トゥルー・ラブストーリー

1996

『トゥルー・ラブストーリー』は1996年にPS用として、アスキーから発売されました。

この作品の成功が、ギャルゲーブームの継続には大きかったのでしょうね。

<概要>

本作は、学園恋愛もののADVになります。
家庭用ゲーム機に限定した恋愛ゲームに関しては、1994年にPCEで『ときめきメモリアル』が発売され、95年にPSに移植されます。
94年時にはマイナーだったものの、95年のPS版により家庭用ゲーム機でも恋愛ゲーの認知度が飛躍的に高まり、いわゆるギャルゲーブームが到来します。
ただ、当時は『ときめきメモリアル』の劣化版ばかりであり、粗製乱造という言葉が当てはまってしまう状態でもありました。
例え素晴らしい作品があっても、それ一作だけでは、単発のブームが生じうるにすぎません。
だから場合によっては、「ときメモ」ブームという表現で終わり、「ときメモ」人気が落ち着くことでブームも早々に去っていたことも十分にありえるのでしょう。

そうではなく、ギャルゲーブームと範囲が広がったのは、後に続く面白い作品が出たからと言えるわけでして。
粗製乱造の中にあって、97年へと橋渡しをすることが出来たのは、PSでは本作の存在があったからこそなのでしょう。
その点で、本作は、家庭用ゲーム機のギャルゲーにとって意義のある作品だったのです。

<感想>

PSの前の国民機と言えばSFCなのだけれど、SFCって結構偏っていたわけでして。
ADVはほぼ絶滅状態だったし、他機種で人気の出ていた育成SLGも、SFCでは全然でしたからね。
だからADVも育成SLGも、ろくに知らないような層が、突然PSで恋愛ゲーに触れたからなのでしょうか。
どうもこの時期って、ADVとSLGの区別もつかないような人が多い、錯綜した時期だったように思います。
私も最初は本作が恋愛SLGであると聞いて、だったら後回しで構わないやって思ったんですよね。
でも、やってみたら、これADVじゃんって思ったわけですし。

そこがまず、本作の最初の特徴でもあるのでしょう。
96年当時のギャルゲーの多くは劣化ときメモでしたが、ときメモは育成SLGのシステムに物語上の区分として恋愛を入れたもので、だから恋愛SLGと言えたわけです。
他のギャルゲーも、ベースが育成SLGであり、そのSLG部分が駄目な作品が多いために、劣化版にしか見えなかったのです。
他方の本作は、簡易マップから移動場所を選び、キャラと会話します。
特徴的なのは「下校モード」の存在であり、ここでは特定のヒロインと下校しながら会話を繰り返し、具体的には連続して選択肢を選ぶことになります。
本作にも数値はありますが、育成SLGのような数値管理が目的ではなく、プレイの進行の目安にすぎません。
構造的にはADVであり、それがときメモやその類似品らと本作との、決定的な違いでもあるのでしょう。

連続した選択肢による会話主導の恋愛ゲーというのは、家庭用ゲーム機のゲームに限定するならば斬新と言えるのであり、主にゲーム機しか知らない人にとっては衝撃的に見えたでしょう。
だから新たな方向性として、ファンが生まれるのも分る気がします。

ただ、PCでゲームをやっていた人には、決して斬新でもなかったわけでして。
この手の方向性はナンパゲーから発展してきたものであり、80年代から幾つもありましたからね。
だから世間的には下校モードが高く評価されているものの、その構造に関しては、私は特に評価していないのです。

じゃあ、PCゲーをやっている人には、本作は意味がないかというと、そういうわけでもないんですよね。
一見すると似たような物があっても、そこに別の付加価値、ないし異なる要素があればユーザーは付いて行くのですよ。
後のギャルゲーはPCからの移植が中心になり、PCゲーと異なる要素がなくなっていきました。
だったら、エロのあるPCゲーの方が良いに決まっているわけで、ユーザーはPCゲーに流れてしまいました。
そのPCゲーにしても、ストーリーと萌えさえあれば構わない、エロも要らないというような風潮が生まれましたが、そうなるとPCのエロゲにこだわる必要もないので、現在は安価なラノベや深夜アニメなどにユーザーが流れてしまっているわけです。
より優れた代替手段があれば、人はそっちに流れるのが普通なのでしょう。
だから恋愛ADVってだけならば、PCのエロゲで十分だし、あえてギャルゲーでプレイする必要はないのです。

本作にも、当然そういうおそれはあったのですが、異なる要素があったから、PCゲーユーザーをも取り込めたのでしょう。
具体的に言うならば、アニメーションや音声ですね。
本作は目パチ口パクもあり、音声もあります。
そして下校モードでは、簡易的ではあるものの、アニメーションで動きます。
これらを、当時の主であったPC98でやるのは難しく、PSだからこそ出来たと言えるのでしょう。
動きながら語り掛けてくる下校モードには、PC98の恋愛ADVでは得られない臨場感がありました。
だからPCゲーユーザーも取り込めたのだと思います。

<評価>

上記のような特徴があるので、長所だけなら名作級でしょう。
しかし、グラフィックには癖がありましたし、操作性も良くなかったですしね。
その点も加味して、総合では良作としておきます。

ランク:B(良作)

トゥルー・ラブストーリー

Last Updated on 2024-11-21 by katan

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