カノジョ*ステップ

2016

『カノジョ*ステップ』は2016年にWIN用として、SMEEから発売されました。

SMEEらしいような、らしくないような、何とも不思議な作品でもありました。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
季節は春。
もう何度目か忘れてしまった引っ越しを経て、俺はこの度、婆ちゃんのやっている民宿に住むことになった。
窓を開ければ田んぼが広がり、裏口を出ると、そこは山とも言える深い雑木林。
当然周囲にコンビニはなく、虫が苦手な俺にとって、ここは間違いなく田舎と呼ばれる秘境だった。
一緒に越してきた姉さんによれば、引っ越しは今回で最後。
学校もこの町で卒業し、その後家を出るならそれも自由。
つまり、今まで諦めていた恋をするチャンスが巡ってきた。
「恋は受け身じゃ始まらない」
俺はこの田舎町で、人生初の恋をする。

<グラフィック>

原画が代わりましたね。

多くの人には過去作のようなキャラデザの方がうけるのかなと思いつつも、個人的には本作のような、あっさり気味のキャラデザの方が好きなので、ヒロインを一人見た時は結構好みかもと思ったものでした。

うん、ヒロイン一人を正面から見た時は、確かに良い感じなんだよな~
問題なのは、まずヒロインのかき分けですね。
一人しか見ていないときは気にならなかったのだけれど、複数のヒロインが並ぶと、髪型以外皆同じって感じでして。
また、キャラが一人で正面を向いていれば気にならないのですが、斜めを向くと顎が変というか、首の辺りが変というか、凄く違和感があるのですよ。
これ、お世辞にも上手いとは言えないでしょう。
もう少し何とかならんかったものか。

確かに、ジャンルによってはキャラデザは重要でないけれど、本作のような恋愛ものでは重要でしょうに。
内面を重視するにしても、外面が悪くて良い理由にはならないはずです。

<テキスト>

恋愛ゲーをあまりプレイしなくなった私が、このブランドの作品はプレイし続けている理由の一つとして、会話が楽しいというものがあります。
本作もストーリー自体は特に変わったものがなく、田舎に転校してきた主人公がヒロインらと恋愛をするだけの、普通の恋愛ゲーであります。
しかし、他のゲームだとつまらなく感じがちな日常パートが、SMEEの作品だと結構楽しく感じるわけでして。
ここは、このブランドの強みでもありますし、本作においてもその強みは維持されていたと思います。

ただ、個々のテキストは良いと思うものの、ストーリーとしてはやっぱり弱かったですね。
複数ライターなのでルート間の差もあるのだけれど、もう少しヒロインの特徴を印象付かせるようなイベントが欲しかったなと。
日常パートは良いけれど、個別ルートが課題ですね。

<ゲームデザイン>

私が、他所の恋愛ゲーには興味が沸かなくとも、SMEE作品には注目している最たる理由は、作品ごとにゲームデザインを考えて作っている、今では非常に少ないエロゲブランドだからです。

今は何も考えていないようなテンプレなノベルゲーが多いし、その構造にいちいち同じ文句を言っても仕方ないので、普段は書かないことも多いのですけどね。
SMEEには期待しているからこそ、あれこれ書きたくもなるわけでして。

本作は、マップ上から移動先を選んで行動する要素があります。
90年代のエロゲでは良く見られたシステムですが、最近は見かけることが少なくなったシステムですね。

このシステムを用いること、それ自体に是非はありません。
大事なのは、このシステムを用いることに何の意義があるかなのです。
90年代後半には多くの作品で見かけることができましたが、それには当然意味があるわけで、90年代前半の移動式ADVからノベルゲーへの移行の過渡期だったこと、移動式ADVのファンとノベルゲーのファンの両方を掴むためには、折衷的なこのシステムが効果的と考えられたことが挙げられます。
しかし、20年近くも経った現在、上記の様な理由は存在しません。

