に出てきた中藤美希ちゃんシリーズの第2弾になります。

<概要>

中藤美希主演作品第2弾。
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

少し沿革から入りますが、80年代に美少女ゲームの元祖と呼ばれる『天使たちの午後』シリーズなど、数々の話題作を制作したことで有名だった、ジャストという老舗ブランドがありました。
なお、ジャストは今はなくなりましたが、その流れを汲むのが今のパープルソフトウェアになります。
そのジャストがクレストという新ブランドを作り、デビュー作『デリンジャー』にて、中藤美希という架空のアイドルキャラをデビューさせました。

本作は、その中藤美希作品の2作品目になります。
ちなみに、3作目は美希ちゃんのプロモーションソフトとして、『メイキング・オブ・Miki』が予定されていました。
もっとも、『メイキング・オブ・Miki』は、製作中の画像はあるのですが、結局発売されなかったようです。

<感想>

本作が他の作品より優れているのは、一つはグラフィックですね。
美少女をいち早く扱っていた当時の最大手ブランドが、特定のヒロインを売り出すために作り上げただけに、やっぱり可愛いキャラが多かったです。
中藤美希ちゃんは前作『デリンジャー』の頃は13歳でしたが、本作では19歳へと成長しており、より一層魅力的になっています。

主人公は探偵で、自殺と断定された、あるOLの死の真相を追求するよう、遺族から依頼されます。
亡くなった淳子の妹・久美は言いました。
「以前姉は、踏切で危険な目に遭ったことがあるらしい」と。

踏切だけが真相を知っているってことで、その踏切が事件の鍵を握ることになります。
だから、私鉄沿線殺人事件なんですね。
ちなみに、この踏切は小田急線の経堂駅の西側の踏切とのこと。
そう言われて分る人がいるのかは知りませんが、こういうのって何かマニア心をくすぐりますよね。

こうして事件を依頼された主人公は、美希ちゃんを助手に従え事件の解決に挑むわけです。
なお、美希ちゃんは前作では歌手デビューの前でしたが、現在はデビューし人気アイドル歌手になっています。
・・・アイドルの注釈って、今は必要になってきているのかな。
今は女性が歌を出せば皆アイドルって呼ばれますが、80年代のアイドルってのはトップスターだけだったんですよね。
そんな美希ちゃんですが、ゲーム期間中はちょうど3か月のオフに入っています。
上記の3作目は、そのデビューに至るまでを描く予定だったみたいなので、個人的には内容が気になってしまいますね。

さて、私は基本的に続編より初代が好きな傾向がありますが、前作は美希ちゃんは可愛かったものの、悪く言えばそれしか取り得がない作品でもありました。

本作は私の好きな推理物でもありますが、それを抜きにしても前作よりストーリーがしっかりしています。
また、本作は登場人物の数も増えてますし、それに伴い可愛い女の娘たちも一杯出てきます。
17歳(と明言された)女子高生も良いですが、23歳OLなんてのも良いですね。
美希ちゃんが最高だとは言え、やっぱりいろんなタイプの可愛い娘がいると華やかさが違いますよ。

もっとも、前作より良くなったとはいえ、本作も粗はいろいろとあります。
ストーリーもシステムも一般PCゲーの名作を超えたとは言えないでしょうし。
でも、人がどうであれ、私はこのシリーズが基本的に好きなんですよね。

<評価>

そうですねぇ~こう考えることも出来るでしょうか。
確かに推理物のアダルトゲームの名作もありますし、可愛いキャラがでてくる名作もありました。
しかし、可愛いキャラの出てくる推理物のアダルトゲームという、私にとってど真ん中のストレートなシチュエーションのゲームは、考えてみれば当時はまだなかったんですよね。

これだけじゃ、まだ曖昧か。
私の好みは別にしても、ヒロインとしてきちんと存在し個性が確立され、そのキャラの可愛さを有しつつ、ストーリーまでしっかりしている推理ADVというのは、やっぱり当時は他になかったかと思います。

歴史的な観点から言えば、80年代半ばまでの美少女は攻略対象でしかないものがほとんどでした。
或いは、最後にだけ出てくる捕らわれの姫とかですね。
でも、そういうのではなくて、主人公と肩を並べて存在する「個性と人格を持ったヒロイン」なんてのは、88年の『リップスティックアドベンチャー』くらいからなものでしょう。
美少女ゲームにおけるヒロインの存在の確立がなされていったのが、88年から89年頃なのだと思います。
そして、各社が様々にヒロインという存在を考え始めた中で、老舗で最大手ののジャストが満を持して用意したのが中藤美希だったと。

もう一つ加えるならば、作品内におけるヒロイン像の確立だけでなく、PC98時代になると、各ブランドは、看板娘としてブランドの象徴たる存在作りを行っていたように思います。
今でも有名なキャラとしては、アリスソフトのアリスちゃんがありますね。
アイデスではPC98時代にスワティがいましたし、エルフ等、様々なブランドが看板娘を作り出していったわけでして。
世間のゆるキャラブームとは対照的に、今のエロゲブランドでは必ずしもマスコットガールを作っていませんが、かつてPC98時代には、そういうブランドシンボルとなるマスコットキャラ作りが増えた時期があったわけで、そうしたマスコットキャラの確立も新しい動きと言えたのでしょう。

そしてクレストは、中藤美希のためのブランドであり、ゲーム内におけるヒロインとしての存在を確立させると共に、クレスト、ひいてはジャストの象徴としての役割も求められたと。
ある意味、89年以降の流れを象徴するようなキャラなんですよね。
そのようなヒロイン・マスッコットガール作りというのを、大手のジャストが中藤美希ちゃんシリーズとして挑み、その結果が『夜の天使たち』になるのでしょう。
『デリンジャー』ではゲーム自体の作り込みの甘さもありますが、何よりもまだ美希ちゃんは捕らわれの姫でして。
本作になって、ようやく主人公に並び立つ存在として、真価が発揮されることになったのです。
本作の価値はまさにそこにあるわけで、本作の歴史的意義をふまえると、十分に名作といえるのでしょう。

ランク:A(名作)


Last Updated on 2025-05-25 by katan

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