fault -milestone one-

2013

『fault -milestone one-』は2013年にWIN用として、ALICE IN DISSONANCEから発売されました。

シリーズ第一弾。久しぶりに世界観のしっかりした作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

作品コンセプト・・・
少年漫画を少女達でやる青年漫画調の冒険譚。
SF色強めなファンタジーですが、設定を細かく覚えなくても読みやすいライトな読み味です。
連作モノですが、読み切りに近い構成で、1つの作品で各話が完結します。
(大筋のストーリーは完結しません)

あらすじ・・・
マナクラフト文明の中核と呼ばれている、ルゼンハイド国。
60年以上も続いた平和は、正体不明の敵の奇襲により突然の終幕を迎える。
ルゼンハイド城が燃え落ちる中、姫のセルフィーネを守るため、付き人のリトナは最後の切り札である、瞬間移動系のクラフトを発動し、間一髪の離脱に成功する。
しかし、到着した場所は予定していたシェルターではなく、ルゼンハイドとは惑星の裏側に位置する、アウターポール「カディア市」だった。
大地のマナが行き届かない、アウターポールと呼ばれるその地域では、マナクラフトではなく、科学と呼ばれる技術が著しい発達を遂げていた。
セルフィーネとリトナは、この町でルーンと名乗る一人の少女と出会う。
天真爛漫で愛想の良いルーンと、たちまち仲良くなる二人。
町を出る前に渡したい物があると言われ、正午まで出発を伸ばすのだが……。
果たして、セルフィーネとリトナは、無事ルゼンハイドに帰ることが出来るのだろうか?

<感想>

本作は「fault milestone」シリーズという、連作ファンタジーノベルゲームの第一弾になります。
上記の作品コンセプトにもあるように、大筋のストーリーは完結しないものの、一つ一つのエピソードは各話ごとに完結します。

具体的には、セルフィーネとリトナたちを襲ったのは誰で、どういう目的があるのかとか、二人は無事帰れるのかという話は、この作品では終わらないということです。
二人が飛ばされた先の「カディア」を舞台にしつつ、そこで出会ったルーンという少女にまつわる物語が中心であり、その物語はきちんと終わるということですね。
開始時はファンタジーのバトルものっぽい雰囲気が漂うものの、それはすぐに終わり、基本的には家族愛的な、暗い中にも最後は心温まるような、そんな感動系が好きな人に向いた作品だと思います。

そもそも本作は、少年漫画を少女達でやる青年漫画調の冒険譚とあり、その言葉からも伝わってくるように、特定の年代・性別のユーザーに対し、強い訴求力があるという作品ではないのでしょう。
そのため、そういう意味では信者とか生まれにくい作品でもあるのですが、逆に幅広い層が楽しめるようにも思うわけでして。
本作は元々は2013年に同人ゲーとして発売されたものの、現在は英訳もされてsteamでも発売され、世界中で好評を得ています。
商業デビューを飛び越えて、いきなりの海外デビューなので、そこだけを見ると何だか不思議な気もしますけどね。
男性向けノベルゲーのような偏った内容よりも、こういう万人向けっぽい作品の方がsteam向けでもあるのでしょうね。

その辺とも関連するのですが、本作はいわゆるハイファンタジーものであり、具体的には主人公が最初にいる場所は魔法が支配する世界であるのに対し、冒頭で飛ばされる反対側は科学が支配する世界になっています。
魔法と科学の対比であるとか融合であるとかが中心になってくるわけで、ハイファンタジーの中でもSF色が強くなっています。

このような種類の作品の場合、専門的な言葉や独自の用語が用いられる頻度が高いです。
私は好きなジャンルなので全く気にならないのだけれど、苦手とする人の理由を見てみると、この部分がネックになっているケースも多いように思います。
もっとも、本作は設定を単に垂れ流しているのではなく、ストーリーの中に混ぜながら説明していますし、用語集も用意されているので随時確認することもできます。
この手の作品が苦手な人でも大丈夫なように配慮されていますので、比較的誰でも楽しめるように思いますね。

さて、特殊な世界観や設定を有する作品というのは、元々は個人的にも好きなジャンルでした。
しかし自分が普段接することの多い男性向けノベルゲーとか、或いはラノベやアニメでも同じことなのですが、どうも最近の作品は、序盤はキャラ紹介から始まり、根幹となる世界設定が曖昧なまま進行するというものが多いです。
その伏せられた設定が物語の鍵となるケースも多く、世間で評価されている作品、伏線が凄いとか言われる作品をプレイしても、何だよ単に伏せているだけじゃんと白けることも度々あります。
きちんと説明しないで進行しているのだから、後で実はこうでしたと幾らでも修正できてしまいますし、そういう作品は他人がどれだけ凄いと褒めていても、自分は凄いとは思えないのです。
具体的なタイトルは挙げませんが、でもそういうの多いでしょ。
今は何だかよくわからないけど、後で分かるんだろみたいなノリの作品って。

それに対し本作は、必要な分をシナリオに上手く混ぜながら説明し、最初から世界観が理解できます。
もちろんキャラの個別のエピソードも描かれているのだけれど、全体としては世界観紹介という意味合いのエピソードでもあるのでしょう。
この作品はこういう世界の上に展開されるのだと、きちんと個々のシナリオに融合させながら説明する。
できていて当り前とも言えるのでしょうが、実は今では決して当たり前とは言えなくなっているわけで、ここまでしっかりしているのは久しぶりだよなと、そんなことを思いながらプレイしたものです。

<評価>

というわけで、世界観は良いし設定も良く出来ていると思うのですが、上記のように特定の層に受ける路線でもなく、ストーリーは楽しめたけれど、ずば抜けているというほどでもありません。
これは良く出来ているな~と感心する作品ではあるものの、これは凄く面白いな~と思う作品とは少し異なるとも言えるのでしょう。

また、本作には音声がありません。
もちろん音声のないノベルゲーでも褒める場合はありますし、必須とも言えないのでしょう。
もっとも、その場合は大抵、音声の不足分を感じさせないような、何かしら他の要素のプラス分があるわけでして。
本作はキャラデザ自体は個人的に好みではあるものの、原画や演出などは普通であり、不足分を補えるほどでもないのかなと。
設定の良さだけが際立つ作品だけに、どちらかというとラノベでやってくれた方がありがたいと思う作品なのです。

総合では少し甘いかもしれませんが、良作とします。
ちなみに、本シリーズに関しては、続編で格段に進化して面白くなっているのですよ。
短期間でここまで化けてきた作品は、最近では少し思い浮かばないです。
あれにはホント驚かされましたね。
あの続編を楽しむためにも、本作はぜひともプレイしてもたいたいものです。
全体が完結した時には凄い作品になっている可能性もあるだけに、できればこの作品から押さえておきたいところです。

ランク:B(良作)


fault -milestone one-

Last Updated on 2024-11-10 by katan

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