My Friends

1999

『My Friends』は1999年にWIN用として、Euphony Productionから発売されました。

犬神尚雪さんの原画ということでキャラも非常に好みでしたが、今作ではUIが優れているという印象が強かったですね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
高校を卒業し、初めて迎える夏休みを前に、徹の周辺は慌ただしくなり始めた。
いままで友達だと思っていた女の子からの告白。
返事を言い出せないままに、親戚の経営するペンション「ミステル」から旅行の誘いが。
幼い日に憧れた女性、早苗との再会。
美咲、由利恵、智子との多角関係に混乱を掛ける真弓の告白。
大自然にかこまれたペンションでの日々の中、徹はどのような決着をつけるのか?
ペンションから帰る時、彼の隣に腰かける女性は?
ドキドキハラハラなペンションでの恋愛劇の幕が今開く!

<感想>

ブランド前作の『はぷにんぐJOURNEY』が冬を舞台にしていたので、今回は夏を舞台にしましたって感じの作品ですね。

ストーリーは大きく二つに分かれており、前半は大学での学生生活での話であり、後半はペンションでの話になります。
『はぷにんぐJOURNEY』で書いたことと結構重なるので今回は省略しますが、ヒロインらの好感度は最初から高めになっています。
このようなタイプは、当時は嫌うユーザーもいましたが、ゼロ年代半ば頃になると、最初からヒロインの好感度がマックスのような作品が流行りだします。
そのため、本作は時代を先駆けた作品ともいえるでしょうし、当時より今のユーザーの方が好みやすい設定になっています。
エロも恋愛系の中では濃い方なので、今風に言うなら萌えエロ系になるのでしょうか。
これまた時代を先駆けていると言えるのでしょう。
本作は、当時の流行とは少しずれるのですが、後に増えていくタイプでもありますので、いろんな意味で時代を先駆けた作品と言えるのかもしれません。

また本作には、平均的な恋愛ゲーと異なる点が幾つかありました。
その1つが、主人公らが大学生である点ですね。
ヒロインらも変に萌えを意識したタイプではなく、また無駄に掛け合い漫才をするわけでもないので、そういうのを求める人には地味に見えるかもしれないけれど、逆に落ち着いたリアリティのある恋愛ゲーって感じで、これはこれで良かったかなと思います。

<グラフィック>

本作における最大の魅力は、グラフィックとUIなのでしょう。
『はぷにんぐJOURNEY』の時にも書いたのですが、私はこの頃の犬神尚雪さんの描くキャラが大好きでして。
本作でも好きなヒロインが多かったです。

また、ヒロインらは表情変化も豊かですし、目パチ口パクもありました。
しかも音声も付いていましたし、同時期の恋愛ゲーでは音声も目パチ口パクもない作品も多かっただけに、より一層ヒロインらが魅力的に見えたものです。

そしてUIですね。
これは下の画像を見てもらえば分るのですが、画面構成が少し一般的なアダルトゲームらしくない雰囲気になっています。
画面右側の木はアニメーションで揺れており、作中の時間や天候に合わせて色も変化します。
こういう作品に合わせたアレンジと雰囲気作りは好きですね。

背景を枠のようなもので囲む手法は、PC88やPC98時代等の昔からよくあるものの、そこにアニメーションや変化を加えるのは珍しいと思います。
このUIの効果もあり全体的に雰囲気の良い作品となっていましたし、同じ恋愛ものであっても、他作品とは異なるという印象を与えられました。

WIN95になってから、外枠のない作品が増えました。
これはこれで、大画面でCGを見られるという利点もあります。
しかし、他方でどの作品も同じような構造になり、味気ないものになってしまったように思います。
外枠の装飾は、その作品ならではの雰囲気作りに貢献しうるのであり、決して意味のないものではありません。
本作は、それをPC98時代からWIN95時代へと進化したことに併せて、現代的に再表現したものということができるのでしょう。

<評価>

内容自体は、普通の恋愛ゲームなんですけどね。
本作はサウンドにもこだわりが見てとれたし、当時としては珍しく音声付きだったし、それに加え好きな原画で、しかも目パチ口パクありで、UIまで凝っているわけですからね。
全体としては他にはない魅力を持った作品に仕上がっていたと思います。
当初は良作と考えておりましたが、PC98時代の作品の良いところを現代的にアレンジしつつ、後に流行る作品を先駆けた作品という性質もあることも考慮し、総合では名作とします。

ところで、Euphony Productionはアセンブラージュ系列でして。
本作の発売された99年にはエーテルブランドも設立し、デビュー作の『Campus ~桜の舞う中で~』が発売されます。
確かエーテルは一枚絵の質にこだわったブランドであり、一枚絵を重視する当時の傾向にマッチしていたとも言えるでしょう。
実際、『Campus ~桜の舞う中で~』はかなり話題性が高かったですし。

他方でEuphony Productionは、簡単に言えば田口社長の作りたい物を作るブランドでした。
本作にしても、UIにこだわろうとして作られた作品ですしね。
そしてここがこのブランドの凄いところなのですが、自分たちが作りたい物を作っていたからか、方向性がガラッと変わる場合もありまして。
2作目である本作までは恋愛ものだったのですが、その後は『悲愛 -ヒアイ-』や『神語 ~かんがたり~』など、恋愛ものだけでなく合間に凌辱ないし寝取られゲーを混ぜるようになり、『神語』なんかは一部では名作と評されるほど支持されました。

その時の原画やライターが、後の鬼畜絶叫系の元祖「たっちー」ブランドにつながっていくわけで、何がどうなるか分らないものです。
こういうのって、今だと暴動が起きかねないでしょ。
それまでガチガチの萌えゲーを作っていたのが、新作で突然強烈な不意打ち寝取られを入れてきたようなものですから。
もしあなたが好きな萌えゲーブランドの新作で、ヒロインがズタボロにされてレイプ目で心神喪失状態になったとしたら、今だったら絶対荒れるのが想像できますよね。
でも当時は、ジャンルが変わったとしても、それを支持するユーザーが出てくる時代でもあったわけで、その辺に時代の変化を感じてしまいますね。

それにしても、最近、ふとやり直してみたのだけれど、恋愛ゲーってこういうので良いと思うのですよ。
ヒロインの好感度が低い状態なら、そこから逆転するまでも加わるので、ボリュームも増えざるをえないのでしょう。
でも、本作や今多いタイプの最初から好感度が高い作品の場合、過程が一つ省けるわけですから、むしろボリュームは少なくて良いはずです。
掛け合い漫才の数を増やしたからって、それがキャラの魅力を必ずしも増加させているとも言えないですしね。
泣きだの鬱だのとシリアスな要素を混ぜてストーリー性を増した方が、自称シナリオ重視な人にはうけるのでしょうが、それがはたして「恋愛」というものにプラスになっているのかなと。
メッセージ性の強いストーリーの良い作品も好きだけれど、全部が全部同じ方向性を進む必要はないし、本作くらいの気軽に楽しめる普通の恋愛ゲーで良いと思うのですよ。
もちろん、気軽に楽しめるということは、決して手抜き・テンプレで良いというわけではありません。
気軽に楽しめるための最大限の工夫、他作品との差別化を図る必要はあり、本作はその点はきちんと出来ていたと思うから、これで十分楽しいよなと思えるのかもしれませんね。

ランク:A-(名作)


My Friends 初回版
ダウンロード版
My Friends dl

Last Updated on 2025-01-15 by katan

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