『八月のノスタルジア ~the summer with you~』は、2000年にWIN用として、BeFから発売されました。
BeFの知名度を上げた、ブランド代表作でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
主人公は大学生であり、義姉で憧れの人でもある千歳に頼まれ、夏休みに彼女の経営するペンションを手伝うことになります。
本作は、そこでの様々な出会いから始まる恋愛ゲームになります。
<感想>
BeF作品は短いというイメージなどが先行していたこともあり、発売当時は自分に合わないかもと思ってスルーしていました。
そのため私がBeF作品をプレイし出したのは、発売から数年経ってからとなります。
実際にいろいろプレイしてみると中には凝った作品もありますし、良いなと思える作品もあります。
もっとも、自分が実際にプレイしてみて良いと思える作品と、巷での大雑把な評判では異なることも多々ありまして。
私が実際にBeF作品をプレイし始める前に抱いた印象では、ブランドの代表作として名が挙がりやすいのは、この作品だったと思います。
いや、厳密には少し違うか・・・段々思い出してきた。
雑誌とかで大きく扱われて、BeFというブランドの知名度が上がったのが本作ということなのでしょう。
そもそも本作は、BeFの第3作目になります。
一作目の『あきらめ』は、いわゆる陵辱系の作品であり、ジャンル的に主流層に受ける路線とは異なりますし、実際にプレイしてみてもシステム周りが特殊すぎて、根本的にゲームとして成立しているかも怪しい作品でした。
陵辱ゲーで朗読モードとか、趣旨の不明なシステムもありましたしね。
また、BeFと言えば厘京太朗さんの絵だろうと言い切れるほどに、半ばイコールの関係にあると思うのですが、二作目は実は別の人が原画でした。
したがって、ブランド側の本流とは言えないのでしょう。
それを踏まえて、三作目である本作は、ブランドの顔でもある厘京太朗さんが原画を担当していますし、内容も主流の恋愛ものですからね。
本気で王道路線に挑戦してきたということでもあり、雑誌とかでも紹介されやすかったのでしょうし、それに伴い注目度も飛躍的に上がったということなのでしょうね。
さらに本作は、最初はボイスなしでの発売でしたが、後にフルボイス版が発売され、その時に「あの名作に音声が~」みたいな紹介をされていたので、全然知らない人からすれば、ブランドの代表作は本作なのかと思ってしまうのも当然なのかなと思います。
そのため、私も最初は凄く期待していたのですが、いざプレイしてみると普通の恋愛ゲーだよなと。
ボリュームが少ないことを除けば他に欠点もなく、ごくごく普通の恋愛ゲームなのです。
まぁ時期的に泣きゲーが流行し始めており、恋愛ゲーでもシリアスだったり鬱な内容の物が増えていましたからね。
今でもイチャラブさえあれば十分と考えるユーザーもいるように、必ずしも恋愛ゲーで鬱展開を望む人ばかりではありません。
また、萌えキャラは人気で主流にはなっていたけれど、露骨な萌えでない頭身高めのキャラを好む人も当然います。
そういう普通のキャラで普通に恋愛を楽しみたいと思うユーザも、一定数はいたのでしょうが、その期待に応える作品の方は極端に減っていった時期でもありました。
本作はそうした需要に応える作品であると言えますので、求めるものによっては十分楽しめたのでしょう。
だから固定ファンが生まれるのも理解できるのですが、ストーリーに限定すれば良くも悪くも普通なのです。
<評価>
ごく普通の恋愛ゲーであり、内容的には凡作も考えたのですが、一見すると王道のジャンルのようでありながらも、ちょっとずつ当時の流行とずれていたことから、逆に当時の流行路線に乗りきれなかったユーザーの受け皿になりえたこと、当時では高解像度なグラフィックで厘京太朗さんの絵を堪能できたことから、総合でも佳作としておきます。
まぁ、BeF作品ってストーリーが短いとか弱いとか欠点は共通しているので、悪い方のブランドイメージは固まりやすいんですよね。
だからなまじ本作を知っていると、弱点の共通する以後の作品も同じような感じかと錯覚してしまい、プレイしなくても構わないかと勘違いしやすいのです。
でも実は、世の中が捻りのないノベルゲーばかりになっていく中で、BeF作品は作品ごとにゲームデザインを変えてきたりしていまして。
したがって、作品ごとに抱く印象も大きく異なりうるのです。
もちろん、これは迷走したなという物もあるのですが、中には秀逸だと思わせる作品もあり、個人的にはブランドの最高傑作は他にあると考えています。
本作によりブランドの知名度が上がったことは良いことなのでしょうが、本作のイメージが付きすぎて、後の工夫が凝らされた作品が埋もれやすくなってしまったことは、非常に惜しかったです。
以上のようにBeF作品では他に良い作品があるだろと思うものの、一方で凝った作品は万人受けしない場合もありますので、比較的万人受けしやすい本作はブランド入門作には適しているのでしょう。
そういう意味では、ブランドの顔と言える作品ではあるのだろうなと。
そして何より、雰囲気が大事な作品でもありますからね。
タイトルにもあるように、より本作を楽しむためにも、できれば8月にプレイしてもらいたいものです。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2025-01-28 by katan
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