TAXI幻夢譚 ~ストレンジ・ワールド ACT.2~

1997

『TAXI幻夢譚 ~ストレンジ・ワールド ACT.2~』は1997年にPC98用として、ソルシエールから発売されました。

タクシーの中から様々に展開されるストーリー。
ソルシエールの代表作と呼べる作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

タイトルからも想像つくかと思いますが、主人公の初期設定はタクシーの運転手です。
開始直後にどのような乗客が望みなのかという選択肢があらわれ、以後は選択肢を選ぶことで物語が無数に分岐していきます。

<感想>

ジャンルはノベル系のADVなのですが、近年のノベルゲー様に、誰か特定のヒロインの物語を読むとか、数本のシナリオのどれかを読ませるという作りではありません。
『河原崎家の一族』に代表されるような、主人公の選択次第でどんどん枝分かれしていくタイプになります。

タクシーに端を発する様々なストーリー。
それは時に恋愛であり、SFであり、ホラーであり、そしてサスペンスでもあるわけで、まさに幻夢譚と言うのが相応しいのでしょう。

どんどん枝分かれしていくというシステムも98末期っぽいですが、様々なジャンルがごっちゃに混ざっているのも、非常に98時代のゲームっぽい感じがしますよね。
まぁ、97年頃には逆に、少なくなってきたのでしょうが。

この作品、1つ1つのシナリオは非常に短いです。
長編小説のようなストーリーを求める人であれば、おそらく物足りなく感じてしまうでしょう。

でも、そのかわりにEDだけでも42種という、非常に多彩な展開の幅を持っていました。
しかも上記のようにジャンルも豊富で、次に何が来るか分からないって感じでしたからね。
イメージとしては、ショートショートの小説を楽しむようなものでしょうか。
1プレイはさくっと終わるからだれることもないし、時間がないときでも一通りの起承転結を味わえます。
それに加え、次はどんなのが来るんだろうって楽しみもあるわけで、とても雰囲気が良かったですね。

雰囲気・・・
そうですね、たぶんこのゲームの魅力を端的に言うならば、雰囲気の良さなのでしょう。
多数のジャンルが入り混じった作品というのは、下手すると纏まりのない単なる寄せ集めに見えてしまう恐れがあります。
それを絶妙なバランスで纏め上げ、1つの作品に仕立て上げているわけで、その纏まりの良さが雰囲気の良さに感じるのでしょうね。

<評価>

まぁ、如何せん1つ1つのシナリオは小粒ですからね、プレイ当初はそれ程良いとは思えなかったりもします。
当時の私は、重厚長大な方が凄いみたいな錯覚もまだ残っていましたから。
今は再評価して良作としていますが、直後の評価だったら佳作程度ってところだったでしょうね。

でも、年々じわじわと良さが分かってくるというか、妙に懐かしく思えてくるわけでして。
それは最近こういうゲームがなくなったからかもしれません。
もう、必ずしも名作でなくても良いのです。
多少荒削りでも欠点が含まれていようと構わない、ただ単純にこんなゲームをまたやってみたい、あの妙なワクワク感をまた感じたい。
今思うことは、それだけなんですよ。

98時代末期に、98ゲーの魅力のエッセンスだけを閉じ込めたような本作。
それは決して名作とか大作とか呼べるような代物ではありませんが、心の片隅にいつまでもひっそりといつづけるような、そんな作品だったのです。

ランク:B(良作)

Win95 CDソフト TAXI幻夢譚

Last Updated on 2024-12-03 by katan

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