君が望む永遠

2001

『君が望む永遠』は2001年にWIN用として、アージュから発売されたノベルタイプの恋愛ADVです。

鬱ゲーとして非常に話題になった作品であり、体験版の必要さも証明した作品でもありましたね。

<感想>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

ゲームというのは、様々な側面を有しています。
それ故に同じく名作と判断する人がいても、理由はバラバラだったりします。
『君が望む永遠』もまた、プレイ時期によって捉えられ方も異なる1本かと思います。

『君が望む永遠』は、発売当時から高い評価を得ていました。
アージュは、この作品で一躍トップメーカーの一員に加わりましたし。
特に評価されていたのは、そのストーリーです。
まぁ今やっても、はまる人もいるでしょうし、中にはそんなに凄いかって人もいるでしょう。

とりあえず最初は否定派に向けて、反論というか言い訳というかをさせてもらうということでいきたいかと。
本作のストーリーは、単独でも良くは出来ています。
ただ、このゲームの場合は発売状況が特殊でした。
今ではゲームの体験版なんて当たり前ですけどね、当時はそうではありませんでした。
また、体験版があったとしても、序盤の数分だけをプレイできるような、本当に雰囲気を感じ取ることくらいしかできないものばかりでした。
だから私は、体験版は時間の無駄とすら思っていたものです。
しかしアージュは、本作の1章をまるまる体験版として公開したのです。
そしてこの体験版が、当時の下手なゲームのシナリオ1本分くらいの量があるうえに、恋愛ものとしてよく出来ていたわけです。
しかも先が気になるところで終わってしまうものだから、プレイヤーの多くは本編発売が待ち遠しかったわけですよ。
体験版でここまで楽しめるって経験は、これまで全く無かったですからね。
そうして期待させておいての、2章以降のあの展開ですから。
最近になっていきなりゲームを始める人とは、受ける影響が全然違うのです。

それは、正確にはストーリーの評価とは言えないのかもしれません。
むしろ売り方が上手かったのでしょう。
しかし、何であれユーザーを惹きつけるのに成功したんですからね。
成功には間違いありません。
売り方という点において、間違いなく本作はゲーム史に残る1本だと思います。

もう1つ。
最近ではノベルゲームに対する姿勢も微妙に変化しているように思います。
2002年以降、ゲームは属性重視になっていきました。
というか、関係ないものを切り捨てていったんですね。
結果、ジャンルの住み分けにも繋がっていきました。
また、用意される物語も、テーマに沿った物に絞られるようになっていきました。
つまり、より小説・映画的になっていったのです。

そして当然、ユーザーもそういうのを好む層が増えていきます。
そういう人たちは、ノベルの良し悪しも小説・映画的観点から考えます。
簡単に言いますとね、そういう人の観点からは、本作のマナマナルートとかはテーマと関係ないから蛇足、テーマを絞りきれてないから減点となるのです。

うん、確かにそういう観点からはそうなんだと思いますよ。
でもね、私は本作は名作とは考えませんが、こういう理由で名作と考えない人とは反対の立場にいると思います。

ゲームは、制約の多い小説や映画とは異なります。
何もそれらと同じ方向性を向く必要はないじゃないですか。
同じ方向性を向くのであれば、それこそ映画や小説で十分です。
いろんなキャラがいて、いろんな物語を楽しめる。
ハッピーもあれば、バッドもある。
それがゲームならではの魅力ではないでしょうか?
『同級生』以降、たくさんのヒロインが登場するゲームが増えていきました。
攻略対象が一杯いるだけで、とても満足したものです。
一杯数がいれば誰かしら気に入るキャラも出てくるし、好みでなければスルーすればいいわけですからね。
そういう面での自由さがある故に、昔のゲームの評価ってのはそれ程ブレなかったんだと思います。
最近のゲームはキャラの数を絞り、全クリ必須なのも多いです。
これでは気が乗らないルートも必須ですからね、評価も割れるでしょう。
世間の評判は良いけど俺にはクソゲーって作品は、最近の方が多いです。
これは単に好みの多様化だけではなく、こうしたプレイヤーの選択の狭さにも理由があるのではないでしょうか。

