『ママトト -a record of war-』は1999年にWIN用として、アリスソフトから発売されました。
私はアリスソフトのゲームが好きですが、純粋にゲーム部分だけで一番楽しめたのはこれかもしれません。
とにかくアイデアが一杯詰まっているって感じのゲームでした。
<概要>
時代は戦いに染まっている。国々の亡き後に残るのは、移動要塞を用い戦闘を続ける国家の数々。
絶対強者なき無限地獄色。ママトトという、小型の移動要塞1基の郷土を持たない国がある。
国王は豪腕無双の格闘家カカロ。召喚魔法まで行使する闘う王だ。
独眼の氷龍と怖れられる将軍に率いられ、少数精鋭の武将達はそつなく動き戦果をあげる。
要塞の優れた性能に任せて大陸中を駆け回り、存在を世間に知らしめた。
しかし数多くの戦いを繰り返した結果、国土を持たないママトトは力を弱めた。
現在は国民の数も数十人。一般兵力は0に等しい。
窮地を救ったのは、カカロの息子で現ママトトの将軍を務める少年、ナナス。
ここ数年は、要塞の移動力に頼って逃げ回る事が多かったが、滅亡を逃れているのは、そのナナスの知略に頼るところが大きい。
今では、18歳にして知謀ぶりを大陸中に知らしめている。
本編は、ママトトが大陸南東に追い詰められた状況から始まる。
丁度その時、ナナスが趣味である魔法工学で魔法生物兵[キッズ]を誕生させる事に成功する。
土壇場で兵力増強の手段を手に入れたママトトは、心機一転、念願の大陸制覇に乗り出した。
<感想>
ゲームジャンルとしてはSRPG+ADVといったところでしょうか。
まずSRPG部分ですが、基本的に前衛戦と防衛戦の2段構えとなります。
前衛戦は武将1人と自分で生産したキッズと呼ばれる兵隊で戦います。
敵はこっちの本拠地を目指して突っ込んでくるので、これを食い止めることが目的となります。
敵が画面端に到達すると本拠地への侵入を許したことになり、この討ちもらした敵を防衛戦で掃討することになります。
この掃討戦は通常5人の武将を選んで戦うことになります。
武将のレベルを上げようと思ったら、わざと前衛戦を捨てて防衛戦だけで勝負する方法もあるでしょう。
逆に、低レベルクリアを目指す場合には、武将が1人しか出せない前衛戦での戦い方が鍵となります。
この2段構えというのが新鮮で、毎回プレイスタイルを変えて遊ぶことができました。
ただ、ここで1点だけ注意しておくことがあります。
通常のSRPGって、こちらが攻めることが圧倒的に多いですよね。
しかし『ママトト』は、上記のように防衛に重点が置かれています。
攻めと守りとでは戦術も当然変わってくるし、面白さも変わってきます
私はこの通常のSRPGとは異なる新鮮な感じに好印象を抱きましたが、基本的にSRPGって作る方も遊ぶ方も保守的なんですよね。
たまたまかもしれませんが、SRPGが好きだと言ってる人ほど、このジャンルはこう楽しむものみたいな決め付けが多い気がします。
例えば本作では、敵は1直線に突っ込んできます。
こちらが攻めるSRPGではありえないですよね。
SRPGに下手に慣れた人なんかは、何だこの馬鹿なCPUはって思ったり、おびき出して戦うという従来の楽しみ方がないことで失望する人もいます。
でもね、敵は本拠地を目指しているのであり、こっちの武将の掃討が目的ではないのです。
こっちの武将を無視して突っ込んでくるのは当たり前なんですね。
そして突っ込んでくるっていうと馬鹿そうですが、後半になると敵の数も膨大になっていきます。
そうなると、物量で押し切られちゃうわけでして。
敵を少しずつ誘き出して各個撃破みたいな悠長なことは出来ず、泥仕合のような乱戦モードになっていきます。
かように、必要な戦術も面白さも違うんですよね。
こういう要素は多々見られるので、自分の好きなSRPGの基準で考えちゃう人には向いてないかもしれせん。
逆に私のようにこういう雰囲気の作品は珍しいよなって、新鮮さを評価できる人にはとても楽しいシステムだと思いますけどね。
