『媚肉の香り ネトリネトラレヤリヤラレ』は、2008年にエルフから発売されました。
寝取りで有名な土天冥海さんのエルフでの最初の作品であり、同時に代表作でもありました。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
具体的には3Dの家の中を移動させつつ、キャラと会話をしたり選択肢を選ぶことで進行します。
あらすじ・・・
拓也と由紀。
二人は付き合って3ヶ月の恋人同士。
拓也は彼女と一緒に行く、卒業旅行の資金を貯める為、乙葉の家庭教師として三澤家に住み込む事に。
『この家はどこかおかしい』
日を追うごとに狂い出す歯車。
三澤家の微妙なバランスに狂いが生じ、不可解な出来事が拓也の周りに起こり始める。
<感想>
発売前、本作がどういうゲームか情報が少なかったのですが、少ないながらも想像の余地は多分にありました。
NTR・NTL専門で作っていた「yellow pig」の、タイトルまで発表されていた新作が消え、 ライターである土天冥海さんがエルフから新作を出す。
しかも、サブタイトルは「ネトリネトラレヤリヤラレ」。
「yellow pig」時代からNTR・ NTLでは高評価を得てましたから、その方面で期待せざるをえなかったのです。
アダルトゲームにおけるNTRという分野の言葉の発端は『DESIRE』のマコトだったり、『YU-NO』の亜由美さんだったりするわけで、2chのスレタイでもわかるように、犯られるシーン(結果)のあるゲームを指していました。
そして、そこに略語として「寝取られ」という言葉がつけられたんですね。
もっとも、ツンデレ等の言葉とは異なり、「寝取られ」という言葉自体は、小説等で元からある言葉です。
そのため、寝取られという言葉を重視する人達は、シーン(結果)よりも寝取られる描写(過程)を重視することが多いです。
極端な場合、過程さえきちんと描かれていれば、CGいらねって人もいますし。
最近ではスレも細分化し、古い意味でのNTR好き(結果重視・旧多数派)は他のスレに移り、
過程重視派がNTRスレの多数派になってる気がします。
さて、『媚肉の香り』の場合、旧多数派の立場からみてみると、NTRに該当するシーンは幾つかあるものの、CGだけだったりで個々のシーンにおけるインパクトがないわけでして。
また現在の多数派からすると、途中のNTRと呼べる描写がほとんどないため、これまた満足できないでしょう。
したがって、このゲームを一番待ち望んでいたであろうNTR好きには、本作は期待ハズレに感じるかもしれません。
またNTL(寝取り)好きの人の場合、NTR好き以上に、背徳感であるとか、相手から奪ったという感覚を重視します。
これまで土天冥海さんの真骨頂は、実はこの分野で発揮されてきたのですが・・・
本作の場合、それが全くないのです。
唐突に襲ったり、ラストのオチでわかるように全然NTLになってなかったり。
たぶん、NTL好きな人たちは、香織さんあたりに期待してたんでしょうけどね・・・orz
NTL・人妻属性持ちには、ある意味地雷かもしれません。
したがって、事前情報から最も期待しそうな人たちが望んだ要素は、残念ながら本作にはありません。
そういう意味では、期待外れに感じてしまった人もいたかと思います。
しかし、想像と異なる方向とはいえ、土天冥海さんのテキストは安定してます。
『若妻万華鏡』の頃から、土天冥海=蛭田さんという説がありましたよね。
その真偽は不明なのですが、テキストの作風というかベクトルが同じなんですよ。
だから蛭田さんのテキストが楽しめた人ならば、本作のテキストもきっと肌に合うと思います。
自分なんかは、ノベルゲーをプレイしていて、久しぶりにテキストを堪能しましたし。
決して今風ではないけれど、その分、電波や白雉なキャラはおらず、どのキャラも型にはまった萌えではない自然な魅力を醸し出していますしね。
今のアダルトゲームってラノベっぽいのばかりだけど、このゲームは一般小説を読んでるような気になります。
今のノベルゲーが楽しめているならば、無理に本作に手を出す必要はないのでしょう。
しかし、どうも最近の作品は合わない、昔の蛭田テキストは面白かったよなと思うような人であれば、本作なんかは最適なのでしょう。
さて、本作のストーリーは、大雑把にはサスペンスになるのでしょう。
主人公は家庭教師として三澤家に住み込む事になり、そこで狂った家の事情に巻き込まれていくことになります。
