『とある人妻のネトラレ事情』は2013年にWIN用として、くちなわから発売されました。
これこそ現代の寝取らせ(NTS)・寝取り(NTL)ゲーと言えるのでしょう。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
商品紹介は以下の通り。
「とある人妻」が「夫の思惑に気付かず」背徳に苛まれながらも上司にネトラレ、徐々に不倫へと流されていく作品。
40日近い日程が進行します。
そして序盤のあるシーンから、ヒロインの携帯に潜ませた不正アプリによって、メールを盗み読むシステムが起動可能に。
本編で語られていない経緯や、夫に隠れて撮影した画像も参照可能。
基本的にヒロイン視点ですが、流されていく様をゆるぅりと覗き眺めるゲームです。
比較的、コアなエロシーンは有りません。
<感想>
タイトルにネトラレ事情とありますし、商品紹介でも部分的には寝取られっぽく書かれてあるのですが、いわゆる寝取られゲーとは異なるのでしょう。
したがって、プレイ前に持った先入観から離れられない人や、「典型的な寝取られゲー」の枠に無理やり押し込めて判断するような人だと、楽しみ方を見誤ってしまうのでしょう。
まぁ、きちんと内容を読める人なら、すぐにどういう作品か理解できるでしょうし問題ないとも思えますが、それでも「寝取られ」と思いこんで購入すると、思っていたのと違っていたとなる可能性はありますからね。
事前に勝手に予想してそれとずれるのが嫌な人は、若干注意すべきなのかなと。
本作は人妻・旦那・間男の視点が交互に描かれますので、見方によっては「寝取られ」でもあり、「寝取り」でもあります。
後述するようにシステムとの関係からも、作品としてはまずこの旦那の視点が中心になってきます。
とすると、寝取られゲーなのかと思いがちですが、この旦那は単に寝取られるためだけの存在ではありません。
むしろ逆に妻と円滑に離婚するために、間男と人妻が関係を持つよう仕向けるわけでして。
つまり本作は、基本的に「寝取らせ」であり、寝取られではなく「寝取らせゲー」と理解した方が、勘違いせずに素直に楽しめるように思います。
まぁ、旦那の浮気相手が更に間男になびいてしまう展開もありますので、それは展開としては「寝取られ」なのですけどね。
だから寝取られが全くないわけでもないので、一応寝取られゲーの範囲には含まれるのでしょう。
しかし、あくまでもサブヒロインによる1ルート程度のものなので、決して寝取られ特化の作品ではないし、やっぱり寝取られはオマケ程度に考えた方が良いのでしょう。
つまり寝取らせゲーの中に、一部寝取られルートがあるということですね。
また本作は、ヒロインの人妻視点も大きな割合を占めています、
最初は襲われたものの、次第に間男に気持ちが向かっていくわけで、その彼女の浮気、心の移り変わりを楽しむゲームでもあるのでしょう。
Hシーンにおけるシチュ的には特に奇抜なこともしていないものの、本作では「メール」が存分に活かされており、表だけの顔でなく、メールのやりとりを通じた関係の変化も巧みに表現され、自然と楽しむことができました。
90年代までの寝取られなら、言葉と心理描写だけで足りるのでしょうけどね。
今世紀に入ってから、もうとっくに10年以上経っているのですよ。
つまり、これはNTR・NTL・NTS全部含めた広い意味での寝取られ系というか、面倒なのでここでは纏めてNTR関連作品と表現しておきますが、そういうNTR関連作品作品全般に言える話なのですけどね。
近年は確かにNTR関連作品は多数発売されているものの、一体いつの時代の話なんだよと思ってしまう物も非常に多いです。
これだけ携帯だスマホだと普及発展し、巷ではありふれたものになり、浮気を行うための必須アイテムにもなっているのに、ゲームでは「有効」活用されることがほとんどないですからね。
だからどのNTR関係のゲームをやっても、それこそ昭和か何かのような時代設定の不自然さを感じてしまうのです。
ライターもユーザーも昭和時代に青春を過ごした人しかいないのでしょうか?
