『ネバー・テイルズ 内に秘められた美』は2014年にPC用として、Mad Head Gamesから発売されました。
ブレイクスルーとなる会心の一作。
こういうのが出てくるから、ゲームを止められないのですよ。
<概要>
オリジナルは2013年に発売された『Nevertales: The Beauty Within』であり、本作は日本語版になります。
ゲームジャンルはHOG系のADVになります。
あらすじ・・・女弁護士である主人公は、やっと一日の仕事を終え、お気に入りの本を読みながらリラックスしていた。
しかし乱暴にたたかれるドアの音で、くつろぎのひと時は中断されてしまう。
ドアを開けて目に入ったものは・・・
置き去りにされた赤ん坊と走り去る車の姿だった!
不審な車を追跡していくと、今まで見たこともないような洋館にたどり着いた。
そこには「赤ん坊を救ってくれ」と書かれた謎の伝言が。
謎めいた洋館に足を踏み入れ、少しずつ不思議な世界に引き込まれていく主人公。
果たしてこの赤ん坊と主人公との間にどんな関係があるのか。
そして謎の男の正体は?
赤ん坊の安全を守りながら、想像を絶する真実を暴き出そう!
<ストーリー>
知らない男性に赤ん坊を預けられてしまい、その男性を追いかけた先の洋館が主な舞台になります。
真相を探るという点で物語のベースはミステリーとなるのだろうけれど、洋館内のポータルから雰囲気の異なる様々な世界に飛びますからね。
全体としては、ファンタジー色が強い感じですかね。
MYST系ADVのように様々に雰囲気の異なる世界を堪能するのが好きな人ほど、楽しめると思います。
<グラフィック>
制作したのはMad Head Gamesになります。
Mad Head Gamesは、個人的に今最も注目しているところでもあるので、その新作となれば無条件で購入してしまいます。
まぁ、本作は世界中で大絶賛されていますので、仮に全く制作元を知らなくても注目せざるをえない作品でしたけどね。
つまり新作の動向を注目していた会社の新作が、世界中で大絶賛となったわけですから、これは期待せざるをえないでしょう。
さて、そもそも何で注目していたのかというと、それは演出面がずば抜けて優れていたからです。
同社の前作が『ライト・オブ・パッセージ : 樹海の子供』であり、その時からCGの芸術性や塗りの美麗さも凄く好きだったのですが、それに加えて立ち絵の動きも非常に豊富になったのです。
私は昔、洋ゲーのADVも幾つかプレイしてきました。
昔の洋ゲーのADVはカートゥーンのグラフィックも多かったですし、或いは実写系の作品もありましたが、いずれにしても綺麗なCGを見るのも好きだったんですよね。
ところが、近年は3DのADVばかりになり、もちろんそれはそれで一つの方向性として楽しめるものの、個人的には伝統的な2DのADVの発展形も見たいと思っていたのです。
そうした中で、私の求めていた2DのADVの後継的な方向性を、『ライト・オブ・パッセージ : 樹海の子供』に見出したわけですね。
本作は「樹海の子供」の次に発売された作品であり、グラフィックは更に進化しました。
色合いとか単純に自分の好みに合致するというのもありますが、他にもサウンドも凝っていて非常に良かったですし、演出面は総合的に非常に良かったと思います。
<感想>
国内で販売しているビッグフィッシュでの区分は、「アイテム探し(HOG)」ないしADVになります。
この手のジャンルは年々ADV化しており、HOG+ADVであるとか、HOG系ADVと言った方が良いのでしょう。
本作も、その点は同様であり、ここでもHOG系のADVとしておきます。
HOGがADV化してきたのには幾つか理由があるかもしれませんが、大きな要因の一つとして、アイテム探しだけでは、もう他との差別化が図れなくなっていったというのがあるのでしょう。
RPGとかだって同じですからね。
最初の頃、つまり80年代は戦闘システムや育成システムで、各社が違いを見せていました。
しかし、その違いを見せることに限界が生じてくると、或いは評判の良いシステムを皆が真似しだすと、今度はストーリー重視になったり、演出重視になっていきましたよね。
HOGもアイテム探しの手法に限界が生じたから、ストーリー部分を強化したり、ムービーなどの演出面を強化したりと、ADV的な新たな方向性の強化を図っていったわけです。
Mad Head Gamesは、その代表的なところでもあり、「樹海の子供」なども演出面が非常に優れていたわけです。
野球で例えるならば、HOGにおけるアイテム探し部分が速球ならば、演出が変化球になるでしょうか。
つまり150キロの速球だけでは通用しなくなったから、スプリットやスローカーブなどの変化に活路を見出すようになったと。
本作は「樹海の子供」よりも演出が進化しましたので、変化球のキレが更に増してきたと言えます。
もちろん、それだけでも凄いのですが、逆にそれだけだったら想定の範囲内でもあったんですよね。
