『ピュア×コネクト』は2015年にWIN用として、SMEEから発売されました。
いつも通りの安定した内容を有しつつも、そこから更に一歩進んだイチャラブゲーでしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・男なら当然彼女は欲しい。ドキドキしたい。
昔から人一倍『恋』というものに憧れていた俺は、今の漠然と時間を浪費するだけのつまらない毎日に飽き飽きしていた。
“ 俺だってエロゲみたいな恋がしてみたい”
そう言うと周りは現実を見ろだとか、俺の頭がおかしいと馬鹿にする。
だがそれが男の本音だろ?そこに憧れるのは悪い事なのか!?
相も変わらずそんな疑問を抱える俺に、この冬ちょっとした転機が訪れる。
『あなた、私の店でバイトしてみる気ない?』
そこは大通りを一本中へ入った場所にある、女性に人気の一軒のベーカリーレストラン。
それまで自分とは無縁の世界だと思っていた場所に身を置くことで、俺は今の日常から脱却してみようと考えた。
11月の中旬、ひょんなことから新しいバイト先で仕事を始めた俺は、ついに待ちに待った自分の恋と向き合うことになった。
<感想>
SMEEの作品なので過去作を知っている人には言うまでもないのだけれど、本作は恋愛ゲーの中でも、いわゆるイチャラブゲーになります。
イチャラブゲーはヒロインとのイチャイチャが全てであり、ヒロインを好きになれるのかという主観的な部分が大きな割合を占めます。
だから誰かが絶賛していても、自分がヒロインを好きになれなければ、粗の方が目に入りやすく、あまり楽しめないと批判的になりやすいし、逆に他人がどれだけ批判的に述べていたとしても、自分がヒロインを好きになれれば楽しめてしまうジャンルでもあります。
したがって、主観に依存する割合の高いジャンルであることは否定しないものの、俺は好きだとか嫌いだって話だけで終わってしまうのは、何だか味気ないよなとも思うわけでして。
まぁ普通は、このキャラが好きとかって話を中心に書くかもしれないけれど、その辺は他所にまかせておけば良いかなって気もしますし。
それよりもイチャラブゲーがあまり好きでない人やプレイしない人の場合、イチャラブゲーって結局は好みの問題でしかなく、どれも同じだろって思う人も多いんじゃないかなって考えますので、本作が並のイチャラブゲーと如何に違うのかについて少し触れてみたいなと思います。
そもそも、恋愛ゲーなんてものは、探せば80年代からあるわけでして。
まぁ80年代の場合はナンパゲー色が強かったので、恋愛ゲーと言い切れるか微妙な作品も多かったのですが、それでも遅くとも90年代前半には個人的に感動した恋愛ゲーとかありますし。
だから少なくとも恋愛ゲーも20年以上の歴史があるわけで、恋愛ゲーの名作も過去に幾つも存在します。
過去の名作にハマった人が後発の作品に二番煎じ・マンネリと評し、新規に入って来た人がそれに対し懐古だの思い出補正だのと反論するけれど、個人的に思うのは、同じ土俵に立った時点で駄目なんですよ。
同じ土俵の上に立つから比較してしまうのであって、比較させず過去作を切り捨ててしまうためには、同じ土俵の上に立たなければ良いのです。
確かに時代性を感じさせない作品は普遍性を感じさせ、何年経っても通じるように錯覚しそうになるのだけれど、時代背景を反映していない作品はその段階で、発売時のユーザーの意思・本質に応えていないのでしょう。
過去にも名作はあったかもしれないけれど、でもその恋愛ゲーは今の恋愛事情に合わなくなっているでしょと、現代的な要素を作品内に取り込むことで、過去の作品では対応できない部分を強調し、過去の作品を土俵の上に立たせないようにしてしまえば良いのです。
まぁ作っているのは携帯もなかったころに青春を過ごしたオッサンで、プレイするのも過去を懐かしむオッサンしかいないのであれば、現代性を感じさせるものなんか不要かもしれません。
しかし、もし若いユーザーを取り込みたいのであれば、現代的な要素や価値観をきちんと取り込まなければならないのでしょう。
その手段は無数にありえるのだけれど、簡単な方法の一つとしては、携帯などの身近なガジェットを作中に反映させることだと思います。
こういうことはこれまでにも何度も言ってきたのだけれど、いまいちハッキリしない作品がいまだにある中で、本作では作中で頻繁にメールのやり取りがあり、それが攻略にも反映されていますので、少しでも現代的な部分に対応させようとしています。
その点で現代的な要素をゲーム性に盛り込んでいないイチャラブゲーよりも、少なくとも上だと言えるのでしょう。
それと、今のアダルトゲームの大半はノベルゲーであり、それ自体を否定するつもりはないのだけれど、もっと工夫することはできるよねと何度も書いてきました。
