『RAMPO』は1995年にセガサターン用として、セガから発売されました。
元々、江戸川乱歩生誕100年及び松竹創業100年の記念作品として映画が企画され、その一連の企画の一つとして制作された作品でした。
<概要>
ゲームジャンルは、FMV(フルモーションビデオ)になります。
まぁ、実写ムービーのADVって言った方が分かりやすいでしょうか。
当時の言い方なら、インタラクティブムービーという表現になりますね。
実写ゲーは、使う俳優によって話題性が変ってくるし、当然ギャラも変ってくるから制作費も全然違ってきます。
そうした方面に気をとられるからか、どうにも国内では内容が伴っていない作品も多いわけでして。
ハズレが多いことをユーザーも知ってるから、結局売れなかったりで、悪循環を繰り返しているわけです。
もっとも、全てがハズレなのではなく優れた作品だって存在します。
以前紹介した『悪逆の季節』なんかはまさにその代表でしょう。
ただ、『悪逆の季節』はストーリーの性質もあって、全て実写のグラフィックであり、現実的な映像ばかりでした。
もちろん、それはそれで何の問題もないのだけれど、当時既に『MYST』等の現実と何ら変わらないくらいに綺麗で、幻想的な世界も体験していましたからね。
だからずっと待ち望んでいたのです。
実写と幻想的な世界を表現したCGが融合した、出来の良い国産のゲームがやりたいなって。
そしてその願望を初めて叶えてくれたのが、セガサターンの『RAMPO』だったのです。
<グラフィック>
『RAMPO』は、その名のとおり、江戸川乱歩を主人公としたゲームです。
「現し世は夢 夜の夢こそまこと。」
パッケージにそう書かれてあるように、江戸川乱歩の作品の持つ、何ともいえない妖しさが、CGで実によく表現されていました。
加えて、登場人物は実写ということで、俳優もたくさん出ています。
乱歩が竹中直人だったり、ヒロインが羽田美智子だったりして、有名な人が結構使われています。
その演技を見てるだけでも、きっと満足できるかと思います。
ちなみに、個人的には羽田さんが凄く好きだったんですよね。
ちなみに、本作に限って言うならば、横溝役の香川照之が凄く良い味を出していましたね。
この頃って、勝手が違ってまだ馴染めていないのか、
それともゲームだからって舐めているのか分からないですが、声優であっても手抜きっぽく感じたりする作品も多かったですから。
それだけに、香川さんの熱演はとても好印象でした。
<感想>
ストーリーは『お勢登場』をベースとした下宿屋で起こった殺人事件と、『化人幻戯』をベースとした大河原侯爵の屋敷で起こった殺人事件の、2つのシナリオからなります。
前半はある意味、ファンサービスって感じでしょうか。
『お勢登場』をそのままっていうのではなく、『二銭銅貨』や『屋根裏の散歩者』のオマージュ的要素が、随所に混ぜられています。
だからファンならきっと、ニヤリと出来るはず。
そうそう、これこれって感じで、掴みはOKです。
後半の大河原侯爵邸での話は、完全に館もののADVって感じに仕上がってました。
雰囲気がとても良かったですね。
そもそも私は、江戸川乱歩の大ファンでして。
今でも、よく小説を読んだりしています。
ストーリー面に関して、乱歩の1ファンの視点から見てみても、このゲームは上手く雰囲気を出せていたかと思いますね。
仮に実写やCGが使われていなかったとしても、ここまで乱歩ワールドを表現できていれば、もうそうれだけでも満足できちゃうほどですよ。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはインタラクティブムービーと書きましたが、システムを別角度から表現すると1人称視点の3D・ADVとなります。
まぁ、簡単に言えば『夢見館の物語』路線ですね。
大河原侯爵邸での話は館を舞台にしていますので、特にそう感じられるでしょう。
夢見館の後継作、あるいは進化形って捉えて良いのではないでしょうか。
ただ、決して2番煎じなのではなく、新しい要素も加わっています。
本作ではキャラとの会話中、コマンドを選択するのではなく、相手の話に応じて「はい」か「いいえ」をボタンで選ぶのです。
これがまた、何とも不思議な感覚でして。
いや、不思議と書くと誤解させてしまいますか。
あまりに自然な流れであるが故に、逆に他のゲームとの比較で印象深くなるということですね。
どういうことかと言いますと、話しかけてくるキャラは普通の人間が話しかけるように、動画の中で常に微妙に動いています。
その中で主人公に対し何か質問してくるのですが、その返答に時間制限はあるものの、『サクラ大戦』のように画面で知らせてくれるものはありません。
会話の中で不自然な間が生まれる時間がタイムリミットなのであり、そのキャラの動きにあわせて自然な対応になるように相槌をするのです。
文章で書くと良さが伝わりにくいのだけれど、これがまた結構新鮮な気持ちを抱かせたものです。
グラフィックやストーリー目当てだったこともありますが、予想外にシステム面で収穫があったことは嬉しかったですね。
ノベルゲー等の選択肢を選んでいくタイプのゲームの最終的な姿は、案外これに近いものになるかもしれないですね。
キャラが普通に動いていて、その動きに応じて自然な形で態度も決めなきゃって。
古い作品って、それだけで懐古だ何だのって馬鹿にする人がいるけれど、ADVのキャラの反応で本作より優れた物なんて、特に二次元のADVでは今でも皆無と言っても間違いではないでしょう。
本作から学べる要素は、まだまだあるように思います。
<評価>
総じて、CGと実写を見事に融合させた数少ない作品であり、同時に江戸川乱歩ファンとしても納得できるゲームでした。
その2点がある以上、本作の持つ個性・オリジナリティは、10年以上経った今日においても全く色あせてないと思うのです。
もっとも、メインだったはずの映画の制作の方には、どうやらいろいろあったみたいですね。
当初は、黛りんたろう監督が制作したものの、奥山和由プロデューサーがその出来に納得しなかったため、自らメガホンを取って取り直したという逸話があります。
さらに海外公開の際に再編集され、結局、黛りんたろう監督版、奥山和由版、海外公開版の三本あったとか。
それでいて、世間での評判の方はどれも芳しくないようでした。
もし映画の出来が良ければ、ついでにゲームもって人も増えたかもしれないですけどね・・・
実に勿体無かったですね。
本家の映画で足を引っ張られた感じがしてしまうのは、なまじゲームの出来が良かっただけに残念で仕方ありません。
『悪逆の季節』は出来は抜群だったけれど、3DOであったために浸透しなかったのも仕方ないでしょう。
でも、本作はセガサターンですからね。
こういうゲームはもっと認知・評価されても良いと思うんですけど。
私のAってのは、むしろ低いくらいでしょうし。
まぁ、95年時のサターンでは、ユーザー層の偏りもありますから、仕方ない部分もあるのでしょうけどね。
でも、それでも実写好きならば、『悪逆の季節』とこれはやって欲しいかなって思いますね。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-11-01 by katan
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