ネタバレは避けますが、最後はあっと驚くはず。
久しぶりにどす黒い悪女も出てきたし。
ここまでどす黒い悪女の存在も珍しく、ある意味新鮮に感じました。
(時間をかけて暗躍する女性・・・京極夏彦の『絡新婦の理』を読み返したくなりましたよ。)
しかも悪女とはいえ、主人公に惚れた事に気づかず、やきもきしている姿はとても可愛く見えましたね。
何か92年の『狂った果実』を思い出すなぁ。
サブタイトルの意味も、彼女の立場からなら納得できますし。
自分にとっては、ここ数年で最高のヒロインかもしれません。
したがって、事前に勝手にこちらが予想していた方向とは異なるだけで、全体的には高いレベルにある作品だと思います。
<グラフィック>
また、本作の場合、グラフィックの技術及びその量が半端じゃないです。
一枚絵が綺麗なのは当然として、今作では一枚絵をそのまま動かしたような、AEによるアニメーションがうりになっています。
技術的には、本作発売時でも他所であるかもしれません。
でも、ここまで肉感的ではないし、同人なんかだと量も少なかったですしね。
エロゲはエロくてなんぼって人でも、この質と量ならば、かなり満足な出来じゃないでしょうか。
ちなみに、原画はあの伝説の『コ・コ・ロ・・・』の人だったんですね。
最初は気が付きませんでした。
堀部さん亡き今、こうしたリアルなキャラを描ける人は貴重ですね。
グラフィックだけでも元が取れるというか、作品として強力な長所といえるでしょう。
加えて、エルフは毎度のことながら、声優さんの演技も凄いです。
2重人格っぽい人なんか特に。
<ゲームデザイン>
やや不満が残ったのは、ゲームデザイン部分になるでしょうか。
ジャンルとしてはノベル系のADVになるのでしょうが、舞台となる館内の移動に関しては3D移動が用いられています。
しかし、この3D移動が意味をなしていません。
本来、クリック一つで場所移動ができていたADVでは、あえて手動で移動する要素は、邪魔でしかないのです。
アクションADVの様にアクション要素を付加でもして、移動という行為に緊迫感を持たせるのならば話は違うんですけどね。
またアクション要素がなくても、『遺作』等の場合、脱出という目的があったので、次のエリアに進む緊張感を実感させる点で移動に意味がありました。
つまり、移動させることに何かしら意味があれば良いのですが、残念ながら本作には、わざわざ移動させる意味がないのです。
仮に館内の構造を把握させる目的だとしても、それならば1回だけで十分です。
2回目以降は省略できるようにすべきであり、それができないのは、ただの時間稼ぎでしかありません。
ここはマイナス要因でしょう。
<評価>
個人的にはこの技術力で、『若妻万華鏡』の様なストーリーをやってくれたら、文句なかったんですけどね。
絵も音もテキストもゲーム性(ノベルよりはって意味で)も高水準、主にグラフィックやテキストを評価して名作とはしますが、この作品をどういう人にやってもらいたいかが、いまいち伝わってこないようにも思います。
そういうわけで、名作だとは思いますが、人には安易にはすすめられません。
まあ、しいていえば昔のエルフが懐かしい人にはオススメでしょうか。
着せ替えの様な遊び心やフェチ要素など、昔のエルフの面影が随所に見られますから。
或いは近年のラノベっぽいノベルゲーに飽き、もう少し落ち着いたノベルを楽しみたい人ですね。
私は別に、昔のエルフっぽい作品を求めているわけではありません。
そんなのは蛭田さんがいなくなった時点で諦めていますから。
でも、ラノベっぽいのやら萌えや燃えとかではなく、もっと落ち着いたノベルゲーはやりたいと常々思っていますからね。
だから本作のような存在は非常に嬉しかったものです。
まぁ、もう今のエロゲに興味ないよと引退した人が、この文章を読んだり本作について調べることはないのかもしれません。
しかし、もし何かしらの縁で本作を見かけたのなら、引退したPC98ゲーマーとかにこそ、本作をプレイしてもらいたいものです。
個人的には、ゼロ年代以降で最も楽しめたエルフ作品でした。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-05-12 by katan
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