『百鬼 ~淫黙された廃墟~』は2002年にWIN用として、エルフから発売されました。
パッと見の印象が昔のエルフ作品っぽかったので期待したのですが、やっぱり蛭田さんがいないと駄目なんでしょうね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
概要・・・
かつて、活気に溢れていた島「応化島」……。
周囲1キロちょっとの島だが、石炭を産出することで栄え、全盛期には10階建てクラスの建物が建ち並び、東京を凌ぐほどの人口密度を誇っていた。
公園や神社、学校や病院まで備えており、規模は小さいながらも、「応化島」は立派な街。
しかし、エネルギーの主力が石炭から石油へ移ったことにより、島の炭坑が閉山。
この島には石炭以外に産業がないため、その後3ヶ月あまりで住民は居なくなってしまう。
建ち並んでいた建物も今となっては廃墟……。封印されたひとつの時代……
記憶すら風化した廃墟の島「応化島」を舞台に繰り広げられるストーリー。
喜び、怒り、哀しみ、そして永遠の愛………ドラマに隠された驚愕の真実とは!?
各ルートによってシステムが変化し、選択肢を選んで分岐するマルチシナリオと、複数の短編小説で構成されたコラボレイトアドベンチャーです。
廃墟と化した応化島で繰り広げられるルート別のシナリオ……
本格派ミステリーの中にも、謎解きあり、純愛あり、そして淫靡で濃厚なHシーンも存在します。
時には自ら情報やアイテムを探し出し、隠された謎に迫っていく……。
臨場感溢れる様々な演出とともに、このストーリーを全てお楽しみいただいた時、初めてわかる真実をあなたの目で確かめてください。
<グラフィック>
もともとエルフの塗りは非常に良かったのだけれど、本作でもそれなりに良かったですね。
また、口パクなども導入し丁寧に仕上げています。
他方で、キャラデザは地味ですし、背景の色と相まって全体的に地味な印象が一層強まっています。
あとは、どこを重視するかで印象がかわってくるのでしょう。
萌えとかキャラを重視すると、どうしても弱く感じてしまうかもしれません。
もっとも、本作は軍艦島をモチーフにしていますので、軍艦島探検を疑似的に堪能するという目的であれば、全般的にグラフィックは満足できるのかなと。
なお、この時期のエルフは3Dに凝っていて、本作でも3Dムービーが幾つもあります。
ここもグラフィックによる雰囲気を重視する人にはプラスに作用するでしょう。
個人的には、本作のムービーに関しては、ゲーム進行の邪魔になるので要らなかったかなと思います。
<感想>
ストーリーは、応化ルート、ミステリールート、言霊ルート、百鬼ルートに分かれます。
応化ルートではヒロインとの純愛が中心であり、ミステリールートでは謎解き、言霊ルートはエロ補完用、そして最後のまとめが百鬼ルートになります。
島の中には15の物語が散りばめられており、これを回収しながら真相に近付いていくっていうのが、大雑把な流れとなるでしょうか。
本作は、設定だけみると探索ものに向いているのですが、基本はミステリーですし、ルートによっては恋愛中心ですし、それでいてラストは感動系で終わりますからね。
どれもそれなりに仕上げるのは流石エルフといったところですが、それぞれにおいて他の優れた作品と比べるともの足りないわけで、しかも全体的な方向性も上手く示せていないことから、どうにも中途半端であり、印象の薄い作品になってしまうわけでして。
いろんな要素が組み合わさることがエルフ作品の魅力だったし、過去作では、それらが混ざり合うことで化学反応的に更なる良さを生み出していたものです。
しかし、確かに本作にも様々な要素があるものの、それらをルートごとに分断することにより、複数の要素の組み合わせによる相乗効果が無くなってしまいました。
また、15の物語など部分的には良いところもあるものの、分断された異なる方向性がつぎはぎにされたことで、一つ一つが薄味になってしまったのです。
<ゲームデザイン>
本作は、基本はノベルゲーであるものの、Hシーンでは画面クリック方式になります。
これ、逆の方が良かったと思います。
エルフの代表作に『遺作』がありますが、本作を見て『遺作』のような作品を期待した人も多かったです。
廃墟を探索するわけですからね、あちこちクリックするシステムと相性が良いはずなのですよ。
他方でエロシーンは、テンポ良く進めたいです。
私はADVとして画面クリック中心のゲームは好きだけど、Hシーンでの画面クリックには昔から疑問があり、本作でも抵抗を感じてしまいました。
バックアップツリーもYU-NOのADMSの簡易版みたいなもので、便利なんですけどね。
YU-NOみたいにストーリーと密接な関係にあるわけでもないし、新たに何か発展したわけでもないので、多少のプラスにはなっても、それほど大きなプラスでもないのかなと。
<評価>
蛭田さんが抜けても、元が一流ブランドですからね。
個々の部分に関しては優れた点もあります。
しかし、やっぱりトップが抜けたからなのでしょうか、何が作りたくて、そのためにどこにどんなシステムを入れるかという、総合的なゲームデザインに欠けた作品でもありました。
総合的にも、純粋な質だけであれば佳作相当かとも思いつつも、あえてプレイすることもなかったかなということで、凡作とします。
なお、軍艦島が好きで憧れとかがある人であれば、本作が軍艦島をモチーフにしていることから、もう少し楽しめるのかなと思います。
個人的には、軍艦島には何となく憧れはあったのですが、実際に行ってみて、そういう憧れフィルターみたいなのがなくなってしまいました。
それと、エルフの過去作に対し、同じ様な品質の作品なら今もあるみたいな言い回しを見ることもありますが、それって根本的に筋違いなんですよね。
エルフ作品の名作というのは、単に品質が高いだけでなく、ADVなどの新しい方向性を切り開いてきた挑戦作でもあったのです。
私はエルフがなければ、90年代のADVの発展はなかったと考えていますし。
だから新しい挑戦があって初めて、エルフの過去の名作に並べるわけです。
本作は他社の作品ではなく、エルフの作品です。
そしてエルフの過去作の良い点を随所に取り入れていますが、あくまでも模倣にすぎず、新たな挑戦という点はなかったです。
本作や河原崎家の一族2をプレイすることで、エルフによるADVの発展という時代は終わったのだなと痛感したものです。
Last Updated on 2025-04-01 by katan
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