読み進めたい人は読んでいるだけでもクリアできる、でも世界観やキャラに浸りたい人には寄り道要素も用意するべきであり、そうした遊び心が欠けているノベルゲーが多いのです。
特にイチャラブゲーはヒロインとの接触、コミュニケーションが大事であり、そのためにはプレイヤーが関与できる要素が多い方が良いと思うのですよ。
イチャラブゲーという言葉自体は90年代中盤にはなかったと思いますが、あくまでも言葉がなかっただけにすぎないのであり、同様に特定のヒロインとイチャイチャするゲームが流行った時期があって、私はそういう作品も好きだったんですよね。
でも最近のイチャラブのノベルゲーに不満を感じてしまうのは、ストーリー性が弱いとかそんな理由ではなくて、主人公(プレイヤー)とヒロインとの接触が少ないよなという理由なのです。
本作はノベルゲーなので、基本的には読み進めて、選択肢を選ぶだけでクリアできます。
もっとも、テキスト欄を消して立ち絵をマウスでクリックすると、ヒロインが音声で反応してくれるのです。
こういうヒロインとのスキンシップを図れる要素が欲しかったのであり、単なるノベルゲーに終わらなかった時点で、並のイチャラブゲーとは異なるのです。
つまり本作は、普段私が恋愛ゲーないしイチャラブゲーに言っていること、現代性の反映やプレイヤーの関与の増加につき、作品として一応の答えを用意していることになります。
また、こちらから告白するだけでなく相手から告白することにも対応しており、ジャンルごとの特殊性、即ち恋愛ゲーとしての特殊性にも対応しています。
だから作品の構造として、総論的な観点からは、私は文句の言いようがないのです。
ヒロインに対する好みなどの主観的な部分を除くならば、或いはヒロインに対する思い入れが同等であるならば、本作は他のイチャラブノベルゲーよりも確実に一段階上に存在しますし、構造的に高得点になるのも納得の作品なのです。
ただ、総論的には問題はないのだけれど、各論的な個々の要素の部分で不満は生じうるのでしょう。
例えば上記のメール要素であるとか、画面クリック要素にしても、導入はされているのだけれど、ちょっと作り込みが甘くて、まだまだ改善の余地があるのも確かなのでしょう。
またヒロインと恋愛に陥る過程なんかも、ちょっと雑な面がありまして、場面単位で良いイチャラブがあれば満足って人は気にならないでしょうが、何で好きになっていったのかとか全体の流れを重視する人の場合だと、もの足りなく感じてしまうかと思います。
総じて、ゲームシステム的にもストーリー的にも、大雑把というか粗い感じなんですよね。
だから部分的に、或いは細かいところにこだわりがある人ほど、いろいろ不満も生じてきやすいように思います。
また本作は服装が細かく変わったり、立ち絵などの変化も良いのですが、一部背景が前作から使い回されています。
この点に関し、舞台を共通にしていると思えば問題ないとか、キャラの描写が最優先であり背景の重要性は劣るから問題ないとも言えます。
個人的にも、特にマイナスになるとは思わないですけどね。
ただ、背景は直接にはヒロインの魅力を表現するものではないけれど、その作品だけの背景がヒロインと組み合わさることで、間接的に更にヒロインへの魅力を増し、思い入れを強めることもあります。
本作は、その点が少し弱くなることも否定はできないのであり、点数の上乗せができなかったというところなのでしょう。
<評価>
個人的には年上キャラ好きなので、志帆が好きなんですけどね。
でもまぁ、SMEEはイチャラブ系で定評があるブランドですし、他のキャラでも自分の好みのキャラがいれば満足できると思います。
そして仮に、ヒロインへの思い入れとかキャラの可愛さが、他の同系統の作品と同じだったとしても、本作が他の同系統の作品より一段上にあることは上述した通りです。
ちょっと内容的に粗い部分もあるので、総合では良作に留めておきますが、この方向性で煮詰めていけば凄く面白い作品が出てくる可能性もあるわけで、次回作にも期待が持てますね。
イチャラブをより効果的に表現するために、既存のノベルゲーは決して完成形ではなく、まだまだ改良の余地はあるのでしょう。
そして作品ごとにゲームデザインを変えて挑戦し続けているのがSMEEであり、イチャラブなんてどれも同じじゃんって思っている人にこそ、こういうブランドは知っていて欲しいと思いますね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-09-20 by katan
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