『Rewrite』は2011年にWIN用として、Keyから発売されました。
シナリオに田中ロミオさんや、竜騎士07さんが参加したということで、話題になった作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
緑化都市、風祭。文明と緑の共存という理想を掲げたこの都市に住む天王寺瑚太朗は神戸小鳥、吉野晴彦らの友人たちと平凡な日々を送っていた。
そんな平和な風祭市に、年一回の騒がしい時期が訪れようとしていた。
都市を上げての収穫祭。巨大な文化祭のようなその催しに、瑚太朗は記事のネタ集めのバイトを始めることに。
風祭では未確認生物の情報や、オカルトチックな噂がまことしやかに囁かれていたからだ。
同時期、瑚太朗の身に不可解な出来事が降りかかり始める。
瑚太朗はオカルト研究会の部長、千里朱音に助けを請い、知り合いの生徒たちをも巻き込んでの調査を開始するのだった。
それは瑚太朗にとって、ちょっとした冒険心のつもりだった。
騒がしく仲間たちと過ごしていけるなら、それで良かった。
瑚太朗はまだ気付かない。それが誰も知らない『真実』の探求へ繋がっていくことを。
―――書き換えることが出来るだろうか。彼女の、その運命を。
<感想>
フルプライスの新作としては久しぶりのKey作品なのですが、どちらかというとKeyの新作というより、他所から連れてきた名のあるライターたちのコラボがどう作用するのか、そっちの方に興味が沸いた作品でした。
さて、ストーリー的には大雑把に言うと異能バトル系ローファンタジー、厨二風味といったところでしょうか。
もっとも、個別シナリオごとに毛色が結構変わる作品で、バトルが前面に出ているシナリオもあれば鬱っぽいのもありますし、ホラー・ミステリー風味のシナリオもあります。
それら全ての個別終了後に「Moon」、その後に「Terra」と続く構造になっています。
また、個別ルートでも一部でロックがかけられており、小鳥ルートクリアで静流ルート開放、ちはやルートクリアで朱音ルート開放となります。
そのため、最初は小鳥・ちはや・ルチアのどれかとなるわけですが、最初は良い印象を持ちたいですからね。
小鳥・・・ロミオ、鬱
ちはや・・・都乃河、バトル
ルチア・・・竜騎士、ホラー・ミステリー
という感じですので、まずは自分の好みで良いかと思います。
内容的には、共通が非常に長くギャグもイマイチで、開始後しばらくはちょっととまどった部分もあったのですが、それぞれに地力のあるライターですので、何だかんだで慣れましたし普通には楽しめました。
ただ、どこか抑えた感じなために各自のベストの出来ではありません。
その抑えた部分が良い方向に向けば良かったのですが、各ライターの持つ長所が削られつつ、嫌われる部分はそのまま残ったという感じなので、苦手意識のあるライターがいる人はちょっと合わない面はあるかもですね。
また、各ライターが平等に分担されているわけではなく、例えば竜騎士さんは1ルートしか担当していない反面、ロミオさんは複数ヒロインにMoonとTerraも担当しているみたいなので、ロミオさんを苦手とする人の方が合わない可能性は大きいのかなと。
逆に竜騎士さんや都乃河さんが苦手な場合は、そのルートだけ軽く流せば良いのであまり支障はないかと思います。
個別ルートは楽しめるのもありましたが、複数ライター故にどれが楽しいかも人それぞれでしょうね。
私にしても、小鳥ルートは途中までは良かったのに最後物足りないとか、ルチアルートは途中ポカ~ンとしたけどラストは一番印象的だったとか、各個別ルートごとでも好きな部分そうでない部分がありますしね。
これは別格というのもなければ、これは劣るというのもないわけで、ホント後は好み次第だねって思うのですが、全体的には普通に楽しかったというところでしょうか。
ただ、各ルート間で整合性が取れていなかったり、キャラが少し違って見えたりする点は、作品の全体の完成度という面では少し疑問が残りました。
個々の仕事はこなせていても、それが1つの作品に繋がってないわけですね。
もう少し意思疎通が図られているか、或いは統括する責任者がしっかりしていればなと思うわけで、部分的には良いのに全体像がぶれるのが、作品としては問題だったように思います。
まぁそれでも、仮に途中が普通であっても、最後にグッと盛り上がるのがこれまでのKeyの持ち味だったんですけどね。
今回の後半部分は、各個別より物足らなかったですね。
宗教だの環境だのいろいろ持ち出してきていますが、通り一遍のありきたりでよく見かける問題提起だけだして、微妙に逸らしつつあっけなく終わってしまいましたから。
まぁ、その辺はあくまで道具に過ぎず、そういったものを通して人の内面を描きたかった部分もあったかもですが、そうだとしてもあっさりしすぎて全く伝わってこないです。
ライターが違うので別に泣き要素がなくても良いのですが、というかむしろ新しいkeyの姿として泣きは求めていなかったのですが、それに代わる感動だのどんでん返しだのは望んでいただけに、ここまですんなり終わってしまったことはかなり拍子抜けでした。
是非はともかく、何かしら仕掛けるのが得意な人たちが集まっていただけに、もう少し工夫のしようがあったようにも思うのですけどね。