そう思いたくなるくらいに、時代錯誤な設定ばかりなんですよね。
まぁ古い時代を舞台にした物語を否定するつもりはないし、そういう物語があっても良いとは思いますが、そういう古臭い物語「しか」ないってのは、どうなんだろう?ってことです。
現代なら現代の浮気ゲーとしての在りようが、もっともっと早く登場しても良かったと思うのですよ。
本作はその点の不満を解消してくれただけでも意義がありますし、やっと出てきたかと思うと共に、他の同系統の作品より一歩先んじて見えるのです。
他方で、上記の様に旦那は「寝取らせ」をしているのですが、その経過をメールを盗み読むという行為で知ることができますので、従来の寝取らせモノよりも能動的かつ自然に感じられました。
指をくわえて待っている寝取られとは異なり、寝取らせって積極的に行動するわけですからね。
システム的にも能動的な方が上手くマッチしますし、感情移入もしやすいのですよ。
しかし従来はノベルゲーで読むだけというのばかりだったためか、どうしてもシステム的に受動的になってしまい、寝取らせるという行動とのミスマッチや違和感が生まれてしまっていただけに、後述する本作のシステムにより、ようやくその違和感が解消されたものです。
<ゲームデザイン>
上記のように、基本的にはノベル系のADVになります。
本作が秀逸なのは、「DEBAGAME」というシステムです。
これはTABキーを押すことで、旦那がいつでもヒロインのメールを覗きみることが出来るというものです。
まぁこれは凡人に全く考え付かないような類のものではなく、コロンブスの卵的な、ほんのちょっとしたアイデアだけなんですけどね。
それでもこの手のジャンルには、非常に効果的に作用しているように思います。
寝取らせという観点で見た場合、どうもこのジャンルがいまいちエロゲで浸透しないことの理由の1つとして、旦那が単に黙認していたというような情報だけがあり、ゲームの進行にあまり積極的に関与してこなかったからだと思っています。
寝取らせとしての独自の意義が、ほとんど存在しないわけですね。
だから結局、これまでのほとんどのゲームにおいて、能動的に動く者の視点から寝取られか寝取りかに分類できてしまうと。
そして寝取られか寝取りかに簡単に分類できてしまうから、あえて寝取らせとして語るまでもないとなりかねないのです。
しかし本作では、旦那が随時浮気をチェックし、時には直接介入することにより、物語において中心となったことで、寝取らせという行為をはっきりと印象付けることに成功しました。
NTRでもNTLでもないNTS(寝取らせ)ゲーとして、ようやく新たな方向性を明確に打ち出したとも言えるのでしょう。
単純に読むだけでなく、たとえノベルゲーというジャンルであっても、その題材に即した必要なシステムの導入はなされて然るべきです。
大半のノベルゲーがそれを出来ていないという現状にあっては、単純だとしても「随時」メールを覗き見ることができるDEBAGAMEシステムは、高く評価されて然るべきでしょう。
<評価>
基本的には、浮気に溺れていく人妻を丁寧に描いた作品。
そこに浮気にとって現代では必需品とも言えるものを、ゲームシステムとして上手く融合させ、まだジャンルとして確立しきっていない寝取らせゲーの側面にも新しい風を入れたということで、好みを抜きにしても高く評価せざるを得ない作品でした。
NTRとか自分の好きな尺度でしか測れない人、同じことの繰り返しでも何ら不満を感じない人、あるいはシナリオしか興味がありませんという人なら、他の作品でも構わないのでしょう。
しかし、心理描写が丁寧かだけを求め続けるのは、作る方も読む方もいいかげん飽きないかなと思うわけでして。
もうそろそろ、一つ先のステージに進んでも良いのではないでしょうか。
個人的には久しぶりに新鮮さを感じることができると共に、素晴らしいと思える作品でした。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-11-05 by katan
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