『ONE ~輝く季節へ~』は1998年にWIN用として、タクティクスから発売されました。
ザクに対する旧ザク的な、後のkey作品を形作った原点とも言える作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・1998年、冬。
普通の学生であったオレの中に、不意にもうひとつの世界が生まれる。
それはしんしんと積もる雪のように、ゆっくりと日常を埋めてゆく。
そのときになって初めて、気づいたこと。
繰り返す日常の中にある変わりないもの。
いつでもそこにある見慣れた風景。
好きだったことさえ気づかなかった、大好きな人の温もり。
すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。
その絆を、そして大切な人を、初めて求めようとした瞬間だった。
時は巡り、やがて季節は陽光に輝きだす。
そのときオレはどんな世界に立ち、そして誰がこの手を握ってくれているのだろうか。
<感想>
keyの作品は、最近はいろいろアニメ化されているおかげで、直接ゲームをしていなくても知っている人もいるでしょうし、その傾向についてはもはや説明不要な気すらしますね。
keyの魅力・特徴って何でしょう?
人によって答えは少しずつ変わってくるでしょうが、構造的な特徴としては、序盤は平和な日常パートのギャグで笑い、終盤の個別ルートでは一気に泣ける展開になる。
そして、作品全体を優れたサウンドで盛り上げてくれるという点で、どの作品でも共通するかと思います。
そしてそのkey作品のゲームの流れを基礎付けたのが、key設立前に所属していた他のブランド(Tactics)で作った『ONE』であり、それも、もはや疑う余地はないのでしょう。
『Kanon』以降は結局のところ、良く言えば『ONE』を厚く肉付けしたものであり、悪く言えば2番煎じ・3番煎じでしかないんですよね。
だからこそ、『ONE』をリアルタイムでやった人の中には、『ONE』こそが最高傑作と考えている人もいるのでしょうね。
ところで、評価は発売時の規準ですべきではありますが、ここでちょっとそこから離れて、今遊んだらどうかで考えてみます。
確かに似たような作品が続くことから、『Kanon』以降から先にやってしまうと『ONE』は物足りなく思うかもしれません。
それは仕方ないといえば仕方ないことでもあるでしょう。
でも、それじゃあもうやる価値は無いのかというと、決してそうでもない気がします。
憲法の芦辺先生の本に、『国家と法』という薄い本があります。
これをベースに詳しく肉付けした本が、憲法を学ぶ人にとって必携とも言われる芦辺『憲法』なわけです。
こういうと、『憲法』を読めば『国家と法』はいらないじゃんって思う人もいませんか。(自分は最初そう思いましたw)
でも、教授とかで『国家と法』を読めって言う人は意外と多いのですよ。
なぜなら、薄い分、短時間で一気に芦辺憲法の根本を理解できるからだそうです。
少ない分量の中に、魅力のエッセンスがギュッと凝縮されてるんですよね。
『ONE』にも同じことが言えます。
key作品未プレイの人にはぜひとも『ONE』からやって欲しいですが、プレイ経験のある人にも本作はやってもらいたいですね。
内容的には後発の作品より短いですが、そこにはkey作品の持つ魅力の全てが凝縮されているのですから。
まさに、全てのkey作品の原点がここにあると言っていいでしょう。
さて、以上のように原点たる側面があるのも確かなのですが、当然ながら異なる点もあります。
key作品の場合、ほとんどの場合はヒロインがボケで、それに対して主人公がつっこんでいきますよね。
しかし『ONE』の場合は主人公がボケて、ヒロインがつっこむケースが多いのです。
だからかは分かりませんが、日常パートが一番面白かったのも『ONE』のような気がします。
これは単に好みの問題かもしれませんけどね。
ちなみに私は、『CLANNAD』で春原が馬鹿をやって、杏や智代につっこまれるシーンが凄く好きでした。
同じ感想を持った人なら、『ONE』の日常もきっと楽しめるのでは。
あくまでも個人的な感想なのですが、keyはヒロインをツッコミ役に回した方がキレがある気がするんですよね。
また、『ONE』はボリュームがあまり多くない分、逆に笑いと泣きのバランスが最も良かったと思います。
後の作品はボリュームこそ増えていきますが、その多くは日常のギャグパートですからね。
バランスとボリューム。そこら辺をどう評価するかで各key作品の評価も変わってくる気がしますね。
そして、もう一つ忘れてならないのが、作中に出てくる「永遠の世界」という概念なのでしょう。
『Kanon』は泣きゲーとして話題になり、その感情に訴えかけてくる部分で注目されましたし、本作にもそうした泣き要素は存在します。
しかし、本作の時点で最も注目されたのは、泣きでも笑いでもなく永遠の世界だったと思います。
本作には「永遠の世界」とは何なのかという考察要素がありました。
最近は考察系作品は特に好まれるようでもないようですが、当時はこうした考察要素が、オタクの心をガッチリと掴んだわけでして。
当時のオタク事情、key人気を考える上では、絶対に把握しておきたい要素と言えるでしょうね。
※それから、これは余談になります。
一時期、葉鍵をつなげて、エロゲの偽史を語る輩がいました。
その連中は、ビジュアルノベルという画面全体をテキストが覆うタイプのノベルゲーの構造の話から、なぜか『ONE』につなげていくのです。
私には、その流れがどうにも理解できなかったわけでして。
なぜならば、『ONE』は普通のノベルゲーの形式を採っており、ビジュアルノベルではないからです。
私はリメイクや移植版をプレイしないので、それで気が付くのが遅くなったのですが、『ONE』のPS移植版は『輝く季節へ』とタイトルが変更されるとともに、ビジュアルノベルの形式に変更されていたようです。
それで、つなげた理由が分かったのですが、でもそれって、あの人たち、『ONE』のオリジナル版もプレイせずに偉そうに語ってたのかと不思議な気持ちになったものです。
繰り返しますが、本作はビジュアルノベルではありません。
<評価>
総合でも文句なしに名作といえるでしょう。
『ONE』は口コミで支持を広げていった作品ですが、まだそれでも知る人ぞ知るって作品でもありました。
後に与えた影響は『Kanon』の方が大きいでしょう。
でも、その『Kanon』は『ONE』の直系なわけで。
ある意味、現在の泣きゲーの原点に位置するでしょう。
ガンダムでいえば、旧ザクですね。
(KanonがザクⅡで、AIRがザクⅢかな。)
いずれにしろ、keyが好きな人、keyに手を出してみようかなって人、そのどちらにもオススめの一本だと思いますね。
ランク:AA-(傑作)
Last Updated on 2024-12-27 by katan
コメント
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http://nexton-net.jp/nexton30th/
遂にリメイクするそうですね。どうやらNextonにいたるさんが戻ったそうで。
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> ロナルドさん
そうなんですね。
内容的に、今の若いユーザーにはうけなそうですが、当時のユーザーが欲しがる感じですかね。