VIPER-F40

1997

『VIPER-F40』は1997年にWIN用として、ソニアから発売されました。

アニメで有名なソニアが、ソフ倫脱退後に最初に出した作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはインタラクティブムービーになります。
言い換えると、コマンド選択式のADVを、ソニアお得意のフルアニメーションで作った作品です。

商品紹介によるあらすじは以下の通り。
ニューコンセプト・F
愛憎渦巻く失踪事件に終止符は打たれるのか?
私立探偵のライカは警察時代の同僚であるリリアの頼みで、ある失踪事件の調査を手伝うことになるが、ライカが事件を追うにつれ助手のシーラは何者かに連れ去られ、リリアも謎の男達に狙われていく。
危険をかえりみず捜査を続けていくライカが見たものは・・・。

<感想>

PC98時代のアニメーションを用いたアダルトゲームと言えば、やっぱりソニアのVIPERシリーズが真っ先に出てくるのでしょう。

フロッピーディスクにアニメを入れるので、どうしても容量が限られてしまいます。
そのためにプレイ時間が少ないという問題はあったものの、毎回異なる有名アニメーターを起用していたことなどにより、技術的にも話題性の面でも他を完全にリードしていました。
今作でもアニメーターの木村貴宏さんが原画や作画監督を担当しており、アニメーションのレベルは非常に高かったです。

もう少し特徴を補足しますと、前作の『VIPER CTR』まではPC98用だったのですが、今作からwindows用になっています。
一応9821には対応していたみたいですけどね。
WIN用になったことで、色数は従来の16色から256色に増えました。
また解像度が従来の640X400から640X480になり、解像度の縦に増えた部分にテキストが表示されることで、うりであるグラフィックにテキスト欄が被らないようになりました。
OSの進化に伴いグラフィックは更に進化し、これまで同様に長所と言えるのでしょう。

本作には音声もついています。
主人公ライカの声は川上とも子さんで、本作の出た97年のアニメでは、『少女革命ウテナ』の主人公である「天上ウテナ」を演じています。
『少女革命ウテナ』は有名なアニメなので、仮に見たことがない人でも、アニメファンならば名前は今でも通じるのではないでしょうか。
その年を代表する作品の一つでもありましたから、少なくとも当時ならウテナの声優さんが主役だよって言えば通じたでしょうし、それだけに強烈なインパクトもあったと思います。

<ストーリー>

全編アニメから成るインタラクティブムービーなので、基本的にこのシリーズはボリュームが少ないです。
ゲームを買うというよりも、新作のOVAを買うっていうイメージでしょうか。
本作もやっぱり他のゲームよりは短いのですが、それでも従来のVIPERシリーズよりは長かったのかなと。

また、VIPERシリーズはオムニバス作品も多いのですが、本作は長編が一本だけです。
ストーリーとしては、主人公の女探偵ライカとその助手シーラ、及びライカの元同僚である刑事リリアが、失踪事件を追うところから始まります。
ラブラブHな内容の前作CTRと異なり、今作はサスペンス。
しかもシリアスで、終始暗い後味の悪いタイプになります。
Hシーンは陵辱ばかりですし、何よりガラっと雰囲気が変わりましたので、昔の人は今よりも寛容だったとは言え、これには戸惑った人もいたでしょう。
個人的にはこういう路線もありだと思うものの、話自体は、まぁ普通ってところでしょうか。
長編シリアスの方が好みならブランド過去作より気に入る人もいるだろうし、その辺は好みの問題でしょう。

<評価>

雰囲気がガラっと変わったため、従来のファンの間でも賛否分かれた本作。
こういう後味の悪いタイプも個人的にはOKなのですが、この内容だったらアニメの量を減らして部分アニメでも構わないから、ストーリーをもっと掘り下げた方が良かったように思います。
それでもグラフィックや音声の良さから、ギリギリ良作としておきます。

本作に関しては、ソニアのソフ倫脱退後最初の作品ということで、発売までにはいろいろ問題があったようです。
プレイするこちらとしては、あのキラキラのシールの有無なんて関係ないのですけどね。
しかしソフ倫を通さなければ、販売店が取り扱ってくれないので、いくらゲームを作っても売ってもらえないんですね。
こちらとしても買えなければどうにもならないので、思わぬ形でソフ倫の重みを知ったものでした。

結果的にこのときには、自主的に独自審査を行い、ホビボックスが独占で流通を行うことで無事発売にはこぎつけました。
そのため私自身は特に影響はなかったのですが、流通経路が変わることで従来より販売機会が限られてしまうのも事実でしょうし、ブランドにとっても痛手だったと思います。
そして無事発売されたとは言え、一時はどの販売店でも取り扱いが中止になりかけたこともまた事実であり、ソフ倫に属さないでゲームを出すことの困難さも証明した形となりました。
そのため、問題のあるソフ倫に不満のあったブランドは他にもあったでしょうが、結局2003年にメディ倫が審査機関として加わるまでは、あまり大きな脱退の動きはありませんでした。
この辺はユーザーに見えにくい部分の話でもありますが、これもまたアダルトゲームの歴史の一面であり、本作は象徴的な作品でもあったのでしょうね。

最後になりますが、ときどきアダルトゲームの地位が、次第に上がっていったような表現を見かけます。
果たして、本当にそうなのでしょうか。
今のエロゲのクリエイターは名が売れるとラノベやアニメに移ってしまい、逆にアニメやラノベからエロゲに参加することがありません。
これでは、ラノベやアニメより格下の存在と思われても仕方ないでしょう。
90年代半ばは、ソニアの作品のようにアニメ業界から参加することもあり、今のような一方通行の関係にはありません。
また、90年代半ばまでは近所の家電屋でもエロゲが買えたんですよね。
今はそれもなくなりました。
エロゲのアングラっぽさはどんどんなくなっていったのに、規制などもあり逆にどんどん隅に追いやられている様に感じてしまいます。
まぁネットの普及で自分と同じ意見を見かけやすくなり、或いはオタク産業全般とエロゲを混同して捉えてしまうことで、錯覚してしまうのかもしれませんけどね。
私には年々窮屈な市場になり、昔よりもむしろ地位が下がったようにすら見えてしまいます。
市民権を得ただの地位が上がったのと聞くたびに、本当にそうなのか、単なる錯覚ではないかと疑問に思ってしまうのですよ。

ランク:B-(良作)


ダウンロード版
VIPER F40dl

Last Updated on 2024-12-10 by katan

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