『カタハネ』は、2007年にWIN用として、Tarteから発売されました。
優れた百合作品と聞き、百合目当てで購入したら、それ以上に男性キャラも良いゲームでしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
‘シロハネ編’ストーリー
物語は、セロが白銀の村へココを連れて行く旅に、友達のワカバとその弟ライトが同行するところから始まります。
セロの目的はココのメンテナンスですが、同行するワカバは勢いでエントリーしてしまった演劇祭のため、脚本を書きながら各地で役者を探そうと画策中。
それはいわくつきの悲劇『天使の導き』と全く正反対のハッピーエンド版で、史上最大の逆賊と名高いアインが『実は良い人だった!』というトンデモな内容。
そんな代物だけに、「役者すら見つからないのでは?」と不安を抱えながらも、偶然か運命か、主役にふさわしいアンジェリナやベルを見つけて大はしゃぎ。
果たして、ワカバたちは無事にアンジェリナたちを仲間に入れて、劇を成功させることができるのでしょうか?
‘クロハネ編’ストーリー
ふかふかのベッドで目覚めたココは、そこが自分の知らない部屋であることにビックリ。
どうしてこんなところに居るのか知るために部屋を出て探検を始めれば、どうやらお城の中のようです。
そのうちココは迷子になってしまい、廊下で誰かが来るのを待ってみます。・・・と、そこに現れたのは白いドレスに身を包んだキレイなお姫様・クリスティナと、白い羽根の人形・エファでした。
その後ココは、お城に居る色々な人たちとお話をします。
そして自分が人形であり、クリスティナやエファと共に『天使の羽ばたき』という劇をすることなどを知ります。
やがて、お姫様やエファと練習を重ねた『天使の羽ばたき』のリハーサルを迎えますが――
この劇には、誰もが予想しない・・・大きな陰謀が隠されていたのでした。
<ゲームデザイン>
本作はノベルゲームであり、概要にあるように、クロハネ編とシロハネ編の2本のストーリーが収録されています。
なお、クロハネ編は、シロハネ編の過去の話となります。
また、本作は群像劇スタイルで描かれています。
そのため、視点はしょっちゅう替わることになります。
このスタイル全般に言えますが、長所は多数のキャラの視点から物語が見られるため、話に立体感や厚みが出てくる事があげられます。
逆に短所は、視点が替わる事が多い事で、混乱する人が出てくるおそれがある事でしょうか。
もっとも、『カタハネ』に関して言えば、私は全く平気でしたし、あまり混乱する人はいないように思います。
その点では、上手く表現できていたのでしょうね。
常々、本来のADVとノベルゲームは異なると言っています。
昔の人ほど、両者を区別しています。
そして昔のADVはプレイヤー≒主人公の関係があり、視点をころころ替えるということに困難が生じていました。
しかし、ノベルゲーにはそういう制約はありませんので、こういう群像劇スタイルは、もっと早くから展開されても良かったはずです。
ADVのレイアウトで中身は実質ノベルという構造が広まり、どっちつかずのゲームが増えた時期がありました。
ゼロ年代前半頃のノベルは特に酷くて、誰の視点で物語を進めているのかすら分かりにくいゲームもありました。
ゼロ年代後半のここに来て、ようやくそういう状況から開放されたように思います。
そういう意味では、本作のような群像劇スタイルの確立は、ゼロ年代後半の作品の進化の象徴の1つであり、ゼロ年代後半の作品らしい特徴と言えるのかもしれません。
<感想>
マリみてが好きな私は、当時、百合作品にはまっておりました。
その百合作品。
マリみてのヒットにより、その後、専門の雑誌もできたし、漫画や小説も多いとはいえないまでも、それなりに発売され拡大していっています。
つまり、ジャンルとして確立され、一般に浸透していったわけですね。
しかしながら、これがゲームとなると、その数はまた極端に減ります。
百合ゲームの絶対数が少ないため、百合成分がオマケ程度にしか含まれない作品だったり、あるいは百合以外の部分に難がありゲーム全体の出来が悪かったとしても、それでも百合要素があれば、百合好きは喜んだものです。
でもそれは、裏を返せば決定的にこれと言えるような、そういう優れた作品が無かったとも言えるのでしょう。
個人的には、『アカイイト』(2004)が発売されたことにより、ようやく名作と呼べる作品に出会いましたが、まだまだ傑作と呼べる域に達した作品には出会えていませんでした。
