NIKE (ナイキ)

1991

『NIKE (ナイキ)』は1991年にPC98用として、カクテルソフトから発売されました。

90年代前半を代表するストーリー重視ADVでありつつ、絵やゲーム性など全ての面で優れた作品でしたね。

<概要>

カクテルソフトが91年に発売したストーリー重視のADVであり、ゲームジャンルとしては、コマンド選択式ADVのアレンジ版になります。

ストーリーは宇宙を舞台としているという点からはSFものでもあるのですが、宇宙を舞台にレースを繰り広げつつ、そこに皇女誘拐事件というサスペンス要素を加えたものでした。
そのため、レース+サスペンスと捉えた方が分かりやすいでしょう。

<感想>

たまに92年の某ゲームからシナリオ重視になったとか、96年の某ゲームからシナリオ重視になったとか、そんな意見を見ることがあります。

じゃあ、それらの作品が発売されるまでにアダルトゲームに名作はなかったのか?
ストーリーの優れた作品はなかったとでも言うのか?
そういうことは、『NIKE』をプレイしてから言ってみろと。
古くからゲームをやってきた人には、そう思ってる人も少なからずいるのではないでしょうか。

ストーリー重視のADVとして、『NIKE』は間違いなく傑作と言えると思います。
しかしながら、どうにもこの時期というのは穴になっているようでして。
80年代に関しては熱狂的な懐ゲーファンが熱く語ってくれたりして、私がどうこう言うまでもないじゃんって感じすらします。
PC88のゲームに関してもそれなりに多いですしね。
そのため、アダルトゲーム初期の名作として『カオスエンジェルズ』や『リップスティックアドベンチャー』等の情報を得ることは難しくありません。
しかし、PC98の初期、それこそ『同級生』以前に関しては、『ランス3』のような続編ものに関しては別であるものの、それ以外に関してはほとんど情報を得ることができません。
まぁ、本作に関しては、タイトルがナイキなので、検索で辿り着くにも苦労しそうだという事情はありますけどね。
そもそもどんなゲームがあるかも分からないのですから、当然その中で面白いものがあったか否かは更に分かりにくくなるのです。
そのために、どうしても手薄になりがちなんですね。
でも、単にネット上で語られていないだけであって、優れたゲームはいくつもあり、本作もまたその中の1本と言えるのでしょう。

<ストーリー>

さて、上述のように『NIKE』の最大の特徴は、何と言ってもストーリーにあります。

商品紹介によると、以下の様になります。
AD2526、超高速宇宙船の星間レースに挑むパイロット、「ナイキ」の活躍を描いたスペースロマン。
主人公のナイキは、星間レースに出場するパイロットであり、ストーリーも、この星間レースを主として進行することになります。

私は、アニメの『サイバーフォーミュラ』のようなレースものって好きだったんですよね。
そのため、こういう手に汗握るレースものってだけでワクワクしてきます。
『サイバーフォーミュラ』好きなら、きっとわかってもらえると思うんだけどな~

しかもこのゲームは、単なるレース物でもありません。
ナイキの想い人である「皇女アテナ」が誘拐されていて、レースをしつつも、その誘拐事件を極秘裏に解決しなければならないのです。

事件を解決し、アテナと無事再会したナイキを待ち構えていたものは・・・
ラストの予想外の展開は、驚かされるとともに非常に美しく感じたものですよ。

<キャラ>

また、ストーリーだけでなく、本作はキャラも良かったですね。
主人公のナイキ、パートナーの美歩鈴(みぽりんと読みます)、宇宙船に搭載されたコンピューターの「SDC」。
この3者のかけあいが凄く楽しくてね、全く飽きさせませんでした。
まぁ、ナイキにみぽりんってネーミングセンスだけがアレでしたが・・・

憧れの人(アテナ)と、身近にいて自分の事を一番分かってくれている人(美歩鈴)、そのどちらを選ぶかは永遠のテーマとも言えるでしょう。
ドラクエ5のフローラとビアンカみたいにね。
本作の場合も、主人公の想い人は皇女のアテナなのですが、でも、ずっとゲーム中一緒にいるのは美歩鈴なんですよね。
そして美歩鈴が非常に魅力的であるが故に、プレイヤーの愛着も美歩鈴に偏っていきます。

でも、このゲームはマルチエンドではありません。
結局、ナイキはアテナを選ぶことになります。
いや、選ぶというか、美歩鈴が引いてしまうのです。
今だったらマルチエンドで美歩鈴ルートが用意されるのでしょうが、それがないだけにラストの美歩鈴はちょっと可哀相でしたね。
まぁ、マルチエンドでないからこそ伝わってくる辛さということで、これも本作における一つの魅力なのでしょう。
だからこそ、プレイヤーはいつまでも、美歩鈴を忘れられないのですよ。

粗探しのように不満点を挙げるのであればその点になるのと、あとは終わり方が若干唐突だったのかなと。
もう少し何かフォローして欲しかった気もしますね。
ほぼ全ての項目で褒めてるわりに評価でAAに達しなかったのは、その部分が大きいからですし。

リメイクしてくんないかな~
あ、でも自分はキャラに文句はないけれど、今発売したらかなりの確率で叩かれそうですね。
何せ美歩鈴は元海賊の性奴隷だし、アテナとの本番はないし・・・
せちがらい世の中になったものです。

<グラフィック>

グラフィックは、原画はしかとみよさん。
とっても可愛いキャラばっかりでしたね。
それと、本作はF&C(当時のアイデス)の初の400ライン作品です。
そのため、とっても綺麗でした。
ちなみに、後から発売された『コズミック・サイコ』は200ラインでした。

サウンドもゲームにマッチしてました。

<ゲームデザイン>

ゲームシステムは、一応コマンド選択式のADVになります。
一応というのは、本作の場合、「見る」「聞く」といった汎用コマンドはなく、状況に応じた選択肢が表示されるからです。
そのため、画面を見た限りだとノベルゲーとの違いがなく、区別できないと思います。

まぁ、個別ルートがないだけで、感覚的には今のノベルタイプのADVに近いのかな。
未プレイの人には、コマンド選択式とノベルの中間的、或いは複合的な形態と考えてもらうと良いと思います。

なお、そのコマンドも、回数制限があるので総当りは不可能でした。
また、レースものという事もあり、選んだコマンドによってはゲームオーバーも多いです。
プレイ時のセーブには要注意でしょうね。

本作は、コマンド選択式にありがちな何度も繰り返させるという煩わしさが少なく、基本的にテンポ良くサクサク進みつつも、ちゃんと考えないとゲームオーバーもありえますし、コマンド選択に応じた返答も楽しかったですからね。
ゲーム部分に関しては、コマンド選択式の中でも総じて良く出来ていたかと思います。

<評価>

総じてどの項目でも秀逸な作品でした。
したがって、総合でも傑作といえるでしょう。

今では手にする機会は少ないでしょうが、アイデスを代表する作品の一つでもあり、ぜひともやってもらいたい作品の一本ですね。

ランク:AA-(傑作)


PC-9801 5インチソフトナイキ

Last Updated on 2024-09-15 by katan

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