『殺意の証明』は1996年にWIN用として発売されました。
1995年に発売された『in the 1st degree』の日本語版になります。
元祖法廷ADVといえる作品でしたね。
<総論>
80年代までは、ADVといえば推理ものでした。
・・・と言うと少し言い過ぎかもしれませんが、でも推理ものが非常に多く出ていたことは確かです。
今日ではその数は激減したものの、それでも根強い人気はあると思います。
それを考えると、似たようなジャンルなのに法廷ものって少ないですよね。
そもそも、『逆転裁判』シリーズ以外で判る人がどれだけいるのでしょうか?
多くの人が法廷もの≒逆転裁判ではないでしょうか。
メジャーなゲーム機で出ているのがそれくらいなので、そう考える人が多いであろうことは否定しません。
しかし少なくとも、自分にとっては法廷もの=『殺意の証明』なのです。
<グラフィック>
『殺意の証明』はグラフィック全編が実写ムービーから構成されており、そのインパクトは絶大でした。
ムービーということなので、当然ながら動きまくりですし、全て音声で話します。
もっともアメリカ製なので、役者もまた当然の如く全員外人です。
実写ゲーなんて80年代からあるだろと言う人もいるでしょうが、それまでの実写ゲーは、画面が小さいうえに画質が悪くてね。
もちろん動くってだけでも楽しめたのは確かなのですが、画質が物足りないことも否定できませんでした。
TVを見ているのと遜色ないレベルで楽しめる作品はなく、私はこの作品で初めて画質面でも満足できたのです。
95年当時だけでなく、数年後でも画質に難のある作品をいくつも見かけました。
そうなると、WIN用だからというよりも、そもそも本作の出来自体が、それだけ優れていたということなのでしょう。
これは今現在でも十分に通じるほど綺麗でしたね。
<サウンド>
また、日本語版なので、台詞は全部吹き替えになっています。
今と違って当時は慣れていない人もいたのですが、本作では全く違和感はありませんでした。
ここもまた、担当した声優さんが優秀だったと言えるのでしょう。
ちなみに、被告人役の声優は池田秀一さんです。
分かる人はすぐに分かると思いますが、ガンダムの「シャア・アズナブル」ですね。
そのため、目をつぶってプレイすると、まるでシャアを尋問しているかのような気になれますw
これには、少し笑わせてもらいました。
<感想>
さて肝心のゲームパートは、前半は証人になりうる関係者への聞き込みといった情報集めになります。
この情報集めの部分における相手との会話部分は、選択肢の連続になります。
これがまた、プレイ時間に比してかなり数が多かったです。
一見ありがちだけど、ここまで徹底したのは意外とないのではないかと。
でも、その多数の選択肢が全て次につながるから、決して無駄には思えないのです。
もちろん、この時の会話の仕方によって、得られる情報も全く変わってきます。
万が一にでも相手を怒らせてしまったら、もう何も話してくれなくなります。
でも、怒らせないようにと下手に出るだけでは駄目であり、強情な態度を採る者に対し脅しをかける方が効果的な場合もあります。
なだめたり、機嫌をとったり、時には脅したり・・・
会話の最中は一瞬たりとも気が抜けません。
この会話の間にも、相手は実写で動き回りますしね。
ギャルゲの立ち絵もこのくらい動いてくれればなぁ~って、しばしば思いますよ。
こうして得られた情報を基に、後半は法廷パートに挑みます。
ここでも進行は選択肢の連続になるのですが、裁判の状況は刻一刻と変わっていきます。
事前に得た情報を全て使っていては、逆に矛盾のない一貫した行動が取れない場合も出てきます。
裁判に勝つために「どの情報」を使うのか、「どの証人」(突然法廷で裏切る奴もいる)を使うのか、
そしてどういった「構成」で攻めていくのか・・・
自分の選択した手段や構成といった判断により、裁判の行方が大きく変わるのです。
またその日の裁判が終わると、自分が法廷で採った方法についてTVで論評されます。
上手くいけば絶賛され、逆だとボロ糞に貶されます。
貶されると凄く悔しいのだけれど、それがヒントになって自分の構成の甘さを見つめなおすことが出来ます。
逆にTV放送で褒められると、分かってはいてもかなり嬉しいものです。
そういやゲーム中で、ここの部分が鮮やかでしたね~って具体的に褒められるのって、考えてみればあんまり味わえない体験かもしれませんね。
ヒントにもなるし、ゲームに緩急を付けるアクセントにもなりますし、この部分は非常に良かったです。
最終的な目標としては、容疑者に「1級殺人」の判決が下されればベストエンドになります。
「1級殺人」という言葉はアメリカの区分ですので、日本では馴染みがないかと思います。
日本では「殺人罪」でひとくくりにされているけれど、アメリカでは更に計画性の有無で1級と2級に分けているみたいです。
その1級殺人を認めさせることが、非常に難しいのです。
私も故意を認めさせて2級殺人の判決までは何度も行きましたが、1級殺人の判決を得るのには苦労しましたから。
途中までは完璧に進行していて故意も文句なしに立証できたのに、最後で容疑者が泣き崩れて、とっさにやってしまったのです、計画性はなかったのですなんて言われると、もう1級は無理ですからね。
<評価>
常日頃から、名ばかりでなく自分で本当に推理するゲームをやりたいと思ってる人いませんか?
『殺意の証明』は、きっとそんな人達の願望を叶えてくれることでしょう。
以上のように『殺意の証明』には、たくさんの魅力が詰まっています。
特に事件を自分で考え推理を組み立てていくことがやりたいって人には、間違いなく最適でしょう。
そういう意味では、傑作級(AA-以上)のインパクトは間違いなくあります。
しかし、結局は私も、名作とはしながらも、傑作には及ばずと判断しました。
それは何故かと言うと、ボリュームが圧倒的に少ないのです。
1プレイが約2時間。
マルチエンドだし途中の分岐も半端じゃないので、全部の展開を見ようとしたら10時間以上は軽く遊べます。
そう考えれば、徹底的にしゃぶり尽くす人ならば、この点も問題にはならないのでしょう。
でも、1プレイが2時間ほどのストーリー(事件)が1本だけですからね、体感的にはちょっと少なく感じてしまいました。
ゲームは20時間以上ないと認めないよってな人は要注意でしょうね。
その意味では、決して万人向けではないのでしょう。
多くの人は何だかんだで一定のボリュームも求めますから。
でも逆に、短時間でもいいから珠玉の一時を過ごしたいって人ならば、楽しめる確率は非常に高くなるのではないでしょうか。
欠点もあるので必ずしも高い点数ではないですが、主観的にはかなり大好きな作品でした。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-11-18 by katan
コメント