『催眠遊戯』は2012年にWIN用として、スタッフィングから発売されました。
催眠に特化した同人サークル「#define」の、商業デビュー作になります。
<概要>
#defineは同人サークルではあるものの、おそらく催眠系が好きな人ならば、多くの人が知っているのではないかと思います。
ライターのおくとぱすさんの催眠に対するこだわりは素晴らしく、他の催眠系とは一線を画する作品に仕上がっていましたからね。
おくとぱすさんは他ブランドから催眠系は出してはいたものの、defineからはしばらく新作が出ていなかったのですが、その新作として予定されていた作品が商業作品として発売されたのが、この作品になります。
というわけで、本作も催眠特化の作品となります。
ゲームジャンルはノベル系のADVで、最初に目当てのヒロインを選びます。
結局は陵辱ゲーなものの、途中でヒロインに手を出すとゲームオーバーという、抜き目当てで購入した人はびっくりするであろう構造になっています。
間違った選択肢を選べばすぐにゲームオーバーになりますので、攻略も簡単な方と言えるでしょう。
また、メガネのオンオフが選べますので、こだわる人にはありがたいかと。
<ストーリー>
おくとぱすさんの作品は結構プレイしてきました。
私は新しいことに挑戦することは良いことだと思うので、異なるジャンルの作品を作ること自体は気にしません。
しかし、やっぱりこの人は催眠系が一番得意だよなと思うわけで、催眠系の作品を作ってこそ輝きが出るように思います。
一時迷走していた感もありますが、それは得意分野ではなかったから。
得意の催眠系に戻り完全復活だと、途中までは思ったものです。
・・・「途中まで」はね。
つまり、ここがおくとぱすさんの特徴、というか#define作品の特徴でもあるのですが、リアルな催眠術ということで過程を大事にするのです。
何でもありな魔法としての催眠術ではなくて、やれることには限界がある、
しかも相手が本当に嫌がることは強制できない、そんな制約がある中での術という、リアリティを伴わせた描写なんですね。
制約がある中で、少しずつ段階を踏んでヒロインに催眠を浸透させていく。
その丁寧な描写が、他の催眠系と明確に異なるのです。
本作も自身の過去作から続く催眠術に対する姿勢が貫かれており、ヒロインに催眠術をかける過程を大事にしています。
この部分に関しては本作も非常に優れていますので、だから私は完全復活かと思ったのです。
問題があるのは終盤。
主人公は欲望に負け、当初の相手の信頼を裏切らないとの約束も破り、陵辱が目当てで催眠がそのための道具みたいになってしまいます。
確かに一部ルートでは、主人公はヒロインに似合う人間になれるように努力もします。
しかしそれも詭弁に過ぎず、催眠で無理強いをした事実に変わりはありません。
これでは、結局のところ他の催眠ゲーと何ら変わらないのですよ。
むしろ過程だけ長く本番シーンが少ないことから、抜きゲーとして見た場合には、他の催眠を道具に使った抜きゲーよりも物足りなく感じてしまいます。
ここで補足しておきますと、ライターは他所で「操心術」シリーズなども出しており、そこでは自由に操れるような作風となっています。
いわゆる典型的な催眠ものとなるのですが、そのかわりにかけた後のエロが長かったり、或いはストーリーそのものが面白くなっています。
本作は催眠特化であるためにストーリー的な面白さも制限されますし、かけるまでの過程を重視するためにエロそのものも抜きゲーほどではありません。
結局のところ、どっちつかずなのです。
define最後の作品となった『催眠実験』では、ヒロインが本当に嫌がることは強制できないという制約と、ヒロインも主人公のことを密かに想っていることとが結びつくことで、単なる陵辱ゲーではない新しい催眠ゲーの可能性も示しました。
催眠ゲーに何を求めるのかにもよるのですが、なるほどこういう方向性もありうるのかという新しい方向性や、或いは他作品との違いを突き詰めた作品を望んだ私にとっては、過程を大事にしただけの並の催眠ゲーになった本作、しかも並の催眠ゲー路線としてもやや中途半端になってしまった本作は、少し残念なものに感じてしまいました。
催眠分野で一番新境地を開拓できるのに近い位置にいた人だと思っていただけに、何年も経って結局これなの?と拍子抜けしてしまったんですね。
またこういう系統の作品にしては、『催眠実験』の主人公は秀逸でした。
捉えようによっては、主人公の人格が作品を成立させていた面もあるでしょう。
他方で、本作の主人公は結局は陵辱ゲーの主人公でしかありません。
本作をやればやるほど展開の粗や設定の甘さが目立ち、逆に『催眠実験』って凄かったんだなと思わされてしまいます。
<評価>
催眠をかける過程は良かったとは言え、それは過去作から続く特徴であり、決して新しいものではありません。
したがって、この作品で新しいと思えるものはなく、他方で完成度を高めるどころか中途半端な方向性に進んでしまいましたからね。
もしこの中途半端な傾向が続くのであれば、もうこのブランドの作品を追うこともなくなるのかなと。
まぁライターのテキストは合うので、違う方向性の他ブランドのはやるでしょうが。
もっとも、もしライターの過去作をプレイしていなかったならば、こういう作品もあるのかと褒めていたと思います。
途中までは良かったですし、不満に気付いてしまったのも、過去作があったからこそとも言えますから。
だから単体で考えて良作というのもありえるのでしょうが、一応は過去作との差別化も含め佳作としておきます。
結局私には物足りない結果となってしまいましたが、リアルな催眠系はまだまだ浸透しているとも思いませんし、本作で知って新鮮に感じられる人も多いでしょう。
同人ゲーでは認知されにくい面もありますので、商業デビューしたこと自体は良いことだと思いますし、もしこの分野が未経験であれば、本作を通じて知ってもらうのも良いことだと思いすね。
ランク:C-(佳作)
Last Updated on 2024-11-23 by katan
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