基本的に読ませる作品を作ってきた人が多いので、何だかんだで普通には楽しめるのです。
でも、どこまでいっても、最後までいっても普通のまま。
その起伏のなさが個人的には残念でした。
私はアダルトゲームの厨二展開は嫌いなのですが、厨二だからという理由で評価を下げるのではなく、これはアダルトゲームである必要はないだろという、手段選択の適否の面で下げています。
しかし、本作は一般作ですので、厨二なら厨二でも良いのです。
おもいっきり厨二展開を前面に出しても良いし、冒頭で異能バトルと書きましたがバトル全開でも良いのです。
そういう何かしらの要素で突き抜けてもらえればね。
これまでのkeyは泣きという一要素に突き抜けていたブランドでしたが、泣きでなくとも違う何かで突き抜けていれば、それはそれでkeyらしさや心意気を感じ取れたと思うのです。
しかし、どうにもいろんな要素が中途半端に混ざった感じで、これなら絶対他所に負けないという突き抜けた何かが、今回はなかったように思えたのが残念でしたね。
また、主にバトル面になるのでしょうが、それ以外も含めてグラフィック面での魅せ方にも問題があったと思います。
今回は要求スペックが、ノベルゲーにしては非常に高いです。
その分、派手なアクションシーンを入れてくれればよかったのですが、以前からあったような手法ばかりで大したことがありません。
かといって目パチ口パクがあったり立ち絵が動きまわるわけでもなく、それどころか後半は絵すらまともにありません。
最後のTerraルートはそれまでと異なり、画面全体に文章が表示されるタイプになります。
立ち絵が動かないどころかその立ち絵も減っていきますし、背景だけ或いは背景すらない状況でテキストを読まされることもあります。
それだったら普通にラノベで読ませてくれよと思うわけで、ノベルゲームである必要がなくなってしまいます。
原画自体は慣れたこともありむしろ好きなくらいのですが、絵の使い方等を含めた総合的なグラフィック面は並程度なのだと思います。
さらに、サウンド面は今回も一部のED曲には好きな歌があったのですが、全体的にかつて程の良さはなかったように思います。
かつての作品にしても実はテキストではなく、サウンドで泣かされてた面が大きいと思うのですよ。
そういうインパクトが今回はなかったのかなと。
絵も含めて演出面全般は普通ではあるけれど、それ以上でもないって感じでした。
システム的には基本はノベルゲームなのですが、マッピーで徘徊してイベントを探す要素が加わり、これによりやり込み要素も増しています。
ただ読むだけではなくゲーム性を増そうという心意気、またそれを安易なアクション系ミニゲームに頼ろうとしない姿勢は、私は好きですし評価したいところです。
しかも本編だけ進めたい人は無理にやらなくても良いわけですし、そういう選択の可否をプレイヤーに持たせてくれた点も良かったです。
ただ、何かスクラッチでもやってるような気分になってしまいましたし、せっかくのアイデアが面白さに直結しきれていないわけで、作り込みや完成度的にはもう少し改良の余地はあるのでしょう。
<評価>
総合的には佳作ってところでしょうか。
致命的に悪い部分はないですし、厨二っぽさやライターの癖など特別な苦手要素がなければ、ごく普通に楽しめる作品だと思います。
仮に無名のブランド・人材が作っていれば、普通に楽しめるゲームでしたと数行で終わっていたでしょうね。
しかし、他所から連れてきたライターの知名度に、keyというブランドの特にサウンド面での能力、それに7Gを超えつつ数十時間に及ぶボリュームと、どうしても期待したくなる要素が多かったですからね。
それだけに、何でこんな薄い「普通」止まりの作品になったのかなと思うわけで、それで結果的にグダグダと書くことが増えていっただけなんですよね。
バトルはあるけどバトル好きが心底楽しめるものでもない、鬱要素やホラー要素、厨二展開や超展開などいろいろあるけど、そういうのが好きな人が楽しみきれるものでもない。
かと言ってそれら各要素がまとまって1つの流れになりきったわけでもなく、結局どういう層に向けて何がやりたかったかがイマイチハッキリしない、端的に言うと「空気」みたいな印象の薄い作品でしたね。
まぁ、個々のライターに関してはプレイヤーの好みはともかくとして、自分のパートで一応のらしさは出している、絵も音も単純な絶対数としては量も備えているのですが、でも、それを寄せ集めればゲームになるかというとそうではないわけで、絵と音と複数のシナリオが絡まりあってできるノベルゲームとしては、完成度は低かったのかなと。
だからボリュームが多いにもかかわらず中途半端に感じてしまうのでしょう。
個人的にはそっちの方が気になったようにも思います。
個々のライター分補給という意味ではそれなりに楽しめた作品でしたが、穴だらけでも良いからkeyの新たな方向性が見たい、突き抜けた何かが欲しかったという視点からは、不満が残る作品でもありましたね。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2024-12-12 by katan
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