『水月 -すいげつ-』は2002年にWIN用として、F&Cから発売されました。
F&Cの最後の良作と評された伝奇ノベルになります。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
画面全体をテキストで覆うタイプ、いわゆるビジュアルノベルでした。
あらすじ・・・
梅雨明け、蒸し暑い昼下がりに『僕』は目覚めた。記憶喪失――何もかもを失って。
混乱、そしてすがる過去がない事の恐怖。
闇夜に怯え、震える『僕』を救ってくれたのは、自分のメイドを名乗る少女、琴乃宮雪。
そして友人たち――宮代花梨、新城和泉、大和庄一。
優しい人たちに囲まれて『記憶喪失の自分』の新しい生活が始まった。
それは、どこかぎこちなくも優しい時間。
『僕』はそんな時間に幸せなものすら見い出し始める。
けれども、目覚めたその日から続く悪夢だけは変わることなく『僕』を苦しめ続けた。
夢の中には少女がいた。 色素の欠けた白い肌と赤みがかった瞳。
そして、闇夜を呑み込んで、なお黒光りする髪。数週間後の七夕の晩、『僕』が出会う美しい人。
牧野那波――それが、毎夜のように『僕』が射抜き殺し続ける少女の名前だった。
<感想>
F&C、つまりは旧アイデスなわけですが、88年から91年ごろまでは最大手だったと思うわけでして。
トップの座はその後エルフに奪われたのですが、それでも98時代はアリスも含めて御三家と言える立場にはあったわけです。
それが今ではすっかり影を潜めてしまって、本当に昔が嘘のような有様ですね。
そして本作は、そのF&Cの最後の良作とか言われて評判だった作品でした。
まずストーリーなのですが、伝奇モノとしていろんな要素を詰め込んできています。
ただそれを十分に活かせたとは思えないわけで、作りかけの未完な作品であるとか、まとまりのない中途半端な作品であるとか表現方法は幾つかあるでしょうが、何れにしろ据わりの悪い作品になってしまいました。
結局はキャラ萌えゲーの路線に進んだわけであり、キャラと雰囲気に浸れたかで評価が分かれる類の作品ではないでしょうか。
そうなるとあとは好みの問題となってしまう面も大きいのですが、個人的にはキャラの立て方とかは比較的良かったと思います。
しかし基本的に平坦なテキストでしたので、眠くなる感じで、あまり入っていけませんでした。
それでも音声があればまた違ったのかもしれませんが、本作には音声がありませんでした。
2002年頃は、ほとんどの新作が音声を入れ始めていただけに、そこはちょっと残念でしたね。
もっとも、まだ音声を入れてないところもあるので、そのことをもってマイナスにまではならないのでしょう。
しかしF&Cは、既に過去のゲームで音声を入れてますからね。
何故、周りの多くが導入した時期になって入れるのをやめたのかと思うと、何とも変な気がしましたね。
そういうわけで、ここまでは良いところなしなのですが、その分グラフィックが良かったわけでして。
☆画野朗さんの代表作と言っても良いでしょうね。
ただ、画面を文章が覆ってしまうと絵の魅力が損なわれるわけで、あまり大きなポイントともなれなかった感じですね。
<評価>
総合では凡作ってところでしょうか。
全体的には普通に楽しめるノベルだと思います。
ただ、評価とは全然関係ない話ですが、これをF&Cが作ったというのが個人的には気に入らなかったわけでして。
私は、例えばクソゲーと思った作品であっても、それが次回作の購入を控える要因にはあまりなりません。
攻めた結果外れたのであれば、次は良い方向に転ぶこともあるからです。
でも、いくら良い作品であったとしても、次が見えなければ、購入意欲は失われます。
昔のF&Cは、良いのもあったけど、結構酷いのも多かったんですけどね、でもいろいろ試行錯誤の意図は見てとれたわけで、作品だけでなくそういうブランドの姿勢が好きだったのです。
本作は決して悪い作品ではないですし、むしろ世間での評判は良いです。
でも、この路線を続ければもう先はないなと思ったわけで、「F&Cだから」という理由で注目することはこれが最後となりました。
以後も、幾つかF&Cのゲームはやっていますが、それは作品単位で何かしら気になる要素があったからであり、特別な存在としてのF&Cはここで終わったということです。
結局、以後のF&Cは、私の危惧した通りの結果になったわけで、なるべくしてなったということなのでしょうね。
Last Updated on 2025-03-07 by katan
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