パソコミック パープルCAT VOL1

1993

『パソコミック パープルCAT VOL1』は1993年にPC98用として、パームツリーソフトから発売されました。

パソコミックと称して登場したシリーズの第1弾になります。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVとなります。
公式にはパソコミックと称しており、また当時のプレイヤーに馴染み深い表現で言うならば、ディスクマガジンの類になるのでしょう。

こういうのも一部の人だけの誤解と信じたいのですが、PC98はゲーム性を重視する時代だからということで、当時はノベルゲーみたいに読み進める作品はないみたいに述べているのを、たまに見かけるわけでして。

読み進めるだけの作品はゲームではなく別のものだという見解は、当時は少なからずあったと思います。
今のように絵と音があればゲーム扱いで構わないだろ、細けぇこと気にすんなって寛容な姿勢は、今ほどは発達していなかったように思いますし。

でも、ゲーム扱いするか否かは別として、単に読み進めるだけってソフトは80年代からずっとあったんですよね。
その名称もブランドにより少しずつ違っていたりするのですが、テキストを読み進めることを意識したものならノベルウェアとか、他にはシネマウェアであるとか、ディスクノベルズなんてのもありました。
似たような発想で、コミック誌をPC上でというようなノリの場合には、デジタルコミックとかディスクマガジンって呼ばれるのが比較的一般的だったのかなと思います。
だから当時の感覚で言うならば、本作はディスクマガジンとなるのでしょう。
知っている人には当たり前すぎて説明不要かもしれませんが、知らずに勘違いする人も多く見かけたものですから、こういうのがあったのだよというところから入ってみました。

<感想>

さて、本作は、パープルCATシリーズのVOL1とありますように、確かシリーズは全部で5作品あったと思います。
PC98時代に4作品で、5作目はwindows用でした。
それぞれに各5~6本のシナリオが収録されており、作品ごとにテーマが設定されています。

このVOL1では「ティッシュな私」「夜うさぎの憂鬱」「ミステークナイト」「ビザールプリンセス」「宇宙警備課パッカー&ベル」の5本に、オマケの「パープルネットワーク」が収録されています。
SFから馬鹿ゲーまで幅は広いですが、このVOL1ではバニーガール特集ということで、バニーガールに特に焦点が当てられています。

ちなみに、VOL2はホスピタル特集であり、VOL3はザ・女教師特集、4作目はサンタクロース特集になっています。
また、3作目までは「VOL~」って数字が違うだけでしたが、4作目は『ぷるぷるパラダイス』と個別のタイトルが与えられており、5作目は『パープルCAT 97』と発売年が表示されています。
価格は2作目から4作目が定価6800円であるのに対し、1作目は4800円と、普通の作品より安いミドルプライスに設定してありました。
なお、5作目だけはフルプライスになっています。

前提の話が終わったので、ようやく中身に入ることができるのですが、パソコミックとあるように漫画をPC上で見る感覚です。
セリフは現在のエロゲの多くのような下3行スタイルではなく、その場面ごとに噴出しで表示されます。
漫画的手法の導入としては2002年の『白詰草話』及び、その後のFFDシステムを導入したLittlewitchの作品が有名です。
ただ、時代の関係で語られなくなっただけで、漫画的な手法自体は、80年代の『がんばれ! 美樹ちゃん』であるとか、90年代のこのシリーズのように、少数かつ忘れた頃の登場ではあるものの、一応は存在するんですよね。

注意してもらいたいのは、だから『白詰草話』に価値がないと言っているのではありません。
『がんばれ! 美樹ちゃん』と比べると、10年近く後のこのシリーズは進化しています。
そしてこのシリーズから更に10年後の『白詰草話』も、このシリーズよりも進化しています。
だから私も『白詰草話』の進化には楽しめたのです。
また、表現方法は多数あって良いと思っていますから、こういう手法が途切れることなく根付いて欲しいとも思っています。
だから途切れかけた発想を再度復活させ、00年代の技術で進化して表現した『白詰草話』には、十分な価値があります。

ただ、こんな発想は今までになかったと絶賛する人もいる中では、どうしても私の驚きは他の人より少なくならざるをえないこともまた、事実ではあるのでしょう。
既に漫画的手法を用いた作品の存在は知っているわけですし、他にも左右にテキスト欄が分かれたものや、上下に分かれたもの、表示欄が可動式のものなど、マイナーなブランドほど昔はいろいろやっていますので、それだけ可能性や問題点も見てきています。
window時代になってからは逆に、下3行か画面全体の2者択一みたいになっていますので、その両者に慣れ親しんだ人ほど『白詰草話』には驚いたのでしょう。
でも私の場合は、過去に既にいろんなのを見てきたから、進化したな~とは喜べても、こういう方法がというインパクトはなかったってことですね。

本題に戻りまして、本作は漫画的手法が用いられています。
しかし低価格で提供するには、コストがかかりすぎるんでしょうね。
場面によっては全画面グラフィックで漫画的手法により進行しますが、つなぎの場面では画面にあるようにテキストだけのノベル形式で進行します。
ここは単純に読むだけです。

<評価>

総じて、面白いかと聞かれるとそうでもないと思います。
特集された属性がフィットすれば楽しめるかなというくらいで。
でも漫画的手法など構造的には語れることがあるわけで、最小限のことしか書かないようなこのブログでも比較的長くなっています。
一応高めに評価して個人的には良作としてありますが、こういう絵とテキストの表示方法という側面から、各年代を比較してみるのも面白いのかなと個人的には思うのですけれどね。
そんな企画を立てる奇特な方が現れることを望みたいのですが、とりあえず下3行のテキスト欄と全画面を覆うタイプの2つだけでないことだけは、覚えておいて損はないのかなと思いますね。

ランク:B-(良作)


パソコミック パープルCAT

Last Updated on 2024-09-18 by katan

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