MISTY BLUE  (ミスティ・ブルー)

1990

『MISTY BLUE(ミスティ・ブルー)』は1990年にPC88用として、ENIXから発売されました。

80年代のADVをリードし続けてきたエニックスの集大成でしたね。

<はじめに>

「ふり返れば 思い出は いつも優しい」(プロローグより)

80年代の国内ADVを常にリードしてきたENIX。
「80年代のADVの歴史=ENIXのADVの歴史」と言っても、決して過言ではないでしょう。
それほどまでに、数々の名作を生み出してきました。

そんなエニックスのADVですが、PCの主流がPC-88からPC-98に移行するのと時を同じくして、作られなくなってしまいました。
紆余曲折のあった『ジーザス2』を除いて考えれば、90年に発売された『MISTY BLUE(ミスティブルー)』こそが、エニックスのPCにおけるADVの実質的なトリをかざる作品であり、ADV界をリードしてきたエニックス作品の正に集大成と呼べる作品ではないでしょうか。

<グラフィック>

さて、80年代後期のENIXのADVの素晴らしさの象徴は、グラフィックやサウンド、演出面にありました。
これは『ジーザス』以降の流れとも言えるでしょうか。

当時のPC88のゲームは8色で描かれていました。
フルカラーが当たり前な今では、信じられない話かもですけどね。
色数に限りがあるため、着色の変なゲームも当然ありました。
その点、ENIXのADVは職人技で実に上手く表現していましたね。
PC88末期の作品でもある『MISTY BLUE』は、これが本当に8色なのかと疑いたくなるくらい良く出来ていましたし。
8色の世界で芸術の域に達した感すらありました。

また、画面が綺麗なだけでなく、要所要所にアニメーションも入っており、PC88という制限された機種で本当によく作ったものです。

キャラデザは恩田尚之さん。
「Zガンダム」の原画の人なんで、当時のプレイヤーには話題性の面でも十分でしたね。

<サウンド・OP>

一方のサウンドは古代さんが担当しています。
言うまでもなく、ファルコムの古代さんです。
PC88の、いや80年代のゲーム音楽=古代さんってくらい、絶対的な存在でした。
そしてその優れたサウンドは、『MISTY BLUE』でもいかんなく発揮されています。
自信があったからこそ付属で音楽CDが付いていたのでしょうが、これもファン的にはポイントが高いですよね。

かように、演出面の突出していた『MISTY BLUE』。
その特徴はOPを見ただけでも伝わってくるのではないでしょうか。
このゲームのOPは、私にはとても衝撃的でした。
OPを見て鳥肌が立つほどに引き込まれた作品なんて、当時は初めてと呼べるくらいだったし、今でもそうはないですから。
もう何回見たか分からないほどです。
特にカウントダウンが0に至るあたりからは、本当に最高でしたね。
※ミスティブルーには98版も出ていますが、98版にはOPの数字のカウントダウンが無かったです。
それと88版はEDが2つありますが、98版は1つしかありませんでした。

探したら動画サイトにもOPがありましたが、どうやらサウンドモード2の方みたいです。
2の方が画面も派手で見栄えはするのですけどね。
1の方がシンプルだけどその分インパクトがあって、個人的には1の方が好きでした。
ちょっと見つからないので仕方ないですね。。。
それでも、やっぱり良い物は良いですから。

<ゲームデザイン>

かように演出面の優れた本作ですが、『MISTY BLUE』の魅力はそれだけではありません。

ゲームシステムにおいても一風変わっています。
そういう意味ではENIXのADVの集大成でありつつも、前年に発売された『バーニングポイント』のようなコマンド選択式の正統派とは異なり、変則的な作品とも言えるのでしょう。



当時の一応の分類としては、コマンド選択式ADVとなるのでしょうか。
確かに、ベースはコマンド選択式ADVなのでしょう。
ただ、このゲームは会話モードが大きな比重を占めます。
プレイ時間の大半は誰かとの会話に費やされます。

そして、その会話モードというのが、ノベルゲーみたいな選択肢が連続で出てくる形なんですね。
また、どの選択肢を選んだかで好感度が変化して、明確なキャラ別エンドこそないものの、多少の展開の違いが生じます。
ちなみに、好感度の増減は画面左のバーで確認できます。

