紬の花嫁

2024

『紬の花嫁』は2024年にWIN用として、Hendingから発売されました。

公式には百合でもなくフタナリでもなくと記載がありますが、端的にいうと、百合+伝奇+フタナリ+レズという作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・桜竈───。四季折々の桜が咲き乱れる少し不思議な土地。
“永久桜”に抱かれ育まれてきた二人の少女。真白葵と貴麗山吹。
親友として家族として───
幼少期より手をとり支えあって過ごしてきた安寧の日々は、些細な切っ掛けをもってその姿を豹変させる事になる。
「己を起こした虚けは、お前か」
禁忌呪物。
“それ世に放たれる事即ちこれ、───災厄なり”
ある一族の手記にそう記され、秘匿されたモノ。悍ましきモノ。そして、哀れなモノ。
そのモノ、名を「吐瀉丸」という。これは───。
永久に桜舞うこの町の片隅で呪物と二人の少女が織りなす物語である。

<感想>

百合とフタナリのエロが多いということで、人によってはレズと捉えるのかなと。
実際、女性同士のHシーンもあるので、広義ではレズものといえるのでしょう。
フタナリ要素もあるので、レズ(フタナリ)となるでしょうか。

ただ、問題はそのHシーンですね。
本作のウリとして、LIVE2DによるHシーンが挙げられています。
アニメーションで動くこと自体は良いのですが、キャラがアップで映っているものが多く、画だけみると、女性同士の絡みであることが活かされているようにはみえない構図のCGが多いわけでして。
もしかしたら、レズやフタナリに慣れていない初心者に配慮して、万人受け路線を狙ったのかもしれません。
もっとも、その分、がっつりと女性同士の絡みを見たいという観点からは、物足りない内容となっており、レズものとしては、つまり女性同士の肉体関係という観点からは、分量を割いているわりには、あまり評価しにくいのでしょう。

Hシーンに関しては、1人だけでという場面もあり、レズ要素よりはフタナリ要素の方が強めとなっています。
ただ、フタナリ部分に特化した作品でもないので、フタナリ要素で何か新しい発見があったかとなると、少し微妙な気もします。
フタナリって、大抵の場合は何かで代用できそうな気もするのですが、それでもあえてフタナリにするような作品なんてのは、大概どこかネジが一本外れているというか、良くも悪くも狂っているのですよ。
それが見たくてプレイしているようなものなのですが、そういう部分が本作には欠けていたように思います。

そもそも、PC98時代までは、レズゲーはわりと定番のジャンルでした。
ただ、これって、かなり広い概念でもあるわけです。
だって、Hシーンが大半が女性同士の絡みであれば、レズゲーとなるわけですから。
だから物語のベースがミステリーのレズゲーもあれば、ファンタジーのレズゲーだってあるわけですね。
もちろん、物語上のジャンルとしては、ミステリーやファンタジーだけでなく、恋愛だってありますから、ヒロイン同士の恋愛を中心に描いても良いわけで、そうなるとそれは、百合と表現されるのでしょう。

もっとも、PC98時代までは、百合という属性自体が認知されず定着していませんでした。
それもあってか、当時はミステリーやファンタジー等が多く、女性同士の恋愛を中心に描いた作品はほとんどありませんでした。

ところが、時代の変化により、ゲームにも変化が生じてきます。
90年代まではマイナーだった百合は、次第に一属性として確固たる地位を築くようになります。
他方で、女性向け作品の誕生がどれだけ影響しているのかは分かりませんが、WIN以降になると、女性主人公の伝奇やファンタジーやミステリーといった男性向けの作品が減っていきます。
こうして、女性主人公の伝奇やファンタジーやミステリーといった男性向け作品は、次第に見かけなくなり、女性主人公の男性向け作品となると、ほとんど百合ゲーという方向に向かっていったのです。

本作は、Hシーンの観点からは、レズ+フタナリとなりますが、そこに至るまでのストーリーに関しては、必ずしも百合だけではなく、伝奇要素も結構強いです。
つまり、メインストーリーは百合+伝奇ということですね。
この百合と伝奇の双方がともに水準以上で描かれているという意味では、本作は近年の男性向けノベルゲーの中では比較的珍しいように思います。
女の子同士の絡み目当てでプレイしていたら、思いのほか伝奇部分が面白くて、ストーリーの先が気になっていったという人も少なからずいるでしょう。

つまり本作は、百合+伝奇+レズ+フタナリとなるわけですね。
公式をみると、百合でもなくフタナリでもなくと記載されております。
その記載に対し、あまり深く考えないと、どうみてもこれ百合でフタナリじゃんってツッコミを入れたくなるでしょう。
ただこれは、本作は決して百合とフタナリだけの作品ではないよと、レズも伝奇も同じくらい含まれているよという意味合いくらいに考えた方が良いかもですね。

