『夢二 浅草綺譚』は1992年にPC98用として、フェアリーテールから発売されました。
企画・監修が後にSEEKなどで有名になる田所さんであり、文学を意識させる雰囲気が特徴的な作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
時は大正、そして主人公の名は竹邑夢二。
他に登場するキャラの名前は谷崎に与謝野に永井にと、どこかで見かけたような名前ばかり。
主人公のモチーフも当然その人で、少女絵で一世を風靡した流行画家という設定になっています。
もっとも、5年前に妻を亡くした彼は、最近の絵に精彩がなくなっています。
それでも大衆の間での人気は抜群のままであり、そのギャップに次第に焦燥感を感じていたところ、身近な人にも指摘されてしまいます。
そんな夢二はある日、自分の絵の偽物を売っている「砂男」という人物に出会います。
砂男に女の本質が描けていないと指摘され、女の本質が分かりたければと連れて行かれたところが、ストリップショーだったわけでして。
そこからエロスの漂う展開がくりひろげられるのですが、描けなくなった現状を打破するために、失われた自己の過去を探りつつ、女の本質は何かを追求していくことになるという、何とも独特な雰囲気の作品でした。
<グラフィック>

絵もセピア調で、大正ロマンという雰囲気にはぴったりです。
キャラも冷静に見ると、一部で変なデッサンもあるように思うものの、何て言いますか、この妙なショボさもまた、雰囲気にマッチして見えちゃうんですよね。
アダルトゲームでセピア調の作品は珍しいと思いますが、フェアリーテールは1992年に、本作と『新宿物語』という2本のセピア調の作品を発売しています。
知らない人からすると同じ方向性に見えるだろうし、実際に内容面でストーリー重視である点は共通するのでしょう。
しかし、『新宿物語』が立ち絵を廃しイベントCGのみで構成、映画的な雰囲気で進行するのに対し、本作は立ち絵とイベントCGから構成されており、塗り以外はスタンダードな作りになっています。
92年のアイデスは、作品ごとに少しずつ変えてきていますので、他の作品と比較してみるのも面白いかと思いますね。
<ストーリー>
物語の題材からするに、文学っぽい路線を目指したんでしょうね。
この年のアイデス系のゲームは、小粒だけど今までとは違うような、そういう風変りな実験的なゲームが多かったです。
本作もその中の1本だったのでしょう。
そして、その目指したところは、途中までは非常に良かったと思います。
雰囲気も抜群でしたし、テキストも良かったですし。
ただ、ストーリー重視の作品は、どうしても結末が大事になってくると思います。
ゲームシステムがコマンド選択式という普通のADVであることからすると、その重みは更に増して来るでしょう。
実際、終盤までは楽しかったんですよね。
でも、肝心の結末が若干弱かったように思います。
文学路線で行くにしては、掘り下げが少し足りなかったんですよね。
起承転までは文句なしだったのに、結でこけた感じでした。
・・・ここまでが、プレイ直後の当初の感想になります。
ちなみに、これは大分後になって知ったのですが、終盤の本来メインとなるはずだった薬物絡みの話が、製品では丸ごと削除されてしまったそうです。
どうも、沙織事件の関連で発売前に自主規制し削除したとのこと。
それで納得ですよ。
ここはもう少し掘り下げるべきと思っていたところが、まるっきり削除されてしまっていたのであれば、私の感じたことは間違いでなかったということなのでしょう。
事件の影響と、それによるソフ倫発足で他社も影響あったでしょうが、当事者でもあるアイデスは、より慎重な対応が求められたでしょうから。
事件の影響というのは、こういう部分にも生じていたのですね。
願わくば、削除された後半が盛り込まれた完全版をプレイしたかったものです。
<感想・総合>
テキストから伝わる甘美なエロスはあるものの、絵が絵だけにエロの実用性もなく、ボリュームもないということで、たぶん人によっては全然楽しめないでしょう。
でも、個人的にはこの雰囲気が好きだったんですよね。
ただ、好きではあるのですが、終盤がもの足りなかったですしね、この年の他のアイデス系の名作と比べると、若干及ばないように思うわけでして。
そういうわけで、総合では良作としておきます。
まぁ良作とは言いつつも、主観的には名作扱いした作品より好きって作品の一つですね。
ナンパゲーヒットでナンパゲーだらけ、泣きゲーのヒットで泣きゲーだらけというように、これがヒットして文学崩れのゲームが氾濫されても困っちゃいますけどね。
でも、たまにはこういうのも新鮮で良いよなと思うわけで、当時は他に同系統の作品がなかっただけに、とても印象深い作品でした。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-08-28 by katan



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