コズミックサイコ

1991

『COSMIC PSYCHO (コズミックサイコ)』は、1991年にPC-88及び98用等として、カクテルソフトから発売されました。
90年代前半を代表するストーリー重視作品であり、ジェットコースターストーリーと名付けられた怒涛の展開が特徴でした。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

本作はPC88だけでなく複数の機種で発売されており、機種によっては一部でシューティング要素が加わっていました。
内容的にはSFものになります。
本作の主人公は現代に住む予備校生なのですが、未来にタイムスリップしてしまい、そこでの宇宙戦争に巻き込まれるというものでした。

<ストーリー>

カクテルソフトのSFものというと、同じ年に『ナイキ』があります。
もっとも、大雑把な区分けとしては同じSFものになるのですが、どちらかと言うと『ナイキ』はレースものとしての色彩が強いですし、宇宙が舞台ということが共通なだけで、内容や方向性は全然異なります。
ただ、どちらも非常にストーリーが優れた作品でした。
90年代前半という時期の作品をストーリー重視の観点で考えるならば、絶対にこの2作品は外せないでしょう。
むしろ、この2本に全く触れないのはありえないです。
この頃の旧アイデス(F&C)の作品は、およそストーリーに関しては、他社のアダルトゲームを数段上回っていた時代だったかと思います。
ゼロ年代以降は絵だけがとりえのブランドみたいになっちゃいましたが、こういう時代もあったんですよね。

少し話はそれますが、以前、昔のアダルトゲームはCGを見るのが目的のばかりで、『同級生』の出現によってストーリー重視の流れになったみたいな表現を見かけました。
しかし、私からすると、いったい何を寝ぼけているのかと思うわけでして。
ぶっちゃけ、そんな表現は論外です。
CGを見るだけのゲームは80年代前半の話であって、ストーリー面で一般作品の良作に並びうる作品は、87年に『殺しのドレス』や『DNA』が発売されています。
一般作品の名作に並びうる作品はもう少し後になりますが、それでも88年の『リップスティックアドベンチャー』や、89年の『タウヒード』、『イミテーションは愛せない』といった作品を挙げることができるでしょう。
そうした流れを受けての『コズミックサイコ』や『ナイキ』なわけで、80年代後半から90年代初めにかけてというのは、ストーリー重視の流れが強まった時期でもあり、優れた作品も出てきていたのです。
加えて、91年には一般作品のADVが廃れたってこともあり、アダルトゲームのストーリー重視作品は、ストーリーに関しては全ADVの中でも屈指の出来だったと言えるでしょう。
自力で勝ち取ったというより相対的に浮き上がった感も若干否めませんが、それでも時代の頂点に立った作品だと思うのです。
そうした中で出てきた『同級生』は、むしろ停滞しかけていたゲームシステム面の進化に貢献した作品なのであり、流れとしては全然違うのです。

さて話を元に戻しまして、ストーリーは今からすると少々短いのかもしれませんが、逆に端的に必要なことだけが描かれていますし、次々にイベントが起こることによって、だるさを感じることなく一気にのめり込んでいくことができました。
人によってはやや急にも思えるかもしれませんが、ジェットコースターストーリーと名付けられたように、むしろそれは狙ってやったことであり、瑣末な細かい部分にこだわるよりも、話の持つ緊迫感や、
流れの持つテンポと勢いを重視したということなのでしょう。
その怒涛の展開のおかげで最後までテンションを保てましたし、どんどん盛り上がって行けたのです。

ちなみに、80年代のADVは時間稼ぎで脇道にそれる楽しみが中心だったり、或いは思考させる要素が強かったこともあり、ストーリーの本筋における展開はスローな作品も多かったです。
したがって、本作の様な怒涛の展開という手法は、ADVにおけるストーリーの在り方に対する一つの変革であり、作品を通じて何をやりたかったのかを考えた場合、新しい手法として十分にありだと言えるのでしょう。
この辺は、同じくストーリーが良いとされる蛭田作品とは対照的であり、比べてみると面白いかもしれませんね。
またアダルトゲームにおいて主流を占めるストーリー重視の観点からも、本作のような存在は大いに意味があるように思います。

<キャラ・グラフィック>



次に、本作のキャラデザは林屋志弦さんが手がけております。
この頃を代表する、人気の原画家さんだけあり、どのキャラもとても可愛かったです。

ちなみに、近年の林屋志弦さんの漫画は百合系の作品が多いのですが、この作品でもレズっぽいシーンが幾つかあったりします。

かように、キャラ自体は非常に可愛かったのですが、画質面で先に発売された『ナイキ』が400ラインだったのに対し、後発である本作は200ラインに戻ってしまいました。
ここは、どうしても見劣りしてしまいましたね。
時代的にも、91年のこの時期での200ラインは、ちょっときついものがあるのかなと思います。
あと2年、少なくとも1年早ければ、違った見方もできたんでしょうけどね。
本作はMSXとかいろんな機種で発売されていますが、マルチプラットフォームの作品だと知名度は高まるものの、作品としては1番性能の低いところに合わせざるを得ず、それでこういうことになったのでしょう。
この手の弊害は今でもあるわけで、いつの時代も難しい選択なのでしょうね。

<サウンド>

サウンド面では、美少女ゲーム初の音楽CDも付属させるくらい秀逸でした。
ここはストーリー・キャラデザと並ぶ、本作の大きな長所と言えるでしょう。
今でも話が良くてキャラが可愛くて音楽も良ければ、それでもう大絶賛という人も結構います。
そうであれば、本作が高い評価を受けていることも、十分に想像ができるというものでしょう。

<ゲームデザイン>

他方で、ゲームのジャンル的には平凡なコマンド選択式のADVであり、この点はあまり評価はできないかと思います。
まぁ、好意的に解釈をするならば、ストーリー重視でサクサク進むがゆえに、ADVとしてのゲーム的な面白さは追求していないということなのでしょう。

なお、88版と異なり、98版にはシューティングのミニゲームもありました。
もっとも、あくまでオマケ程度のつくりでしたので、特にプラスにはならないでしょう。
そのくせ、ヘタレな私にはきついくらいの難易度があったので、個人的にはミニゲームのない88版の方が、落ち着いてプレイできたものです。

<評価>

総じて、強烈な長所と或いは水準をも下回るかと言えるような弱さの両方を併せ持った作品でした。
長所だけなら傑作評価した『NIKE』に決して引けを取らないし、中には『NIKE』以上に感じる人もいるでしょう。
それはそれで、十分に理解できます。
でも、『NIKE』は全体的に高水準で作られていますからね、弱さも併せ持つ本作はトータルでは少し劣るのかなと個人的には感じます。
そのため、評価に関しては、かなり厳しめになっているかもしれません。
少し言い訳っぽくなってしまいますが、この年のADVには何かの面で圧倒的に突き抜けた作品が多かったのです。
本作もストーリー・サウンド・キャラデザは一級品だけど、他はそうでもないって感じですし。
総合的にはそれぞれの分野のナンバー1の後に本作が続くので、それで相対的に評価が沈んだって感じですね。
自分でもちょっと・・・というか、かなり辛いようにも思いましたが、ランクを低めに下げてつけたのはそうした理由からだと思います。
本来ならA相当の品質は十分にあると思うし、長所だけなら間違いなく傑作級(AA-以上)でもありますし、発売時期次第では傑作扱いしていたでしょう。
それだけの内容を持った作品であり、91年を代表するゲームの1つと言えるでしょうね。

ランク:A-(名作)

コズミック・サイコ
PC-9801 3.5インチソフト コズミックサイコ

Last Updated on 2024-08-21 by katan

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