そうした状況下で発売された『カタハネ』。
パッケージの女の子たちを見てもすぐにわかるように、百合の要素が含まれています。
本作は、その百合の部分だけでも十分満足できますし、百合を扱ったゲームの代表作として名を残すことは間違いないでしょう。
ほのぼのとした雰囲気の本作は、数多くの属性の人に合うと思います。
これだけでも満足度は高いのですが、本作は百合以外の部分も優れていたのです。
上記のように物語は、過去を舞台とした「クロハネ」編と、現在を舞台にした「シロハネ」編から成り立ちます。
そして、「シロハネ」編は普通に楽しいって感じの出来でしたが、「クロハネ」編は非常に秀逸でした。
過去の話ということで、プレイする側は、最初から結論が解っています。
そしてその待ち構えている結末は、悲劇なのです。
だからこそ、その結末に向かう中で懸命に頑張る人たちの姿が、見ていて辛くてね。
後世では逆賊として扱われている「アイン=ロンベルク」。
彼が何を考え、何を望んだのか。
クロハネ終盤では、それが分かります。
そのアインが最後、死地に向かっていく姿は、何にも代え難いくらい格好良かったですよ。
また本作は、群像劇というだけあって魅力的なキャラが多かったです。
アインをはじめ、出てくる男性キャラはどのキャラも、どこかしら不器用なのです。
でも、不器用ながらにも誠実に対応しようとする姿は、見ていてとても好感が持てましたね。
本作発売当時の主人公は、ヘタレな主人公とか、魅力に欠ける主人公が多かっただけに、より一層、そのように感じられました。
アダルトゲームはヒロインが命とも思われがちだけど、優れた作品の多くは、必ずと言っていいほど、魅力的な男性キャラがいるんですよね。
百合路線を走る可愛い女の子たちに、格好良い男性陣。
他にも、デュアのような強い女性は個人的に大好きですしね。
それと何と言っても、本作において大きいのは、ココの存在でしょう。
ココは、人格を持った人形です。
精神年齢は幼児レベルなんだけど、人形であるために人より多くの年月を生きています。
その年月を経る過程には、数多くの困難があったはずです。
それなのに、その辛さを微塵も感じさせずに頑張る姿には、非常に心をうたれたものです。
どうも私は、こういうのに弱いようでして。
傍目には小さい子が大変な目にあっている。
でもその子は、それが大変なんだということすら知らないままに、健気に頑張り続けてるっていうシチュエーション。
さりげない表現にも、思わずグッときてしまうんです。
昔は食べられなかったピーマン。
長い時を経て、今では食べられるようになりました。
でも、その努力を知る人は、誰一人として生き残っていないのですから・・・
ストーリーは全体としては非常に良かったのですが、あえて1つ言うならば、ちょっと駆け足すぎって事でしょうか。
ココの遍歴を、もっと細かく書いて欲しかったですね。
上記のような個々のエピソードからいろいろ想像できる人は構わないかもしれませんが、そうでない人には、もう少し分かりやすく描いた方が、理解してもらいやすかったでしょうし、全体に厚みも増したことでしょう。
そうすれば、もっと素晴らしい大傑作になりえたでしょうから。
その他の点として、グラフィックは、背景がminoriが担当したということで、凄く綺麗です。
笛さんの描くキャラもほんわかしてて、とても味がありましたしね。
主題歌を含め、サウンド面全般も良好。
一人二役の声優さんもいますが、説明書をみないと気づかないほどに上手く演じてました。
<評価>
読み物系のノベルとして重要な要素。
ストーリー・キャラ・グラフィック・サウンド。
この4つが全て優秀だと思ったノベルゲームは、『sense off』(2000)以来かもしれません。
久しぶりに、後年の名作の基準としうる作品に出会えたように思うくらい、文句なしに名作といえるでしょう。
本作は百合ゲーとして有名なので、百合ファンには間違いなくオススメです。
他方、それほど百合に興味はなくても、良いストーリーを求める人にも向いていると思いますし、特に群像劇タイプの作品を求める人には強くオススメと言えるでしょうね。
Last Updated on 2026-03-06 by katan




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