『水没廃墟のピアノドロイド』は2023年にWIN用として、Forestから発売されました。
水彩画風の背景にピアノだけのサウンドが組み合わさることにより、独特の雰囲気を持った作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
なお、選択肢は1個だけですので、攻略はとても簡単です。
あらすじ・・・
「水没廃墟で出会ったのは、豊かな音色の機械(きみ)だった――」
海面上昇により、陸地を巡って起きた戦争から半世紀。
水没廃墟を歩く二つの影は、生き抜くため家屋を転々としていた。
最中、コンサート施設に辿り着き、メインホールの扉を開ける。
そこには栗毛の長い髪の女が、指を鍵盤の上で踊らせていた――。
豊かな音色と物語が奏でる、水没廃墟の三重奏。
ここに《開演》
<感想>
ポストアポカリプスといいましょうか、本作は近未来を舞台としているものの、国家が既に崩壊している退廃的な世界観の作品になります。
そのような世界で、主人公が女の子のアンドロイドと出会うというような作品はいくつかありますが、本作は少し異なっています。
主人公はサチという女の子と一緒に旅をしていたところ、ナナというピアノ演奏専用のアンドロイドと出会います。
ナナは、分類的にはお姉さんキャラになりますので、その辺がよくある似たような作品との違いになるわけですね。
本作の特徴としては、他に2点あります。
1つ目は背景が水彩画風であることで、2つ目はサウンドがすべてピアノ演奏ということです。
まず1つ目の背景についてですが、私は水彩画風のグラフィックのゲームはわりと好きで褒めることが多いのですが、本作の塗りはあまり好きになれませんでした。
まぁ、塗りが好きかどうかは、私の好みの問題でしかないので、ここは一旦良しとしましょう。
ただ、水彩画風の背景は良しとしても、キャラの塗りは普通の塗りなんですよね。
キャラは他のノベルゲーと同じような塗りなのに、背景だけ水彩画風ということで、キャラが浮いてしまい、その組み合わせが良いとは思えませんでした。
水彩画風なら水彩画風で、全部統一した方が、作品としてまとまりが出たのではないでしょうか。
2つ目のサウンドについては、これは良かったと思います。
ナナがピアノを演奏するということで、サウンドがすべてピアノ演奏ということは、ストーリーともマッチしていますし、退廃的な世界観ともマッチしていましたからね。
以上のとおり、私は水彩画風のグラフィックはいまいち刺さらず、サウンドは刺さったという感じになりますが、好き嫌いはともかくとして、上記2点が一般的なノベルゲーとは異なる特徴であることは間違いないのでしょう。
本作は主人公とサチとナナの会話が楽しいところに加え、これらの特徴により独特の雰囲気を生み出すことに成功しました。
ラストの方向性としては、いわゆる泣きゲーに分類されるでしょうか。
独特の雰囲気からの泣き展開ということで、刺さる人には刺さると思います。
本作の雰囲気というか、空気感が良いことは確かなのでしょうが、個人的に気になったことがあります。
本作では、黒画面に白文字で一枚絵風に、何時間後とか時間の経過を示す画面が頻繁に出てきます。
これが、せっかく作品の世界に浸っていたのに、その雰囲気をぶち壊してしまうようで、どうしても違和感がありました。
本作では、白画面に黒文字を画面中央に表示させるというテキスト情報を一枚絵のような形で魅せる演出も用いられています。
この手法は、絵はないものの、シンプルながらに強烈な印象を与えます。
この演出の持つ強い効果を理解していながら、単なる時間の経過を示す場面でも同じような手法を用いることがどういう副作用を持つのかを考えなかったのかなと、少し疑問に思ってしまいます。
<評価>
ちょっと気になる点もありましたが、そもそも本作って、文庫本よりも安いような価格設定でして。
価格から考えればCG枚数も多い方でしょうし、ピアノ演奏によるサウンドもついてくるわけですからね。
それで独自の世界観を楽しめたわけで、この価格でこれだけ楽しめれば十分だろうってことで、総合でも良作とします。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2025-02-27 by katan
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