『サム・ルパート殺人事件』は1995年にWIN用として、NECホームエレクトロニクスから発売されました。
なお、MAC版はBMGビクターから発売されたようです。
<概要>
ゲームジャンルはインタラクティブムービーになります。
オリジナルは『Virtual Murder 1: Who Killed Sam Rupert』で、1993年にCreative Multimedia Corporationから発売されたようです。
本作はそれの日本語移植版になりますね。
<感想>
このゲームを買った理由はワゴンで安く売っていたからと、推理物がやりたかったから。
先に本作の悪い面を書いておきますと、まず決定的にボリュームがありません。
6時間の時間制限があるのでほっといてもその時点で終わるのですが、殺人事件を1個解決して終わりですからね。
かなり物足りなさを感じてしまいます。
もっとも、全編実写ムービーの作品ですし、その手の作品は他所の作品もボリュームが少ないですからね。
同系統の作品の中では決して少ないとは言えないのでしょう。
また、日本語版が発売された96年基準ではなく、オリジナルの93年基準であれば、そのマイナス幅もかなり減るでしょう。
したがって、同系統のジャンルに理解がある人ほど、あまり気にならない部分だと思います。
それと、ストーリーも感動的な展開とかはなく、普通に事件を調査して推理してって感じなので、特にひかれる点もないのです。
まぁ最近のインディーズのADVは、本作のような路線が受けているようなので、当時よりむしろ今の方が支持されやすい作品かもしれません。
ただ、もし仮に、海外のADVをたくさん経験していると言うのであれば、その人はこのゲームをあえてプレイする必要はないでしょう。
英語版も含めれば、このレベルのゲームはいくらでもあるのですから。
もっとも、そういう人がどれだけいるのかは疑問も残りますが。
他方で、対象を純粋に日本語で遊べるゲームに限った場合、日本語のADVとしては見るべき点も十分にあると思うのです。
上記のように本作は、全編実写ムービーと音声で構成されたゲームでした。
ジャンル的にはインタラクティブムービーとなるのでしょうが、細かいシステム的にはP&C式のADVに属するのでしょう。
当時の国産のADVの多くはテキストによるコマンド選択式でした。
しかし同じコマンドを繰り返して何度もテキストを読むことに、多くの人が飽き始めていた時期でもあったでしょう。
その点、本作は繰り返しのような無駄な動作をする必要はないし、音声により進行するので何度も読む苦痛から開放されました。
この時期には家庭用ゲーム機でも、実写ムービーを用いたADVが幾つかあります。
しかし従来のコマンド選択式ADVに単にムービーを付加したことで、従来のADVよりも更にテンポが悪くなったものも多数ありました。
本作はムービー主体としてのゲームデザインがなされており、そういう意味でのテンポの悪さもあまりなかったですし、洗練されていたとも言えるでしょうね。
オリジナルが93年と考えると、なお凄いとも思います。
もっとも、優れているのは国産の駄目な実写物と比べての話であって、海外の優れているのはもっと優れているわけです。
だから単純に評価しうるものでもないんですけどね。
こういうのは難しい部分もあるのですが、一応日本語のADVということに限定して考えるなら、良作扱いでも良いのではないでしょうか。
たまに思うのですが、推理ものに飢えているのならば、こういうのをやれば良いのですよ。
推理ものが好きと言う人の数に対して、本当に推理させるゲームをプレイする人が圧倒的に少ないわけで、そこはいつも違和感を感じてしまうのです。
本作は数々のムービーを見て自分で考える作品なのであり、一方で確かに欠点もあるのだけれど、
一定の人には代えがたい作品にもなりうるわけで、特に最近のインディーズ系を好むような人にこそ、本作をプレイして欲しいと思いますね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-11-15 by katan
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