戦闘が終わると、今度は内政モードになります。
先に書いたキッズを生産する工場とかを作れるのですが、スペースには限りがあります。
個々の施設にはいろんな形のものがあるので、上手く配置しないと隙間だらけになってあまり施設を建造できません。
どう配置するべきか、計画性とパズル的思考が問われることになります。
あまり厳密に考えなくてもクリアは十分出来ますが、隙間だらけだと己の馬鹿っぷりを露呈した感じで負けた気がするんですよね。
妙に自尊心をくすぐられて、いかに上手く配置できるか必死に考えたものです。
もちろん、これらのシステムはただ新鮮なだけではなく、とても練られてバランスも非常に良かったです。
また、慣れない人用に序盤はチュートリアルも兼ねて、とても易しく初心者でも大丈夫なように配慮もされています。
それでいて、やりこみ用に強い敵も隠し要素として用意されているので、上級者も長く楽しめる作りになっていましたし。
本当に良く作りこまれていたかと思います。
これにADVパートが加わって、イベントが分岐していくわけですからね。
オリジナリティとクオリティの両面で、非常に優れていた作品だったんじゃないでしょうか。
そのシステム面のもう片方でもあるADVモードですが、これは好きな武将を選んで会いに行くものです。
ここでフラグを立てていくのですが、各ヒロインには主人公ナナスとの恋愛ルートと、父親カカロに犯られる陵辱ルートがあります。
このギャップが何ともたまりませんでしたね。
自分の行動次第で天国にも地獄にもなりうるって要素は、私がとても好む要素ですしね。
特にメインヒロインたるアーヴィの陵辱ルートは絶品でしたね。
アーヴィの2本挿しは、まさに名シーンでした。
こういうハッピーとバッドが楽しめる作品で、それに加えてゲーム性も高い作品ってまずないですからね。
本当に貴重なゲームでしたよ。
希少性で言えば、グラフィックにも触れざるを得ませんね。
インパクトの強いイベントCGと比べて、戦闘シーンのグラフィックは、一見すると貧相に見えてしまうかもしれません。
家庭用ゲーム機では3D戦闘とか派手なのが大半でしたしね。
もっとも、今でもドット絵の可愛らしいキャラの動きが好きな人はいます。
本作は、このドット絵の出来が非常に良かったんですよ。
温かみがあっていかにも職人芸風な感じがしてね、そういうのを求めてる人には満足出来たかと思います。
また、本作にはアリスCDというオマケも付属していました。
ミニゲームとかが収録されていて、これも結構楽しめました。
こういう試みは素直に評価したいですね。
シリーズ物でないだけに知る人も減ってきているでしょうが、間違いなくWIN時代以降のアリスを代表する1本と言えるでしょう。
アリスのSLGは、最近は極端に戦略物が増えています。
ただ、アリスのゲームをやった人なら分かると思いますが、アリスのSLGには縛りや制限といった要素が結構含まれています。
私はそういう縛りや制限という要素は、あまり戦略SLGには向いていないと思うのですよ。
戦略SLGは徹底的に自由にプレイさせた方が良いと思いますから。
こういう要素は、むしろ戦術SLGにこそ向いていると思います。
なまじ『鬼畜王ランス』という例外が出てしまったために、アリスもユーザーもそれに引きずられていっていますが、本質的にはアリスは戦術SLGの方が向いていると思うんですよね。
本作は貴重なアリスの戦術SLGでもあり、鬼畜王や大シリーズにはない別のアリスらしさが発揮されています。
それを踏まえれば、十分に今でも楽しめるのではないでしょうか。
たまには戦術系の大作も作って欲しいなと、本作を知っているだけにつくづくそう思いますね。
ランク:AA-(傑作)
Last Updated on 2025-01-09 by katan
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