PALETTE

1998

『PALETTE』は1998年にWIN用として、フェアリーテールから発売されました。

「あなた好みの女の子をヒロインに決めてプレイできる」、という設定に興味を抱いた作品でした。

<概要>

フェアリーテールとしては、話題作で濃いファンを生んだ『Natual』の後であり、F&Cとして広くみるならば、カクテルの大人気作『With You』の後となったのが、この『PALETTE』でした。

話題作・人気作の後ということで当初の注目度は非常に高かったように思うものの、いまいちパッとしないグラフィックに、普通の恋愛ものという設定もあって、個人的には最初は関心が薄かったものです。

その関心の薄かった理由が後の巷での評判にもつながるように思うのですが、私個人に関しては、興味の薄さがフィルターになり、プレイするのが遅れてしまうという要因にもなった作品でもありました。

<ストーリー>

ユーザーが求めるもの、そして評価されやすいものというのは、時代によって変化するものです。
本作はごく自然な、日常の積み重ねを扱った作品です。
突然ファンタジーになったりSFになったり、或いはヒロインに降って湧いた不幸が生じるわけでもありません。
今だと、ファンタジーだのSFだの混ぜるなって意見を見かけることも多く、純粋に日常を扱った作品が好きという人も多いですし、むしろ多数派といえるでしょうか。

でも、一昔前は途中でファンタジーだのSFだのが混ざっても、ドラマチックな展開がなされることの方が好まれた時代もありました。
それをシナリオ重視などと言ったりもしたのでしょうが、そういうのが好きな人にとって本作のような作品は、盛り上がらない平凡な作品に見えてしまうのです。
路線的には、今の方がこういう作品はうけそうですし、そういう意味では出すのが少し早かったのかもしれません。
私も当時はドラマチックな展開を望む傾向がありましたので、やっぱり本作は地味に見えたし、あまり楽しみきれなかったです。

ただ、物の見方は多面的にできるわけで、上記のように日常好きならそれなりに楽しめたのでしょう。
それに加えてもう1点。
恋愛系のゲームは誰かのルートに入る、つまり主人公が複数いるヒロインの中から誰か一人を選ぶものが多いです。
そこから選ばれたヒロインの個別ルートとなるのですが、じゃあ選ばれなかった他のヒロインはどうなるのでしょうか。

いや、別に選ばれなかったヒロインの「その後」が気になるわけではありません。
翌年に『Kanon』が出て、その後に「Kanon問題」とか何とか見かけましたが、描かれていないことを考えるのは愚行であり時間の無駄でしかないと思いますので、論争があっても阿呆くさとしか思えなかったですから。
そうではなくて、ヒロインのその後の問題よりも「前」の話、そこにも1つ問題があるだろって話なんですね。

つまり主人公が一人を選ぶ、そうすると他のヒロインは皆揃って空気を読んで、自然と物語からフェードアウトしていく作品が多いんですよね。
でも、世の中、そういうものではないだろうと。
私は描かれていないものはそれまでと割り切りますので、あまり深く気にしないのですが、逆にいろいろ考えてしまう人もいるでしょう。
せめて最低限のけじめだけでもつけろよと思わなくもないですが、その辺りの描写が適当な作品が多かったのです。
本作では、他のヒロインとの関係にけじめをつけるシーンがあります。
こういう地味な部分もきちんと処理している作品というのは、ほとんど例がなかったのです。
その点で、地味で細かいところではあるものの、リアリティの伴った作品と言えたのでしょう。

<ゲームデザイン>

本作の特徴と呼べるものにはもう1つあり、それがヒロインを選べるというものでした。
つまり開始時に誰をメインヒロインとするのかを選べるのです。
具体的には3人の中から選ぶことになり、その選択により物語の内容やキャラのポジションが変わってきます。
ここで安易なゲームデザイナーなら、メインヒロインを決めたら他は攻略できないとしそうなもの。
しかしそんな制約をかけてはゲームらしくない、制作者の意思を押し付けるのではなく、あくまでも決めるのは全てユーザーなのだということから、本作ではメインヒロインを決めても他のキャラを攻略することも可能です。
メインヒロインとして選ばれた場合にはイベントが増えますし、メイン時での攻略とサブの場合の攻略とでは少し違ってきますので、それぞれのパターンを試すことができました。

まぁ地味な本作においては、必ずしも成功した機能とは言えないかもしれません。
もっとダイナミックに変化する作品の方が、上手く機能しそうですから。
それで当初はあまり良さに気付けなかった面もあるのですが、こういう試みは上手く用いればもっと化けるように思います。

<評価>

PC98時代はまた別なのですが、WIN時代に入ってからのF&Cは、どちらかと言うと可愛い絵でライトなユーザーを対象にしている印象が強いです。
そのようなユーザーを念頭に置いて作るのであれば、地味で細かい要素よりも、内容は大雑把でも構わないから可愛い絵の方が必要だったのかもしれません。
そうなると絵が弱かった本作は少しずれた作品とも言えますし、WIN時代のF&Cらしからぬ作品でもあり、ブランドの中でも地味になりがちだったのでしょう。

上述のように、本作には恋愛ゲーとして見るべき特徴が幾つかあります。
しかしそれらは初心者にとってはどうでもいい瑣末な点であり、注目されません。
本質的には氾濫する恋愛ゲーに疑問を抱き始めた玄人向けと言えるのでしょうが、WIN時代のF&Cに呆れ離れていった人だと、プレイする以前に存在に気付いてもらえなかったでしょう。
つまり本来好みそうな人に気付いてもらいにくい作品であり、少し不遇な存在だったのかもしれませんね。
当初は私も印象の薄い佳作程度と考えていたのですが、意外と見所のあった作品だったなということで、良作としておきます。

ランク:B-(良作)

Last Updated on 2024-12-29 by katan

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