『ヴァルプルガの詩』は2015年にWIN用として、3Daisyから発売されました。
動きのある一枚絵によって、一枚絵の在り方について考えさせられた作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
塞ノ山を含む三山に囲まれた街、塞ノ市。
主人公の平穏な暮らしは、時期はずれの転校生によって一変する。
迷い込んだ洋館で襲ってくる美しい人外のモノ。
彼女を救う人狼一族の双子の兄弟。
明らかになる兄の秘密。
「ヴァルプルギスナハト……。中欧や北欧で4月30日に行われてる春と冬の境の祭りだよ。
死者と生者の境が弱まる夜と言われてる。……そう、今夜だ」
<感想>
本作は一般PCゲーの、いわゆる乙女ゲームになります。
恋愛という点では乙女ゲームなんだろうけれど、主人公であるヒロインの相手となるのは人外ばかりであり、その人外に執着される作品という感じですね。
その点で普通の乙女ゲーとも異なりますし、システム周りもとても充実していますので、読んでいて普通には楽しかったです。
この手の作品において私の場合、主人公に好感が持てるかが大きいのですが、主人公も良い感じでしたしね。
ただ、途中まではこれは名作かと思わせる勢いで進むものの、謎がきっちり説明されていなかったりするなど、次第に息切れしていくわけでして。
端的に言うなら、竜頭蛇尾って感じなんですよね。
だから楽しめはするけれど、ストーリーだけに注目するのであれば優先度は高くないのかなと。
本作において印象的だったのはイベントCG、つまり一枚絵でした。
一枚絵の質自体も高品質で、最近の男性向けノベルのCGのレベルの低さにガッカリすることも多い私も、これなら不満はないです。
それだけでも満足できるのですが、本作の場合、その一枚絵が動き続けるんですね。
他のノベルゲーは一枚絵が基本的に静止画ですから、この動き続ける一枚絵のインパクトは大きく、ストーリーと相まってイベントのインパクトが大きくなるのです。
考えてみれば、そもそもノベルゲーは普段は汎用の立ち絵で済ませつつも、ストーリーにおける重要なシーンで一枚絵を用いるものです。
ここぞという、強調したい場面で一枚絵を用いるわけですね。
しかし男性向けノベルの場合、近年は立ち絵の動きの進化にばかり注目し、それにより立ち絵の動きは豊富になったものの、一枚絵の進化は完全にストップしていました。
最近はワイド化の影響もあるのか、似たような構図のCGが増えたこともあり、個人的には一枚絵の質はむしろ下がってきていると思います。
なお、いわゆる抜きゲーは話が別です。
抜きゲーと呼ばれる作品の場合、一番大事で強調すべき場面はHシーンです。
そのHシーンでアニメーションなどを用いて動きを付ける作品も多く、強調すべき場面で力を入れているのですから、きちんと筋は通っているのです。
問題は、シナリオゲーとか呼ばれるような、ストーリーを読ませることを主目的とした作品の方なのです。
ストーリーを読ませることを主目的としたノベルゲーである以上、盛り上がるべきイベントを強調すべきなのですが、それができている作品は極端に少ないです。
男性向けノベルの大半はアダルトゲームですから、その場合にはHシーンにも力を入れなければなりません。
そうなると、Hシーン以外のストーリー上のイベントは、扱いが後回しになりかねません。
以前は、どうせプレイするのならエロのある方が良いと思っていました。
エロが加わることでマイナスになることはないのだから、だったらエロゲで出すべきであり、一般もののノベルゲーの必要性を感じられなかったのです。
しかし考えてみれば、エロゲで出してしまうと、どうしてもHシーンに一枚絵などを割かなければなりません。
シナリオ重視の作品の場合、どうしても盛り上げるべきイベントが犠牲になるのであり、だったら一般ゲーとして発売し、一枚絵の全てをストーリーに必要な場面に割く方が、理に適っているのでしょう。
<評価>
一昔前に、エロゲにエロ要らねと、意味不明にも思えることを言い出す人が多かった時期がありました。
実際、エロゲでエロ不要と言うのは無理があると思います。
しかし、ストーリー重視のノベルゲーではエロは不可欠ではありません。
また、エロが含まれるとその分だけイベントCGがそちらに割かれてしまい、ストーリー上の大事なシーンに十分なCGが用意できないことにもつながり、ストーリーの良さを存分に表現できないことになるのでしょう。
したがって、ストーリー重視の作品に関しては、一般ゲーとして出す方が適しているのだろうなと、本作をプレイしていてつくづく思いましたね。
動き続ける一枚絵により、これからのノベルゲーの一枚絵の在り方も見れましたし、プレイしていて久しぶりに収穫のある作品でした。
これでストーリーの勢いが最後まで続いていれば、文句なしに名作扱いだっただけに、その点は勿体なかったですね。
Last Updated on 2024-09-21 by katan
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