この辺は何とも絶妙でしたね。
コマンド選択式と、ノベルゲーの選択肢式。
この両者の長所を上手く融合したような感覚でした。
古いゲームなはずなのに、むしろ今のゲームより斬新に感じてしまうあたりに驚きを隠せません。

ところで、この会話モードは更にもう一工夫がなされています。
画像では2人の会話になっていますが、展開に応じて人数は増減し、最大で4人が画面上に登場します。
ある内容につき、AとBの2人だけで話すこともできますし、A~Dの4人で話すこともできます。
つまり同じ話題であっても、誰と話をするかで組み合わせも最大7通りにまで増えます。
全パターンを試した人がいるかどうかは分かりませんが、いろいろ試すだけでも結構楽しめたものです。

また、この当時のADVはボリュームがネックでした。
本作も本編のボリューム自体は、それ程多くはありません。
しかし本作の場合、オマケモードとしてRPGが付属していました。
ENIXの作るRPGですからね、当然ぬかりはありません。
これがまた結構遊べて、お得感がありましたっけ。

<感想>

ここまで長所を述べてきました。
非常に多くの長所があるものです。
それに対してというか、これら長所の突出具合に比べると、ストーリー面はやや物足りないかもしれませんね。
いや、誤解のないよう言っていきますと十分に及第点以上ですよ。
あくまで他要素の突出具合と比べるとこぢんまりしてるかなってだけで。
10点ばかりの中で、ここだけ8点とか9点みたいな感じということです。

プレイ終了直後だったならば、上記の内容だけで終わっていたでしょうね。
しかし、何年か経って改めて振り返ると、また違った思いも生じてくるわけでして。

まず簡単にあらすじを説明しますと、本作は容疑者にされた主人公が、無実を証明するべく事件の真相を追うのがベースとなります。
そのため、一般的には推理ものの範疇に含まれるのでしょう。

でも実は、推理は主要素ではありません。
若者達の青臭いような恋愛、トレンディドラマの様な雰囲気こそが、この作品の本質なのでしょう。
恋愛をゲームで正面から扱ったって点では、先駆け的存在でもあったのではないでしょうか。

トレンディドラマの様なストーリーやディスコ等の舞台といい、何かすっごく80年代な感じなんですよね。
それを古臭いと感じるか、懐かしいと感じるかは人それぞれですが、時代を感じさせてくれる作品って点は間違いありません。
そして今は、その時代らしさを感じさせてくれる点もまた個性であり、魅力の一つと言えるのではないかと思うのです。

それと、当時は人間の内面であるとか、心理描写に重点を置いた作品は皆無に近い状況でした。
その中で、その点に重点を置いた本作は非常に珍しかったです。
本作では女性ライターの感性が如何なく発揮されていることから、それが男性プレイヤーの中には合わない場合もありえますが、少なくとも今までにない価値観の導入により、新鮮さやインパクトを与えてくれたことも確かなのでしょう。
そういう意味では、ストーリーにも十分に意義があるように思います。

ところで、本作には、エロの実用性を目的としたシーンはありません。
当時は18禁の概念はなかったのだけれど、仮にあったとして、18禁になっていたかは微妙でしょう。

しかし、出てくる女性との間にはベッドシーンもありますし、
オマケをクリアすると、ヒロインのヌードポスターもあります。
また、エロい意味での18歳以上向けという意味ではなく、子供向けの内容でないという意味で、対象年齢は18歳以上と言っても良いのかなと思いますし、また、好感度システムや心理描写を重視した展開など、今のアダルトゲームに通じるものが多いことから、アダルトゲーム的な観点からも重要な作品だと思います。

<評価>

書き出すと他にもいろいろあるのでしょうが、ほぼ全ての面で、ADV史的に意義のある作品ですからね。
総合でも文句なしに名作といえるでしょう。

本作はエニックスのADVの集大成であるだけでなく、様々な点で80年代のADVの集大成と呼べる作品だったのではないでしょうか。
また、上記のとおり本作には98版もあるのですが、98版では削られた要素もありますので、88版の方が出来が良いです。
そういう意味からも、PC88のADVの集大成といえるように思いますね。

ランク:AAA-(傑作)


PC-8801SRソフトMISTY BLUE

Last Updated on 2025-03-24 by katan

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