本作は2001年作品ということもあり、そういう意味では古い構造をとっています。
今風の構造は2002年以降から増えてきますからね。
しかしながら、出てくる女性は皆攻略対象にしよう、ストーリーもいろんな雰囲気のものを用意しようという姿勢は、私には好ましく感じられました。
ぶっちゃけ、メインだけでマナマナルートがなければ、本作は私にとって何の意味もなかったですからね。

従来からの作品構造と、新しい展開形態。
2001年という年も相まって、本作は新旧様々な要素が含まれていました。
時代の分かれ目に位置する作品でもあり、今になって再度見つめなおすと、実に興味深い気もするのです。

プラス的な観点からは、大体そんなところでしょうか。
今度は逆にマイナス的な観点から述べてみたいと思います。

まず、細かな点を先に言っておきましょう。
アージュ得意のグラフィック等の演出面から。
アージュは当時から既に技術力は一級品であり、それは本作でも同様で、一般的には高く評価する人も多いでしょう。
私はアージュの作品では既に、『化石の歌』も『螺旋回廊』もプレイ済みでしたしね。
だから順当に進化したかなって感じでした。
ただ、本作ではそれほど高く評価していません。
演出があざといというか、『化石の歌』等で培った技術が勿体無いから、とりあえず使ってみたって感じがして。
使い方が効果的に思えなかったたんですね。
あんまり意味ないじゃんって。
何も使えば良いってものではないのですよ。

次に、主人公のヘタレさ自体は目を瞑るとしてもですよ。
選択肢を選んでも、それに応じないってのはどういうことなのかと。
主人公がプレイヤーの選択通りに動かないというケースは最近もありますが、そういうことが指摘されだしたのもこの作品あたりからでしょう。
また、こっちが一人のヒロインを選んでるのに、いつまでももう一方のヒロインに未練があるように、あえてストーリーを運んでいくのも気に入りません。
人によってはこういう展開が上手いと感じられるのかもですが、私にはウザく感じただけです。
上手いというよりズルイ感じがしたし、縛られている感覚が嫌でした。
それでも、これが1本道のノベルであればOKだったのです。
小説風の構造で1本しかシナリオがないならば、その中で悩みを存分に描くってのもありでしょう。
しかし本作は、多くの攻略対象の中から、相手をプレイヤーに選ばせるという構造をとっています。
その中でプレイヤーの下した決断を無駄にさせるからいけないのです。
そう考えると一番欠けているのは、ゲーム全体におけるトータル的なデザインセンスなのでしょう。
今のゲームの多くに一番欠けてる要素でもありますが、本作は特にこれが欠如していると思うのです。
どうにもしっくりこないというか、チグハグなんですよね・・・
なまじ規模の大きい作品なだけに、そういう部分が余計に目立っちゃうのです。

また、ストーリー自体にもそれ程惹かれませんでした。
本作はドロドロとした恋愛、三角関係を扱った作品になります。
確かにね、いわゆるギャルゲーしかやらない人には、このドロドロした恋愛劇は衝撃的だったのかもしれません。
しかし、ぶっちゃけ昼ドラなんですよ、これは。
昼ドラを見ていたら、いくらでも転がってそうな話です。
だからってつまらないとは言わないけれど、決して珍しくもないだけに、私は単純に絶賛はできないです。
面白くはあるけど、それ程でもないよなってのが率直なところでしょうか。

葉のノベルにしても本作にしてもそうなのですが、結局この頃のシナリオ重視って、二次オタに縁のない分野からひっぱってきたのが新鮮に見えただけの物が多く、それで本当にシナリオ重視って言えるのかと、どうしても疑問に思ってしまいます。

そもそも、本作に衝撃を受けた人は昼ドラ見た方が良いですよ。
こういうのが好きってことは、適正があるわけだから。
昼ドラ面白いよ~こっちの世界においで~w
見ていると面白いのも多いから、個人的には意外と好きなんですよね。

<評価>

何か、最後は昼ドラへの誘いみたいになっちゃいましたが、結局ボリュームはあったものの、他にこれといった長所がなくトータル的なセンスに欠けていた作品ではあるのでしょう。

総合では、内容だけで考えれば、良作と佳作のどちらにするか悩む作品だと思いますが、上記のとおり、体験版によりアダルトゲームの歴史をかえた一面があることは確かであり、その点を考慮して良作とします。

ランク:B(良作)


君が望む永遠 DVD specification

Last Updated on 2025-02-18 by katan

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