たんぽぽ ~Everything Nice~

2002

『たんぽぽ ~Everything Nice~』は2002年にWIN用として、苺みるくから発売されました。

炉利ゲーで有名な、みそおでん&苦魔鬼轟丸コンビの商業最後の作品になります。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

商品紹介・・・登場人物がみんな「ちびっこ」の18禁アドベンチャーゲーム。
主人公が所属するボランティアクラブには、幼なじみの2人、親友、先輩がいて、みんなで楽しいクラブ活動をしていた。
でも・・・それぞれに不幸は襲いかかる。
いたずらエッチ・・・仲良しの関係から一歩はみ出した関係・・・でも恋人じゃない・・・
そんな関係がいたずらっぽいエッチシーンを生み出していく。
ヒロイン以外の登場人物もみんな「ちびっこ」の、甘く切なく懐かしい感覚を思い出すストーリー。

<感想>

みそおでん&苦魔鬼轟丸コンビというと、今は同人サークル「私立さくらんぼ小学校」で毎年のように炉利ゲーを出しているので、炉利好きなら多くの人が知っているように思います。
私が最初に知ったのは、2000年発売の『Close 2U』でした。
厳密には『Close 2U』は1998年に同人ゲームとして発売されて、そのリメイク版が2000年に商業作品として発売されたようです。
私は同人版の方は知らなかったのですが、2000年の商業版が出たことにより、小学生が攻略対象の炉利ゲーで、しかもストーリーも楽しめる作品があると話題になりました。
それで、その噂を聞いて知ったという感じでしたね。

本作も『Close 2U』と同じ路線の作品であり、登場人物が小学生のジュブナイルもので、鬱ゲーとも言えるシリアスな内容になっています。
鬱となる不幸は突然降りかかってきたものもあるけれど、小学生に十分生じうる範囲のものですし、その問題に対して子供らの目線で解決していきますので、ストーリー全体としては良かったように思います。

まぁ、やっていることは『Close 2U』と大きな違いはないので、その分だけインパクトは劣るのですけどね。
それでもジュブナイルというか、少年少女目線での作品というのは、アダルトゲームの中では今でも非常に少ないです。
そのため、ストーリーだけならば、本作も名作扱いしても良いのかもしれません。

それと衝撃度という点では『Close 2U』の方が上なのですが、『Close 2U』の場合はシステム面が非常に悪くて、長所を全て殺してしまうような作品でもありました。
本作は若干インパクトが落ちたとしても、システム面は大幅に改善されましたので、総合的な面白さという観点からは本作の方が上回っているのでしょう。

ある意味特徴的なのはグラフィックで、複数のキャラが登場する場合、一人は立ち絵なのだけれど、他のキャラは首より上の顔だけが背景の上にポンと出てきます。
慣れれば問題ないのだけれど、何かやっぱり違和感があって、フェイスウインドウってのは意味があったんだなと、つくづく実感したものでした。

原画に関しては、作品が作品なので、炉利好きの方が楽しめるというか、むしろ炉利しか楽しめないのでしょう。
私は炉利も好きなのだけれど、そして最近の私立さくらんぼ小学校作品の絵は良いと思うものの、この頃の絵はお世辞にも上手いとは思えず、ちょっと楽しめなかったですかね。

<評価>

こういう作品は本当に少ないのでね。
私立さくらんぼ小学校としては今でも作品を作り続けているけれど、エロ目的の炉利作品とか少し方向性が変わってしまい、少年少女目線でのジュブナイルというのは、完結した作品としては本作が最後のように思いますし。
まぁまだ未完の『少女と世界とお菓子の剣』が完結さえすれば、ブランド代表作となるだけでなく、凄い名作になりうる可能性も秘めていますが。
とりあえずインパクトが薄れたということで本作は良作としていましたが、この手の路線で名作と呼べる作品に巡りあうまで、その後10年以上かかりましたからね。
いや、それでも巡りあえたから良いけれど、そうでなかったら本作を再評価して名作扱いに変更していたかもしれません。
良くも悪くも同人臭い作品で、足りない部分もいろいろあるのだけれど、貴重な作品であることは確かでしょうね。

それにしても、同人から商業へと進むブランドは多いけれど、その逆でずっと継続しているのは珍しいですよね。
結局商業作品としては本作が最後で、同じ2002年末からは私立さくらんぼ小学校名義で同人作品を出していますが、他所の同人ゲーが何年かに1本しか出ないのに対し、ここは10年以上毎年ゲームを出し続けていますから。
出てくるキャラがどれも小学生であることや、ここが作ろうとしている作品の規模などを考慮すると、同人の方が合っているのでしょうね。
でも同人ではあるけれど、ある意味下手な商業よりもプロ根性があるって感じですね。

本作は商業のフルプライスとしては少し安めだったのですが、その後の同人作品とかも見てて思ったことがありまして。
元々アダルトゲームの値段ってバラバラで、80年代には3000円くらいから、上は25000円なんてのもあったわけでして。
書籍なんかにしても値段はバラバラですし、作品の規模や内容に応じて価格が違っていて当然なんですよね。
しかし商業アダルトゲームは、いつの間にか皆同じような値段になり、そのため値段に見合わない規模の作品であるとか、値段に合わせようと無理やり水増ししたような作品が増えました。
その作品ごとに見合った値段を付ける同人の方がある意味健全であり、しかもコスパが優秀なのは何とも皮肉な話ですよね。

まぁ同人の中には明らかに酷いのもあるけれど、ここのように商業も経験しつつ、より輝ける場所を求めて商業から同人に戻ったケースもあるわけで、同人を軽く見ているような人で炉利好きならば、一度ここの作品をやってみると新たな道が開けるかもしれませんね。

ランク:B(良作)

たんぽぽ CD

Last Updated on 2025-04-20 by katan

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