本作は、150キロの速球と更にキレの増したスプリットを予想していたら、ど真ん中に160キロを超える剛速球を投げ込まれたような、そんな印象なのです。
いや~これには驚かされましたね。
私は普段、ゲームのネタが出尽くしただとか言う人が大嫌いで、もっと工夫できるはずだと言っています。
ADV全般におけるネタみたいな、広い範囲では確かにそう考えているものの、その一方で限定された範囲に関しては、更なる発展の方向性が思い浮かばないケースも多々あるわけでして。
アイテム探しというのは、基本は指示された物を画面上から探すゲームです。
この方面の発展というのは、もうこれ以上は難しいのかなと思っていたし、だからこそストーリーや演出での発展に力を入れるしかないと思ったわけです。
そんな勝手な決めつけを撥ねつけたのが、この『ネバー・テイルズ』だったわけですね。
今までに経験したことがないような、様々なタイプの新しいアイテム探しのパターンが導入され、この分野は今後も更に発展していけるのだと、その証拠を目の前に突き付けられた気分でしたね。
正面突破は無理と思ったところに正面から突破してきた、上記の野球なら、もう速球だけでは通用しないと構えていたところに、想像以上の速球を投げ込まれ、手も足も出なかったという感じですね。
その様な作品ですから、もちろん初心者も十分楽しめるのですが、むしろ何本もプレイしてHOG系はこうだと思い始めたようなベテランの方が、衝撃を受けるように思いますね。
また、本作の様なカジュアルゲームでは、快適に遊べるかも重要になってきます。
そのため、通常はメモやマップなどが用意されるのですが、その点でも本作は必要な物が揃っており満足できました。
この部分に関しては、他の作品に難癖を付けるならば、どれもこれもメモとか日記という形式であり、現代には合わないだろっていう思いはありました。
どの作品も同じなのではなく、現代なら現代の、ファンタジーならファンタジーなりのアレンジができるはずですから。
その点、本作では、タブレット型の電子端末に情報が蓄積されており、開始時から他所とは違うのだという雰囲気が伝わってきますし、実際にプレイし始めたら、やっぱり違っていたというわけなのです。
ついでに、快適に遊べるかという観点で補足しておきます。
3D系のADVを中心に、直接移動するタイプのADVは結構あります。
直接移動させることで世界観を肌で感じることができるし、初プレイ時には十分意味があるのでしょう。
しかし、同じところを何度も行き来することは、プレイしていてストレスにもつながっていきます。
だから90年代のMYST系ADVなんかだと、途中を飛ばして短縮して移動できるようにしていました。
最近の特にsteamとかではインディーズの洋ゲーのADVが盛んで、3Dの優れた映像の作品も多いです。
最近の洋ゲーのADVでは、ナラティブとか言って、世界観をプレイヤーが直に感じることを重視しているようで、もちろんその方向性は十分にありなのだけれど、短縮モード関連は退化してしまっていて、移動に煩わしさを感じることもしばしばあります。
そういう意味では、HOG系ADVでは、簡易マップから短縮移動もできるのがデフォであり、ストレスのないプレイに関しては、こちらの方が進んでいるんですよね。
<評価>
ADVと言っても、実際には様々なゲーム形式があり、特定の形式は好きだけど、他の形式は楽しみきれないということは、普通にあることなのでしょう。
SLGとかだって、戦略SLGのマニアが、経営SLGも好きとは限らないですからね。
だからHOG系ADVが合わない人もいるだろうし、そういう人には本作より楽しめるADVは他にもあるでしょう。
しかしHOG系ADVという特定のジャンルで考えた場合、本作は最高峰と言える作品なのだと思います。
もちろん現在進行形で発展しているジャンルだけに、数年後には本作のような演出・ゲーム性の作品は幾つも存在することでしょう。
しかし、本作によりHOGが一段階進化したとか、新たな段階に突入したという表現を何度か見ましたが、そんな経験ができるのは本作だけなのです。
従来の枠を突き破り、更に先のステージに進んだと感じることって、ADVでは非常に稀なことなんですよね。
プレイヤー側の経験が増すということは、逆にゲームを新鮮に感じられなくなることでもあり、私なんかは新鮮に感じる作品が年々減っています。
そんな私でもリアルタイムでブレイクスルーを感じる瞬間がまだあるのだなと。
名作は色褪せないなんて言う人もいるけれど、そんな意見こそ懐古染みていて私は好きではありません。
時代が代わり何年も過ぎ去って、後に色褪せた様に見えるようになったとしても、その作品が世の中に出た時、その時に時代を変えてしまうような作品こそが、私は本当の名作なんだと思いますね。
Last Updated on 2024-10-19 by katan


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