『絶対階級学園 ~Eden with roses and phantasm~』は、2015年にWIN用として、Daisy2から発売されました。
久しぶりに大作と呼べる乙女ゲーであり、作り込まれた作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・2020年、日本――
主人公・藤枝ネリは、東京湾を囲む “リングエリア”内の貧民地区で慎ましくも穏やかな生活を送っていた。
だがある日突然、唯一の家族である父親が謎の手紙を残して失踪してしまう。
「櫂宮学園へ行きなさい」
父の置き手紙に従い、私立櫂宮学園に転入するネリ。
しかしそこは、特権階級に属する良家の子女のみを集め、未来の日本を担うエリートを育成する全寮制の名門校。
とてつもなく豪奢だが、絶対的階級制度に基づく“身分差別” に支配された学園でもあった。
階級制度の頂点で、学生を統治しあらゆる権力を有する “女王”。
すべてにおいて優位に立つ、選ばれたエリートたちが属する特権階級“咲き誇る薔薇”。
最も多くの生徒が所属する平民階級 “名もなきミツバチ”。
同じ生徒でありながら、使用人同然に虐げられ使役される奴隷階級“捨て置かれた石ころ”。
そして、そんな絶対的制度に抵抗する生徒により組織された反体制グループ “レジスタンス”。
想像を絶する格差社会の中でネリが出逢う“恋”。
そして、次第に浮かび上がる学園の “真実” とは――!?
<感想>
本作は一般PCゲーの、いわゆる乙女ゲームになります。
乙女ゲームもそれなりにプレイしてきましたが、久しぶりにこれは大作だな~と思わせるような、非常に力の入った作品でした。
本作は乙女ゲームということで、各キャラごとにルート、そしてハッピーエンドがあります。
しかしそれだけにとどまらず、その後に真相ルートがキャラごとに用意されていまして。
全部をクリアするとなるとボリュームも凄くなり、普通のノベルゲーでいうなら本編とファンディスクが一緒になったような、それくらいの規模の作品でした。
したがって、ゲームに対し大ボリュームでの満足感を求めるのであれば、かなり楽しめる作品と言えるのでしょう。
まぁ個人的には、最近はあまりボリュームを求めず、量より質を重視するようになっていますので、プレイする作品でも大作と呼べるものは少なくなってきています。
洋ゲーとかでもADVはインディーズ全盛で、低価格で個性的ではあるけれど、どれもこれも小粒ですしね。
そういうこともあって、だれることなく高い質を有し続け、なおかつ大ボリュームの作品というのは、本当に久しぶりのように感じました。
さて、内容を見てみますと、本作の舞台は櫂宮学園という、身分差別の徹底された学園になります。
乙女ゲーということで各キャラとの恋愛がベースにあり、当然ながら個別ルートでは各キャラとの恋愛が描かれます。
他方で階級による身分差別が題材にされていることから、主人公であるヒロインは特権階級を目指すのか、それとも差別に反対して反体制グループに属するのかでも、結末が異なってきます。
そのため、各キャラごとに恋愛の観点からだけでなく、異なる立場でのENDがあるわけですね。
「取りうる立場X恋愛の成否X攻略対象の数」という、これらのルートを用意するのは、当然と言えば当然に思えるかもしれませんが、現状としてはそうとは言えないのでしょう。
実際、昔のノベルゲーとかだったら用意されていたのでしょうが、近年の男性向けノベルでは、そういう作りになっていませんからね。
近年の男性向けだったら例えば、このキャラの場合は主人公は特権階級でとか、このキャラの場合は主人公は反体制グループでとか、キャラごとに主人公の立場も勝手に決められてしまうでしょう。
そうした構造に不満もあっただけに、本作のように必要な分だけのルートをきちんと用意したのは、それだけでも作り込んだという印象になりますし、好印象と言えるのでしょう。
そして本作の場合、通常の乙女ゲームでいうハッピーエンドの後に、学園の謎や真相に迫る真相ルートが始まります。
つまりゲーム前半は舞台こそ特殊であるものの、その特殊な設定を活かした恋愛ものとなり、後半は真相に迫るサスペンスものとなります。
本作自体、読みやすくテンポも良いのですが、そこにこれだけ盛り込んできたわけですから、ボリュームが増えてもそれは決して水増しではなく、必然性から増えるべくして増えたと言えるのでしょう。
だからボリューム分だけの高い満足度につながるわけですね。
<評価>
率直な感想としては、ただ単純に凄いなと。
グラフィックやシステムも十分優れているし、最近のノベルゲーの中では非常に高い完成度の作品と言えるでしょう。
その隙のない作りゆえ、最初はこれは名作だろと思ったものです。
実際、総合力重視で考えるのならば、十分名作となるのでしょう。
しかしながら、確かに各キャラ単位では良く出来ているものの、複数のキャラを攻略すると同じ様な展開もあるため、少し集中力が途切れてしまいました。
また、よく考えてみると、ここはという本作ならではの要素も少し弱いわけで、時間と共に印象の薄れていくタイプなのかなと。
或いは事前情報なしにプレイしたら圧倒されて凄いと思いやすいけれど、過度に期待してプレイするとそれ程でもないと思うみたいな感じでしょうか。
したがって、明確なポイントがないことから、総合でも良作としておきます。
まぁ評価に関しては何を重視するかでも変わりうるわけであり、個性や独自性を重視するのであれば良作となるでしょうし、完成度や穴の少なさを重視するのであれば、高い次元での名作と考えることもできるのでしょう。
いずれにしても良作以上と感じられるだけの作品であり、今年の女性向け作品の中でも、幅広い層にオススメ度の高い作品だと思いますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-09-23 by katan
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