ここからあとは、好みの要素が強くなるでしょうか。
本作はミドルプライスの作品でもあり、ボリュームもそれほど多くありません。
その中で、ヒロイン同士の恋愛と伝奇とレズとフタナリを盛り込んでいるわけです。
当然のことながら、1つ1つの要素に割ける分量も限られてきます。
純粋に百合、つまりヒロイン同士の純愛シーンが好きな人からすると、伝奇要素が邪魔、そんなのいらないから百合シーン増やせとなるのでしょう。
これはレズ要素やフタナリ要素にもいえます。
特に本作の場合、上記のとおり、レズとフタナリに関しては、物足りない内容となっています。

他方で、女性同士の肉体的な絡みやフタナリは好きだけど、女性同士の精神的な恋愛って、実はそれほど興味ないって人も少なからずいると思うのですよ。
つまりレズはフタナリは好きだけれど、百合にはそれほど想い入れはないってタイプですね。
純愛(百合)部分は最低限あれば足りるから、もっと物語性を強めた方が好きという人であれば、伝奇要素のある本作のような作品の方が楽しめるのでしょう。
上記のとおり、WIN時代になってから、百合作品以外で、女性同士の絡みのある男性向け作品が減っているだけに、本作はニッチなところを上手く攻めてきたということですね。

そして本作の伝奇部分は、良質な伝奇ノベルに匹敵する出来で、基本的には良いと思います。
ただ、同程度の良さを持つ伝奇系ノベルとの大きな違いがあるとすれば、それはグラフィックなのでしょう。
本作はHシーンのアニメーションにこだわった反動からか、一枚絵の数自体は少ないです。
ミドルプライスということをふまえても、40枚は少な目でしょう。
その大半、8割近くがHシーンになります。
残り2割強のうちの半数が二人が映った百合的なものであるため、伝奇部分のCGは本当にオマケ程度で、ストーリー重視のエロ薄ゲーのHCGくらいの量しかないのです。
もちろん、少ない枚数でも1枚1枚が良質であれば満足できるのでしょうが、そうも思えなかったんですよね。
そのため、伝奇部分のストーリー自体は伝奇系ノベルに匹敵するとしても、CGも加えた総合的な観点からは、物足りなく感じてしまいました。

まぁ、CG自体が少なくても、ストーリーが気になりだすと楽しめてしまうこともあるでしょう。
本作を楽しめるか否かは、プレイヤーの主観に依存する部分が大きいように思います。
それをふまえたうえでの私個人の印象としては、なんか圧迫されているように感じるなというものでした。
本作の場合、少ないボリュームの中に様々な要素が詰め込まれています。
それ自体は、私は好むところではあります。
ただ、例えばグラフィックですね。
本作は、立ち絵でもアップ気味に映っています。
バストアップどころか、ほとんど顔みたいな感じで。
その妙に近い描写に、若干の圧迫感があるのです。
Hシーンもそうですよね。
女性同士の絡み全体を描くのではなく、1人だけに絞った構図のCGが多く、何でそんなにアップにするのかなと思いました。
立ち絵だけとか、一枚絵だけとかならまだ構わないのですが、立ち絵と一枚絵の双方が相まって、グラフィックから終始圧迫された印象を受けてしまいました。
百合ゲーも伝奇ゲーも、奇しくも両方とも、雰囲気ゲーとされやすい属性だと思います。
理路整然とした理屈ではなく、余韻を楽しむというか、そこに漂う空気感が大事にされやすい属性だと思うのです。
本作の場合、グラフィックからは終始圧迫感が漂い、ストーリーにしても、様々な要素がギュッと詰め込まれていて、余韻を楽しむような余地がありませんでした。
他方で、ギュッと詰め込まれて中身が濃いのなら、それはそれで良いのですが、Hシーンとかみても、普通のエロゲと大差ないような構図だったりで、中身が凝縮されて濃いというのとも、またちょっと違うわけでして。
したがって、中身が詰まっているわけでもないのに、余白だけはないみたいな、全体として中途半端な印象を受けてしまいました。

<評価>

総合では佳作とします。

本作については、ふたなりのレズシーン目当てでプレイしたら、思いのほか、伝奇要素も楽しめるという作品であり、あまり見かけないニッチな方向性ということで、多くの人が新鮮な気持ちで楽しめるように思います。

また、百合だけとか、フタナリだけとか、そういう何かに特化した作品よりも、様々な要素が含まれる作品自体は、私の好むところでもあり、こういう作品自体はもっと増えてほしいなと思いますね。

ただ、様々な要素が含まれている作品は、何かに特化した作品よりも1つ1つは突き抜けたものにはなりにくく、全体のバランスや方向性が大事になってくるのでしょう。
本作については、百合や伝奇という余韻や空気感を大事にしたくなるジャンルであるのに、それを感じ取ることができなかったこと、限られた分量の中で、何を意図したのか理解できない構図があったりしたこと等から、個人的には窮屈なのに空虚な印象を受けてしまったのが残念でした。

まぁ、私の評価はゲームとしてはという総合的な観点からの話ですので、グラフィック等を切り離して、テキストだけを見るならば、吐瀉丸が良い味を出していて楽しい作品とも言えますので、テキスト重視という方なら楽しめる可能性は高まるかなと思いますね。

ランク:C(佳作)

Last Updated on 2025-01-27 by katan

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