硝子のこんぺいとう

2020

『硝子のこんぺいとう』は2020年にWIN用として、禁飼育から発売されました。

第二次世界大戦の戦時中を題材に、禁飼育らしい内容の作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
海軍大佐夫人、カレン奥様の女中の荻窪ねむり。
ある日、国から勤労令により、軍需工場にて労働を命じられ、指定された工場にて住み込みで働くことになったのだが……
気がかりなのは、病弱であるカレン奥様と、そしてとある場所で出会ってしまった軍人であり、働き先の工場にて司令官でもある男、群青路マヤトの存在だった……

出会い、交流、良い雰囲気になり……やがて…といった悪人男との昭和軍人ヤンデレ悪人愛され大変面倒乙女ゲームほぼ読みだけの作品です。

基本CG数 :162枚
カラー105枚+白黒&SD絵62枚(総枚数889枚)

<感想>

簡単に説明すると、ED1とED2については、昭和の戦時中を舞台としつつ、拗らせた軍人さんが、主人公をストーカーし、追い詰める物語となります。
禁飼育作品の経験者であれば、いつもの禁飼育らしい作品といえば、それで伝わると思います。
戦時中を舞台に、禁飼育が作品を作ったらこうなったという作品でしたので。

上記の軍人さんである曹長の群青路マヤトのストーカーっぷりと、その拗らせ具合と、主人公ねむりを追い詰める様子は、気持ち悪いくらいに素晴らしかったわけでして。
ここまで気持ち悪いキャラを描かせたら、原画兼シナリオの画用紙さんは、近年では右に出る者はいないのではないでしょうか。
この気持ち悪さは、本作というか禁飼育作品の一番の魅力でしょう。
たぶんここまでの気持ち悪さは、今の男性向け作品では生み出せないと思いますので、乙女ゲーをプレイしていて本当に良かったと思います。

禁飼育作品については、作品間につながりのない方が多いのですが、個人的には遡れる範囲で構いませんので、順番にプレイした方が良いと思っています。
なぜならば、作品ごとに進化している様子が伝わってくるからです。
テキストの上手さは少しずつ成長していったところ、個人的には『魔女の処刑日 前編』(2013)で要注目のサークルになりました。
次のスピンオフにあたる、『異端審問官の愛寂』(2014)では演出が進化し、私はここで名作と判断しました。
私は進化がなく同じことをやっていても評価しないので、次の作品のハードルが上がるところ、『蛇のシンデレラ』(2018)では、圧倒的なCG枚数という客観的に分かる物量の多さで進化を示してきました。
ここまできたら次はどうなるのだろう、これ以上はなかなか難しいのではと、次作に期待と不安を抱いていたところ、発売されたのが本作になります。
そして結論からいうと、一番肝心のストーリー部分が強化されてきたのです。

これまでの禁飼育作品の場合、まずは平和な日常が描かれ、その後、ヤンデレ等の狂った男に主人公が肉体的にも精神的にも追い込まれるというものが多いです。
つまり、主人公である女性と、相手の男の二人の関係性に重点が置かれており、他のキャラとの関係性については重点が置かれていませんでした。
本作の序盤では、主人公は女中をしていることから、奉公先のカレン奥様との関係性が描かれます。
主人公ねむりとカレン奥様との絡みをはじめとして、本作では過去作より他のキャラが多く描かれることにより、作品の世界観に広がりをもたらすことに成功しました。
本作が戦時中を題材としていることから、その題材の珍しさで興味を持った作品でもありましたが、過去作のように主人公と相手の男との関係性だけを掘り下げていては、過去作との違いも生み出せず、マンネリに感じていたかもしれません。
しかし、他のキャラとの関係性も描くことにより、世界観に広がりをもたらすことにつながり、ひいては戦時中という舞台へとつながることで、過去作とは異なる作品の深みを生み出すことに成功したのでしょう。

上記のとおり、ED1と2は、いつもの禁飼育作品という内容です。
他方、ED3では、一転してマヤトとねむりの純愛が描かれることになります。
もっとも、戦時中ということで、案の定というか、悲恋ものになります。
第二次世界大戦という題材については、私は特に好きというわけではなく、ドラマや小説でも好んで見たいというものではありません。
しかし、私の好みとは別に、この題材を上手く扱ったノベルゲーがあっても良いのではという思いは以前からありました。
でも、今のエロゲ市場の状況を考えると、そういう作品に出会うことはないのだろうなと思っていたところ、まさかここで出会えるとは思いませんでした。
ED3ルートは戦争ものとしても楽しめるし、このルートが一番好きという人も多いのではないでしょうか。
タイトルの意味もこのルートで回収されますし、このルートは分かっていてもジーンと胸にくるものがあり、とても良かったです。

ちなみに、ED4は後から追加されたものであり、どうしてもハッピーで終わりたい人向けの救済ルートですね。

その他の点としては、演出は過去作同様良かったです。
CG枚数も多かった前作を更に上回ってきましたからね、価格を考慮したうえで凄いのはもちろんのこと、フルプライス作品すら上回る量は素晴らしいです。
ただ、影絵については、これはこれでありかもしれませんが、ここが長所と呼べるほどの違いは示せていないように思います。

<評価>

総合でも十分名作といえるでしょう。

作品ごとに成長している禁飼育において、2020年の時点では1番といえる作品ですし、ストーリー重視の人にはぜひともプレイしてほしい作品でしたね。

ランク:A(名作)

Last Updated on 2025-03-09 by katan

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