もし他の理由から、本作のようなマップ選択式を採ったのならば、それで全然問題ありません。
しかし、本作にこのシステムを採る必要性を感じさせるような、特段の工夫は見受けられなかったです。
結局のところ、過去のシステムを意味なく、そのまま用いただけのように私には映りました。
過去作からシステムを変更してきたところはSMEEらしいのですが、過去作は何かしら現代的な新しさを導入しようとしたのに対し、本作は単に古いシステムをそのまま使っただけに映ったことから、その点でどうにもSMEEらしくないなと感じたものでした。

<感想>

それと、これは本作に限ったことではなく、多くのエロゲに当てはまることなんですけどね。
エロゲへの批判に、紙芝居「から」脱却しようぜというものがあります。
でも、むしろ逆なんじゃないかな。
そろそろ本気で紙芝居「に」脱却しようぜと言いたいのです。
主人公とヒロインの恋愛ストーリーを描きたいのであれば、そしてノベルゲーという構造を採ったのであれば、もっと一連のつながった筋としてストーリーを描くことはできるはずです。
日常パート(共通パート)で日にち単位でブツ切れにシナリオが進行する、そうした恋愛SLG時代の名残を、何の意味があって20年近くも続けるのか。
日にち単位の進行は、SLGや同級生タイプのADVなら有効としても、ノベルゲーではストーリーを弱める要因にしかならないと思うのですが。
ヒロインを選択させるならどのルートを読みたいのか、最初に選ばせても良いわけですし。
そういう意味では昔のオムニバスは、最初に選択したあとは、そのストーリーだけが描かれるわけですから、ストーリー重視作品としては今の構造より優れています。
現状だと、紙芝居にすら徹しきれていないように見えるわけで、紙芝居なら紙芝居に徹して欲しいと思うのですよ。

余談ですが、90年代後半からシナリオゲーの時代へとか、90年代後半にエロゲを始めた人が過去の作品を知らずに、勝手にそう言い出していて、私は反発しているのですけどね。
90年代後半のエロゲって、日にち単位のブツ切れシナリオの集合体が多く、一本の連続したストーリーのPC98ゲーのストーリー重視作品よりも、むしろストーリー性は退化しているよなと思ったものです。

まぁ、当初シナリオゲーとか言い出した人は、俺はこのライターのシナリオ(=テキスト)が好きなのだ、ストーリー等が優れていると主張するのではないという意味だったので、ストーリーが退化したからシナリオゲーの時代でないというのは、厳密には的外れなんですけどね。
それから何年か経ってから、シナリオゲーの時代を、ストーリーやプロットの良い作品が出てきた時代と誤解釈する輩が増え、それが定着してしまったというだけで。

とりあえず言いたいことは、ノベルゲーならノベルゲーで構わないから、もっと読ませることに特化した構造にしてくれということなのです。
SLGのテキストをそのまま起こしたようなシナリオ構造では、上記のようにストーリー性を弱めてしまうだけですし、本作のかかる構造はマップ選択式という構造と相まって、非常に古臭い作品との印象を抱かせるだけです。
SMEEは、他所と異なり、ゲームデザインを変えてくることが多いです。
次作がどうなるか分かりませんが、ノベルゲーで読ませるだけのシンプルなものになっても構わないから、それならそれで最後まできちんと徹してほしいなと思いますし、それができるブランドだと期待もしています。

<評価>

性質上、どうしても批判的な内容が多くなってしまいましたが、日常会話とかは楽しかったんですよね。
キャラデザもデッサン狂って上手いとは言えないけれど、何だかんだで主観的には好きですし。
だから総合ではC-としましたが、SMEE作品初プレイな人ならもっと楽しめるだろうし、逆に絵に抵抗がある人だと凡作以下もありえる作品だと思いますね。

ランク:C-(佳作)


カノジョ*ステップ
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Last Updated on 2024-09-04 by katan

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