神語 ~かんがたり~

2000

『神語 ~かんがたり~』は2000年にWIN用として、Euphony Productionから発売されました。

鬼畜系の代表作として、一時はプレミアもついた作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
物語はそろそろ秋も終わりに近づき、いよいよ寒さも本格的になってきたころに始まる。
いつも通り日常を過ごす主人公。だがしかし、主人公の気づかないうちに何かが起きていた。
発端は学院の生徒の一人が、魂の抜け殻のようになって発見された事に始まる。
医師にも原因不明としか判断できず、心臓などの器官は正常に動きながら、一切の知的・反射的反応を示さないその様は、まさしく『抜け殻』というより他に無かった。
この出来事は、学院にちょっとした恐怖とほのかな興奮、そして大いなる好奇心を巻き起こした。
そんな出来事とは関係なく、主人公はいつものように適当に時を過ごし、天気のいい日の昼休みは屋上に寝転がり、興味の無い授業は寝て過ごした。
だがそんな主人公の元にも異変は訪れた。
以前から会えばケンカばかりの腐れ縁、『黒川龍也』の豹変であった。
それまで辛くも龍也に全戦全勝だった主人公は、ある日突然人間とは思えない『力』を手に入れた龍也に叩きのめされ、まったく手も足も出なかった。命の危険すら感じるほどだった。
主人公はこの時初めて自分に負け続けていた龍也の暗い執念を知り、その日から主人公の世界は変わり始めた。
日に日に『抜け殻』は増え続け、主人公も目の当たりにするようになり、そして主人公の気を許す教師である『新条巴』や『大石力也』の謎めいた行動。理事長や教頭の不審な動き。
事件に巻き込まれていくうち、主人公は理事長や教頭達の、愚かながらも危険な計画を知る。
その計画に龍也が利用されている事も……。
関われば危険な道。だがすでに片足を突っ込んでいた主人公は、仲間達と共に逃げずに立ち向かう。
その先に何があるかも知らずに……。

<感想>

まずおおまかな流れとしては伝奇ものになるのでしょうが、伝奇ものとしては普通に楽しめるってところだったと思います。
日本神話をモチーフにした物語は個人的に好みというのもありますが、それを抜きにしても十分に楽しめる内容でした。
とは言うものの、じゃあ名作と言えるほど光るものがあるかというと、そうでもないわけでして。
だから普通に楽しめるってのが、率直なところなんですね。

もっとも、この作品が話題になったのは、この伝奇部分が優れていたからではありません。
このゲームを作ったメンバーは、後に鬼畜ゲームの代表的ブランドとなった、「たっちー」のメンバーなんですよね。
たっちーブランドの処女作『最後に奏でる狂想曲』で有名になったので、その前の作品である本作は発売当初はマイナーな作品でした。

でも、作るメンバーが一緒なので、当然面影のようなものもありまして。
と言うのも、本作にはバッドな展開があるのですが、これがかなり鬼畜だったのです。
あまり言うとネタバレになっちゃうので避けますが、ヒロインの瞳から輝きが失われてしまう・・・と言えば何となく分かりますよね。
そういうシーンもあったことにより、瞬間的なインパクトでは当時最高クラスだったのです。

こういうのって絶対数が少ないので、それだけでも一部では喜ばれるでしょう。
属性がある人なら、この部分だけで元が取れますからね。
しかし本作がそれだけに留まらないのは、最初にも書いたように、伝奇ものとしても普通に楽しめるってところが大きいのです。

『最後に奏でる狂想曲』をはじめとするたっちー系の作品は、そのほとんどが鬼畜な内容を有しています。
特に絶叫系としては随一のブランドですしね。
だから虐待と絶叫だけを求めるならば、たっちー系の作品をプレイすれば満足できてしまいます。

しかしながら、それらの後のゲームは、実はストーリーとかゲーム全体ではあまり良い出来ではなかったのです。
絶叫も欲しいけどストーリーもしっかりしていて欲しいとか、いろんな要素を求めだすと後のたっちー系は物足りない場合が多いんですね。
これは何もたっちー系に限らないわけで、他所でも鬼畜・凌辱路線のゲームを作るところはありましたが、鬼畜・凌辱部分が優れているゲームでストーリー自体も楽しめるゲームって、かなり少ないのですよ。

そうなってくると鬼畜要素もしっかり楽しめるもので、なおかつストーリーも普通以上にに楽しめる作品というのは、本当に貴重な存在となってきます。
この貴重という部分は、従前と比べた場合よりも、むしろ後の時代へと効いてきます。
上で凌辱も楽しめつつストーリーも楽しめる作品は少ないと書きましたが、少ないだけで昔は皆無でもありませんでした。
昔は大手でも、普通に凌辱やエグイ要素を盛り込んでいましたから。
しかしゼロ年代に入る頃には状況が変わってきます。
いわゆるストーリー重視と呼ばれる作品の多くは、アダルト性を感じさせる要素をことごとく削るようになりました。
他方で凌辱系のゲームはただ犯るだけになり、
ストーリー性やキャラの描写が削がれるようになりました。
私はこの『神語』が、それほどずば抜けた作品とまでは思っていません。
しかし神語レベルで構わないと思いながら新作を探しても、中々このレベルでストーリーも鬼畜分も両立させた作品はないのです。

私は常々、ノベルゲーの内容面における多様性も、2000年に比べそれ以後は減少していっていると書いています。
その最たる理由はここら辺にあるわけで、鬼畜・凌辱部分もストーリーも楽しめるノベルゲーが、ゼロ年代前半に一体どれだけあったのかということです。
恋愛と鬼畜の両方がしっかりしていると、そのギャップを楽しむこともできます。
そういう作品も次第に減っていきますしね。
本作とは直接関係ないですが、オッサンが主人公のノンフィクション系のミステリーなんかも、今では存在しません。
ゼロ年代に入っていろんなストーリーが出てきたとの見解もありますが、それって恋愛ゲーの中でとかループゲーの中でとか、流行路線の中の狭い限られた範囲内でのバリエーションが増えただけでしょ。
一言で言えばラノベ方向に収束していったとなりますし。
そうでない、もっと広い視点での多様性は減ったとしか思えないわけで、増えたとの見解にはどうしても賛同できないのです。
増えたんなら私の中の渇きなどないはずで、飽きる以前にそもそも作品がないのですよ。

見方を変えれば、本作はゼロ年代以降失われていったジャンルの作品なわけです。
今はダウンロード版もあり安価で入手できるようになったものの、本作にはそれまでの間プレミアが付いていていました。
プレミアなんてのは大抵流通量が少ないからでもあるのですが、高いお金を出してまでも本作を購入しようとする人がいたのは、そういう理由もあったからだと言えるでしょう。

<評価>

ストーリーも楽しめる鬼畜作品ということで再評価し、総合でも名作とします。
本作については、鬼畜要素をどう捉えるかで印象がかわってくる作品でしょうね。
鬼畜要素や凌辱要素はいらないという人からすれば、本作を名作とまでは感じないでしょう。
他方で、ストーリーも楽しめつつ、そこに強烈なインパクトを残した点を評価するならば、十分楽しめるのではないでしょうか。

ランク:A-(名作)


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Last Updated on 2025-01-20 by katan

コメント

  1. SECRET: 0
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    BADEND後の主人公の狂乱ぶりが伝説となったゲームだった
    他にもいじめた奴が名乗り出ないならクラス全員殴ると暴れ出したり
    なるほど類似作品が思いつかない印象深い作品だったな

  2. SECRET: 0
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    こういう路線のゲームは好きなのですが、あまり出てきませんね。
    個人的にはとても残念です。

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