フォーサイト ~four-sight~

1995

『フォーサイト ~four-sight~』は1995年に、ハイブリッド用(MAC&WIN)として、シナジー幾何学から発売されました。

3DCGの可能性を感じさせてくれた、独特のADVでしたね。

<概要>

ゲームジャンルはインタラクティブムービーになります。

CGクリエイター:窪田純子さんのデビュー作でもあり、「見る」という行為に着目した作品でした。

具体的には「天秤」、「時計」、「眼球」、「顕微鏡」がモチーフになり、3DCGで表現されたそれらの中へ向かって進んでいくことになります。

<感想>

3DCGと言うと、空間的な広がりに目がいきがちだし、外へ外へと広がっていく方向に私なんかも考えがちです。
また、既に発売されている作品にも、そういう空間的な外の広がりを表現した作品が多かったと思います。
しかし、3Dってのは、決してそれだけではないんですよね。
本作は外への広がりを追求する作品ではなく、中へと向かうことで、その深さという点で3DCGを上手く活用していました。

暗めで無機質な画像を見ていると、全体的な雰囲気は、確かにシナジー幾何学の作品っぽいという印象を受けます。
しかし、その方向性・ベクトルは、過去作とはまるで異なるような、とにかく他の作品と異質な雰囲気の作品でありました。

それが男性クリエイターが多い中で女性の感性が発揮されたことから感じたのか、それとも性別抜きに単に窪田純子さん個人のセンスが抜群だったのか。
その辺は何とも言えない部分もあるのですが、理由は何であれ、おそらく誰がプレイしてもその異質さは感じ取れるのでしょう。

他方でゲーム性はあってないようなものであり、ゲームクリエイターによるゲームというよりも、インタラクティブなビジュアルという、美大出身のCGクリエイターの作品という色彩の方が濃かったわけでして。
本作に関しても国内外で高く評価されたにもかかわらず、ゲーマーの間ではあまり知名度は高くないように思いますしね。
個人的には一つのアート作品と捉えた方が良いと思います。

空間的な広がりというのは何も当時に限った話ではなく、技術の進化した今はより一層広がりが増しています。
だからこそでしょうか。
オープンワールド系の作品を見るたびに、逆にこういう作品が思い出されてくるように思います。

ADVは、インディーズゲームが増えた今になり、またクリエイターの個性・特徴を存分に表現した作品が高く評価されはじめているように思います。
主戦場となっているiOSのゲームなんかにしても、拡大よりも深化の方向性の方が向いているようにも思いますしね。
本作がiOSとかで今出ていれば、もっと多くの人が注目しプレイしたでしょう。
3DCGの可能性の探究という意味では、95年に出たことに作品としては意義があったと思います。
しかし残念ながら、当時はクリエイターの思考についていけるユーザーが少なかったわけでして。
市場の成熟はゲームの進化だけでなく、ユーザーの成長も必要なのであり、ここに来てようやく多くのユーザー側が追い付いてきたというのが、現在なのかもしれませんね。

<評価>

その芸術性や方向性は高く評価できるとしても、必ずしもゲームとして面白いって作品でもないことから、総合では良作としておきます。

いずれにせよ、その独特の世界観が秀逸であることは確かであり、一見の価値のある作品だと思いますね。

ランク:B(良作)

フォーサイト

Last Updated on 2024-10-31 by katan

コメント

タイトルとURLをコピーしました